ダイヤモンド編 第66話 写真カードは誰の為?

「写真カード。余の知る限りではカメラオブスクラを応用した魔法だとか思うが、如何に?」


 カメラオブスクラときたか。カメラオブスクラは暗い部屋でピンホール現象を利用して外部の景色を写す装置だ。この世界にもあったんだ。まさか写真部の知識がこんな所で役に立つとは。


「はい、陛下のご明察通り、カメラオブスクラを基礎として考え出した魔法。写真カードを言い換えるなら、ピンホールカメラカードでも良いかもしれません」


「そうか、そうか、余もまだまだ捨てたものではないな」


 国王陛下は愉快そうな笑顔を浮かべた。


「先日、ロンズデール辺境伯にカメラオブスクラの話をしたら、あの脳筋は全く理解しておらなんだ」


 確かにお父さんに難しい話をしても駄目そうだ。ちなみにエリザベート様やマライアさんも話に付いていけてない感じだ。って、僕は脳筋家族だなんて思ってないよ!


「それでルシアよ、写真カードをどうするつもりだ」


「はい。その点はロンズデール辺境伯にもお伝えしています。陛下、これを見てください」


 僕は辺境伯領で撮った家族写真をテーブルの上に置いた。


「アハハハハハハハハ」


 大声で笑いだす国王陛下。


「良い、良いぞ、ルシア! 写真カードとはこの様に使うのだな。戦での使用ばかりを考えていた余は恥ずかしいぞ」


「あ、あの、陛下、写真カードとは何なのですか? それにこの絵は?」


 先ほどから話に付いてこれていないエリザベート様。


「おお、すまんなエリザベート。ルシア、説明してやってくれ」


 話を振られたので、僕はまたしてもテーブルの下に異空間収納を展開して、こそこそと写真カードを取り出した。


「エリザベート様、これが写真の魔法陣カード。略して写真カードです」


「……見慣れない魔法陣カードですね」


「はい。僕が作りました」


「まぁ、魔法陣カードを作ったのですか!?」


 驚いた顔のエリザベート様だが、クスクスと笑いだした。


「フフフ、さすがは黒髪の魔術師様ね」


「そ、そんな事は」


 そう言われると照れてしまう。


「お、おほん。で、では写真カードの説明をします。陛下、エリザベート様、寄り添っていただけますか」


 僕が二人を促すと国王陛下がエリザベート様の肩に手を乗せ引き寄せた。


「では撮ります。『ハイ、チーズ』」


 写真カードに無地のカードを重ね、魔力を流す。詠唱は『ハイ、チーズ』だ。


 撮り終えた写真をエリザベート様に渡す。


「これが写真です」


「これは……素敵な、とても素敵な写真ですね」


「ああ、これは良いものだ。写真カード、とても良いものだ」


 国王陛下とエリザベート様は二人が寄り添って写っている写真を見て、幸せそうに微笑んでいた。





「陛下のお話はもうよろしいでしょうか?」


 エリザベート様が国王陛下の顔を伺う。


「ふむ、まぁよかろう」


 国王陛下が納得するとエリザベート様がマライアさんに向き直った。


「マライア、なぜ斯様な宝石を持ってきたのですか」


「はい殿下。私はこのダイヤモンドにおける王室のご協力を賜りたく参上いたしました」


 エリザベート様だけでなく、国王陛下も神妙な顔付きに変わる。


「お話を進めてもよろしいでしょうか」


 マライアさんは真剣な眼差しで国王陛下、エリザベート様を見る。進めてもよいか、つまりこの先の話を聞いたら一蓮托生だと言う感じだ。


「マライアよ、それは国益の為か、それとも私欲の為か」


「両方でございます」


「フフ、その目、その豪胆さ、さすがは荒熊の娘だな」


「えっ」


 国王陛下の荒熊似の一言で、途端に嫌そうな顔になるマライアさん。


「へ、陛下……そのような物言いはご令嬢にかけるお言葉では……」


「アハハ、そうであったな。失敬、失敬」


 国王陛下だからこそ笑って誤魔化せる芸当だ。他の人なら大惨事案件だった。


「では、マライアよ」


 重い国王陛下の一言。


 冗談めいていた場の空気が一変すると、マライアさんが不敵な笑みを溢した。


「話してみるがよい。主の持つダイヤモンドの秘密をな」


 

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