王立学院入学編 第57話 新生活はメイド三人と?

「ルシア先生、おはよう」


 朝の廊下ですれ違う同僚のムキムキ男性教師。


「おはようございます。昨夜はあんなに飲んでいたのに、お強いですね」


「アハハ、酔いはストレスと相殺されますから、朝にはスッキリですよ!」


 あの酒の量で相殺されるストレスって……。


「そ、そうですか」


 昨日の夜は僕の歓迎会と称した宴会だった。そもそも十歳の子供の歓迎会が居酒屋ってどうなのよ。しかも酔っぱらいが子供に絡むとか。


 僕がいる職員室はB職員室と呼ばれ、初老先生――オリビア先生が主任を務めている。職員室は他にも幾つかあるらしい。


「また、今度、飲みに行きましょう」


 廊下を去っていく男性教師。


 だから十歳の子供を飲みに誘わない!





「「「お帰りなさいませ、ルシア様」」」


 アレ? ここは秋葉?


 妙なデジャヴを感じながら玄関のドアを潜った。


 王立学院から比較的近い場所にある一軒家が僕の住まい。部屋数はそこそこ有り、庭付きの一戸建て。


「いよいよ明日から新学期ですね!」


 メイド三人娘の中では良識のあるアリサが僕の着ているブルゾンを脱がしてくれる。


「うん。準備も間に合ってよかったよ」


「ルシア様、今日の夕御飯はサリーが作りましたぁ」


 明るい笑顔のサリー。サリーのご飯は美味しい。昨夜はアリサが作った黒い何かの夕御飯だったから、今日はホッとできる。


「お風呂も入れますが如何いたしますか?」


「どうしようかな」


 三人娘の中で貴族マナーなどに一番詳しいニーナ。流石は子爵家の令嬢だと思わせる時が多々あるが――


「ご飯、お風呂、それとも……」


 などという言動がたまに傷だ。


「――痛っ」


 アリサのチョップがニーナの頭に刺さる。


「アリサさん、痛いではありませんか」


「ふふ〜ん。私はニーナのお目付け役だからね。カテジナ様からの勅命である!」


 鉱山村から出発する時にこんな一幕があった。





「行ってしまうのか……」


 マライアさんは領主の仕事があるので王都に行く事は出来ない。


「時間があれば顔を出しますから、元気出してください」


 転位魔法があるから僕からならマライアさんには直ぐに会える。


「サリー、アンナ、ニーナ、ルシア様をお願いします」


 カテジナさんの前に並ぶメイド三人娘。


「はい。ルシア様の事はお任せください。フフ」


 悪い笑みを湛えるニーナ。カテジナさんは、はぁ〜とため息を吐いて――


「ニーナ、忘れ物ですよ。あなたの机の中にしまったままでしたよ」


「え、あの、それは……」


 カテジナさんがニーナに手渡したのは黒い封筒。あれは僕が辺境伯領でニーナのお姉さんから渡された手紙だ。


 あの時、アンナさんはニーナが泣いて喜ぶ手紙だと言っていたけど……。


「ニーナ、アンナ様からの大事な手紙だから、しっかりと持っていなさい」


「……はい」


 ニーナは涙目で黒い封筒を受け取った。




「アンナさん、だからと言って淑女の頭を殴るのはやり過ぎです!」


「殴ってないよ。これはチョップだ!」


 こんな感じで帰宅すると毎日がドタバタ劇。


 クスっと僕は笑い――


「みんなでご飯にしよう」


「「「は〜い」」」


 明るいメイドさん達とテーブルを囲むご飯。最高に美味しい時間だ。





「それじゃ、行ってくるね」


「「「行ってらっしゃい、ルシア様」」」


 今日から新学期。僕も先生デビューの初教壇だ。


「う〜ん、頑張るぞ〜!」


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