Episode16 正直に

トロア「楽しくなかった」


コムロ「トロアのせいで人々がたくさん亡くなって、それがリヨンに牙を向いていることは知っているか」


トロア「そんなことが…?」


コムロ「あぁ。たしかに根拠もなく人助けをしたリヨンさんも悪い。だが、元はといえばチップをリヨンさんの靴に仕組んだのが良くなかった」


トロアは無言で頷いた。


コムロ「幼なじみにそんなことをして悪いと思わないのか?」


トロア「悪いと思っている」


コムロ「じゃあ、そのことをしっかりとリヨンさんに伝えに行こう」


トロア「けどそんなことを知ったらリヨンは僕に話しかけてくれなくなるかもしれない」


コムロ「リヨンさんはそのようなことをする人ではない」


トロア「もしかしたらがあるかもしれないじゃないか」


コムロ「もしかしたらの可能性はあるが、その可能性は極めて低い。最近よくリヨンさんと話すのだが、とても人を裏切るような人には思えない。だから本当のことを言いに行こう」


トロア「信じていいんだな」


コムロ「もちろんだ」


トロア「…わかった」


静かに頷いたトロアはリヨンの家に向かうことにした。リヨンの門の近くに行くとさっきよりも人が多くなっていた。コムロとトロアはそれをい潜り門の中へ入った。


コムロ「ジョンはここでトロアと一緒に待っておいてくれ。俺はリヨンさんの様子を見てくる。行けそうだったらグッドサインを出す」


ジョン「わかりました!」


ジョンとトロアは応接室に行き、コムロはリヨンの部屋へ向かった。リヨンの部屋のドアを開けるとそこにはぐったりと横たわっているリヨンがいた。


コムロ「…!リヨンさん!」


コムロは思わずリヨンのところへ駆け寄った。


リヨン「コ…ム…ロ…さ…ん…」


リヨンは頑張って一言ずつ話した。


コムロ「リヨンさん、トロアさんが外でお待ちです。どうやら話したいことがあるようで」


リヨン「トロア!?」


トロアの名前を聞くとリヨンは飛び上がるように起きた。おそらく幼なじみの前ではぐったりしていられないと思ったのだろう。


コムロ「今すぐ呼んできます。しばらくお待ちください」


コムロは応接室にいるジョンとトロアに声をかけた。コムロが先導し、リヨンの部屋へ連れていく。コムロは謎の責任感があった。


コムロ「失礼します。トロアさんを連れてきました」


ガチャ


コムロはそっと扉を開けた。


トロア「リヨン、急に来て申し訳ない。ひとつ謝りたいことがあるんだ」


リヨン「謝りたいこと?」


トロアはソワソワしていた。コムロはなかなか言い出せないトロアに頑張れと視線を送ることしか出来なかった。ジョンも同じくトロアとリヨンをまじまじと見ていた。



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