大みそかだよ! 異世界餅つき大会!! 【外伝】レベル5デスの使いどころがありません

角乃とうふ

大みそかだよ! 異世界餅つき大会!! 【外伝】レベル5デスの使いどころがありません

 異世界に転生して初めて迎える大晦日おおみそか。金のシャチホコならぬ金のドラゴンが天守閣に乗ったツリーハウスがマイホーム、というカオスな状況の中で、大量のル〇バ風のゴーレムが忙しく動き回っている。女神フロラがその陣頭指揮をっていた。


「さぁ、年末の大掃除、張り切っていきますよ~!」


 フロラはゴッドエラー(単なる手違い)で悪魔に転生したオレを何かとサポートしてくれている。設定年齢(謎)が自称17歳の小柄な美少女だ。想像してほしい。そんな子が三角きん割烹着かっぽうぎを着て、背伸びをしながらはたきをパタパタさせている姿を。まったくカワイイが過ぎる。そんなフロラを横目でニヤニヤちら見しながら、オレは建設ゴーレムのデンキチさんとはさみ将棋に興じていた。


「ちょっとタナトスさん手伝ってくださいよ。綺麗にしないと年神としがみ様が来ませんよ!」

「神様なら目の前にいるじゃないですか」

「はっ! そういや、わたしも神でした。テヘペロ。じゃなくて掃除してください! 大体タナトスさんのおうちじゃないですか」

「おっしゃるとおりですが、広すぎて掃除する気があんまり……。それに、ゴーレムの皆さんががんばってくれてるんで、特にやることなく無いですか?」

「そういえば、そうなんですけどね。お正月に向けて、なんか準備とかすると盛り上がるじゃないですか。あ! そうだ、餅つきなんかしたらどうですか!?」

「フロラ様、餅なんかよく知ってますね」

「ふふーん。自慢じゃありませんが、おいしいものは色んな異世界をまたいで知ってますよ」


 できれば、ほかの分野にもその知識を広げて欲しいしいものだ。


「いや、オレも餅は嫌いじゃないですけどね。ただ、自慢じゃないですが食べ専なもんで、餅なんか作ったことないんですが」

「目の前に達人がいるじゃないですか」


 いうや、はさみ将棋の相手のデンキチさんの目が怪しく紫に光りだした。


「アサメシマエヨ」


 そんなわけで、デンキチさん指導のもと、餅つきの準備をはじめたのだった。餅つきに必要な道具や材料はフロラが転送して用意してくれた。なんでも、もち米の仕込みは前の晩から水にひたさないとダメらしいが、そこはフロラ、3分クッキングのように『こちらが一晩水にひたしたものごさいま~す』とノリノリで出してくれた。その後は、大きな羽釜はがまで湯を沸かす。これで、もち米を蒸すようだ。ちなみにデンキチさんいわく、重要なのは餅をつく前にもち米を丁寧にきねで潰しておくことだそうな。面倒だなぁ、全部魔法でチャチャっとやってしまえばいいのにと思っていたら、エルフの2人がやってきた。


「いやはや、年末の挨拶にと来てみたら、これは立派な邸宅だね。確かにうちの若いもんが侵略拠点と間違えても仕方がない」

「わざわざお越しいただき恐縮です、モーリスさん。先日はこの森への居住を許可いただきありがとうございました」

「なんのなんの。しかし、これだけ広ければエミリーヌがすぐにとついでも大丈夫じゃな!」

「ちょっとおじいちゃん! 変なこと言うと髪の毛引き抜いて、ゆで卵にするわよ!!」


 村長むらおさモーリスの残り少ない髪の毛を、孫娘のエミリーヌが全力で引き抜こうとしている。仲が良いのは結構だが、薄毛の男性にその暴挙はやめてほしい。と、石臼いしうすきねが目に入ったのか、エミリールが手を止めた。


