Chapter 8 The Detective of the End 終焉の探偵

第25話 穏やかな朝

 朝日で目が覚めた。


 カーテンの隙間から差し込む光が、まぶしい。

 目をこすりながら起き上がると、隣の布団に梓さんがいた。


 まだ眠っている。

 寝顔が、穏やかだ。


 昨夜、色々話したっけ。

 お母さん同士のこと、村のこと、清音さんのこと。

 そして――「一緒に頑張ろう」って、私言ったんだっけ。


 梓さんの寝息が、静かに聞こえる。

 起こさないように、そっと部屋を出た。



 リビングに行くと、もう母が起きていた。

 キッチンで朝食の準備をしている。


「おはよう」


「あ、おはよう真弓。梓ちゃんはまだ?」


「うん、まだ寝てる」


 母が微笑んだ。


「昨日は色々あったものね。ゆっくり寝かせてあげて」


「うん」


 私もキッチンに立って、母の手伝いをする。

 味噌汁の匂いが、優しく鼻をくすぐった。



 しばらくして、梓さんが部屋から出てきた。


「おはよう……ございます」


 寝癖がついてる。

 いつもの凛とした雰囲気と全然違う。

 眠そうに目をこする梓さん。


 可愛い。


「おはよう、梓ちゃん。顔、洗ってきたら?」


 母が優しく声をかける。


「あ、はい……」


 梓さん、ふらふらと洗面所へ向かった。

 私と母、顔を見合わせて笑った。

 いや、ほんと可愛いな!



 三人でテーブルを囲む。

 ご飯、味噌汁、焼き魚、卵焼き。

 母の作る朝ごはんは、いつも優しい味がする。


「いただきます」


 梓さんが、丁寧に箸を取る。

 一口、ご飯を食べて、ほっと息をついた。


「……おいしい」


「よかった」


 母が嬉しそうに笑う。


 梓さんの食べる姿を見ていると、なんだか嬉しくなる。

 昨日も思ったけど、梓さんって本当に一口一口を大切に食べるんだよね。


「梓ちゃん」


 母が口を開いた。


「お友達、見つかるといいわね」


 梓さんが、少し箸を止めた。


「……はい。頑張ります」


 静かな声。

 でも、強い意志が込められている。


「私も手伝うよ」


 私が言うと、母が少し心配そうな顔をした。


「あんまり無理しないでね。二人とも」


「大丈夫だよ」


「……そう」


 母は、少し考えてから、小さく頷いた。


「何かあったら、ちゃんと話してね」


「うん」



 朝食を終えて、学校の準備。

 梓さんは私の部屋で制服に着替える。

 私も着替えて、二人並んで鏡を見た。


「……ありがとう、真弓さん」


 梓さんが、小さく言った。


「ん?」


「昨日、今日……全部」


 梓さんの目が、少し潤んでいる。


「何言ってるの。また困ったら、いつでも来てね」


「……うん」


 梓さんが、小さく笑った。



 玄関で、母が見送ってくれる。


「いってらっしゃい」


「いってきます」


「いってきます」


 梓さんも、自然に言葉が出た。

 母が、嬉しそうに微笑む。

 そして、私たちは、二人で家を出た。

 相変わらず暑くて、何も解決はしてないけれど今日はいい日になりそう!



 てくてくと、並んで歩く。

 真夏の朝。

 蝉の声が、うるさいくらいに響いている。

 生ぬるい風が、頬を撫でていく。


「昨日は、ありがとう」


 梓さんが、小さく言った。


「もう何回目? そのお礼」


「ふふ……ごめん」


 梓さんが笑う。

 その笑顔を見て、私も笑った。


 歩きながら、思う。

 梓さん、最初は怖かったけど。

 今は、友達だ。

 いや、もっと……家族みたいな?

 そんなこと考えてたら、なんだか照れくさくなってきた。



 駅の雑踏を抜けて、立教通りへ。

 同じように登校する学生たちと並んで歩くうちに学校に到着。


 校門をくぐると、いつもの朝の風景。

 生徒たちの声が響いている。

 平和で、穏やかで。


 でも――。


 なんだろう。

 小さな違和感。

 何か……変な気がする。

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