第二話
ソファで項垂れる桜井。スマホの通知履歴に茜から「弥生の様子を見に行きます」と連絡が入っていた。頭を抱える。
テレビをつけると、最近世間を騒がしているバス爆発事故の報道が流れている。映像には、事故現場に駆け付けた被害者の遺族や友達が咽び泣いている。まるでテレビ局の視聴率を稼ぐために仕込まれたエキストラのようだ。
「バスの爆発現場に来ています。現場には被害にあった方の関係者が駆けつけています」
事故現場に向かって友達の名前、子供の名前、恋人、家族の名前を呼んでいる。そこに誰もいないのに。まるでそこにまだ大切な人がいるかのように呼ぶ。叫ぶ。
場面が切り替わり、今回爆発事故を引き起こしたバス会社の謝罪会見が映された。
「今回の爆発の原因は燃料漏れによる引火とのことです」
バス会社の社長と役員がフラッシュを浴びながら深々と謝罪をしている。
「すみません…。すみませんでした」
「すみませんで済むか!」「どう責任を取るつもりだ!」と罵声が飛び交う。記者の前に飛び出し泣きながら土下座をする社長。
「本当にすみませんでした!!」
テレビを消す桜井。トイレに駆け込み嘔吐する。
1週間前
「お父さん、おはよう!」
朝の7時。弥生に無理やり起こされ目を覚ます桜井。
「弥生。朝ごはん早く食べちゃいなさい」
弥生はランドセルを背負いながら、朝食を食べる。
「行儀が悪いからランドセルは置いておきなさい」
「いやー。持ったまま食べる」
弥生は来月小学校に入学する。学校に通うのが楽しみで仕方がない。
「この子ったら」と困る茜。「まあいいじゃないか」と宥める桜井。
「そろそろ俺も出るよ」
「ええ。気を付けて」
「弥生、行ってくるね」
「うん!いってらっしゃいお父さん」
靴を履く桜井。「じゃあ行ってきます」
「お父さん!」
「どうした?弥生」
「忘れものだよ!今日雨降るってお天気のお姉さんが言ってたの」
「そうか、ありがとう弥生」頭を撫で、家を出る。
某メーカー勤務の桜井。昼休憩が終わり、倉庫の備品をチェックしていると、
「おい、桜井!」
同僚の石丸が慌てた様子で桜井を呼ぶ。
「?」
慌てて、タクシーから降りる桜井。病院に駆け込み急いで受付に向かう。
「すみません! 桜井弥生の父です! 弥生は今どこに!?」
手術室の前で弥生の無事を祈る茜。
「茜!! 大丈夫か!? 茜!!」
「弥生が車に轢かれて…、事故に遭ったって先生から連絡が来て…」
手術中のランプが消え、執刀医が手術室から出て来る。
「先生! 弥生は…。弥生は無事なんですか…?」
「お母さん落ち着いてください。手術は成功しましたが、弥生ちゃんは頭を強く打って、大脳が酷く損傷していました。息をしているのが奇跡的な状態です。ただ幼く、体力的にも厳しく…。半年生きていけるかどうか…」
「そんな…。そんなのあんまりです!! 先生! なんとかならないんですか!?」
「ここまで脳にダメージがあると手の施しようがありません…。無理に治療しても弥生ちゃんの体力が持たないと思います…」
お辞儀をし、その場を後にする執刀医。
「そんな…。なんで弥生が…」
「茜。気をしっかりしてくれ…。最期まで見届けよう」
「最期なんて…、言わないでよ」
わすれもの リバー @fu_0888
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