陽子のスピリチュアル日記
@pockey1230
第1話 ガラスが割れててこんにちは
玄関の戸は、引き戸だった。
幼稚園時代のわたしは、おとなしい、可愛らしい(自称)女の子だった。
兄がいて、年子で生まれたから、常に母の取り合いで仲が悪かった。
父と母は優しかった。
母は私を、たまに「ポヤンこちゃん」と呼んだ。
いつも口を開けて、ぼーっとしていたからだ。
もしも小さなわたしが、日記を書くなら、こうかな。
❤昨日の夜、寝ていたら、お兄ちゃんがわたしを揺すり起こした。
グッスリ寝ていたのに、何?
お兄ちゃんはわたしに、
「お父さんとお母さんが、ケンカしとる」
と言った。
わたしはそんな筈、ないと思った。
お父さんとお母さんがケンカなんて、しない。
見たことない。
そしたら、バチンと音がして
「痛い」
と下の階からお母さんの声がした。低くて、怒った声だった。
また、バチンと音がした。
お父さんがお母さんを叩いたみたいだった。
お兄ちゃんは、怖がっていて、いつもはわたしを叩いたり蹴ったりするくせに、
手を繋いできた。わたしは嫌だったので手をほどいた。❤
何でケンカしたのか理由はわからなかった。
後から分かったのは、お父さんはわたしに優しいけれど、生活費をくれなかったみたいだった。
そして夜中にお酒を飲んで帰って来て、暴れるので
窓の一部が割れてたり、玄関の戸の下が割れてたりしていた。
窓はどうやって割ったのか知らないけれど、玄関は酒に酔って蹴りわったって、随分後、お父さんのお葬式でお兄ちゃんが言ってた。
わたしはまだ、自分の家族の背景がわからなかったし、よその家に遊びに行ったりしなかったから比べたり出来なかったけれど、
自分は幸せなんだと疑わなかった。
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