「ねえ、何の準備してるの?」

「あー、これは餅つきの準備さ。明日から新年だろ。遠い異国の人間の国では、新年は餅を食いながらこたつでゴロゴロするんだ」

「コタツ? 良くわからないけど、モチって美味しいの?」

「そりゃもう。特につきたてのきねつき餅の味は絶品さ。あまりの美味さに毎年餅を喉に詰まらせる人が続出するくらいだ」

「……それって、ヤバイやつじゃない?」

「気をつけてりゃ大丈夫だよ。あれだよ、綺麗なバラにはトゲがあるみたいなもんだよ」

「なるほど、私みたいなものね」


 綺麗なこともトゲがあることも自覚があるのか。自己分析はちゃんとできてるのな。そうだ、モーリスも興味津々なようだし、餅つき前の下準備は2人にまかせよう。



「はぁはぁ。地味な割に結構しんどい作業ね……」

「デンキチさん。わしゃ、腰が痛くなってきた。もういいかね」

「ワレ、ナメタコトイットルト、アタマカチワルゾ」


 モーリスがヒィ! と短い悲鳴を上げて作業に戻る。ちなみに、デンキチさんは口が悪いだけで害はない。ともかく、2人の頑張りのおかげで、つく前から餅になってきたな。ようし、ペッタンペッタンはちょっとやってみたいぞ。出番まで1人ババ抜きでもやろうかな。と、その時天守閣の縁側にふわりと天使、じゃなくて天使みたいな悪魔が舞い降りた。


「やぁ、エムエルじゃないか! 相変わらず美人だね」

「心のないお世辞トークは相変わらずね、タナトス」


 この褐色の美人は元同僚で四天王の悪魔である。彼女のアドバイスのおかげで、その後なんだかんだあって、今ココにいるのだ。


「とりあえず、生きてて良かったわ。あの後、魔王様ガチギレで大変だったんだから。『あいつバックレやがって!』って」

「マジっすか。ここにいることはどうか内密に……」

「当たり前でしょ。あなた逃がしたことバレたら私もタダじゃすまないし」

「エムエル様ー! 大好きー!!」

「ちょ、あなたそんなキャラだったけ!? どっ、どさくさに紛れて翼をモフらないで!」


 エムエルの背中の翼に頬ずりしていると、背中から刺すような視線を感じた。


「……餅つきの準備ができたんだけど」

 トゲトゲのバラの人、エミリールがジト目でこちらを見つめてる。


「あ、あー! お疲れお疲れ! じゃあ、餅をペッタンペッタンしようかな」

 冷たい汗を背中に一筋かきながら、オレはきねを右手に持った。


「ねぇねぇ、何やってるの?」

「あー、新年の異国の食べ物を作ってるんだよ、エミエルも一緒にペッタンペッタンする?」

「なんか、おもしろそうね。やってみようかしら」


 そんなわけで、デンキチさんが合いの手をして、オレとエムエルで餅つきを始めた。デンキチさんの手を間違ってつかないよう、順番に1,2,3と声を出しながら餅つきする。最初は面白がって、バンバンやっていたが、そこは体力のないオレのこと、二臼ふたうす目には見学者となっていた。エムエルは餅つきの才能があるのか、慣れてくると高速で餅をつきはじめた。デンキチさんの目がピンクに光っているところを見ると、デンキチさんにも気に入られたようだ。

 つき上がった餅は、エルフの2人とフロラでちょうど良い大きさにちぎって丸めている。トレイに綺麗に並んだ丸餅を眺めていると、ホント、日本みたいだなと思えてくる。異世界転生してまだ日は浅いが、とりあえず年は越せそうだ。そう考えると感慨かんがい深いなあ。そんなオレの顔をフロラが覗き込んだ。


「どうしたんですか、タナトスさん。ボーっとして」

「ん? あぁ、何でもないです。上手にできましたね、お餅」

「つきたてが一番おいしいですよ! おひとつどうぞ」

「あーん」

「ちょっと、私のも食べなさいよ!」


 エミリールが勢い良くオレの喉元に餅を突っ込む。


「ほんな、ほぉちを、ふはぁつも、ひっへんにひれふと、ほどが!!」

「あれ、タナトスさん!? もとからですけど、顔が青くないですか?」

「ハハハ! 今度は顔が赤くなっちゃって。美女に囲まれて照れてるのか? このツンデレ!」


 薄れゆく意識の中、遠くで『ハイハイハイハイ!!』とすさまじい掛け声で、高速で餅をついている音が聞こえてきた。次はもっとかっこ良いチート餅、もといチート持ちの主人公に転生したいと思うオレでした。


エピローグ

その後、フロラの回復魔法で無事に蘇生したタノトスさん。みんな、おいしいお餅をお土産にニコニコして帰りましたとさ。


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 気に入っていただけた方は、本編もぜひどうぞ。

【本編】レベル5デスの使いどころがありません

https://kakuyomu.jp/my/works/822139840125662429

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