影の山田さん

OROCHI@PLEC

影の山田さん

注 この話はフィクションです。


俺の苗字は山田。

しがない高校生だ。

名前?

特定されそうだから却下だ。


ちなみにこの話はな、俺の自分語りの話だ。

なんか突然誰かに自分のことを話したくなったからこの話を書いている。

もし、それが嫌ならすぐにブラウザバックしてくれ。

アンチはお断りだ。


命令 今すぐブラウザバックして下さい。あなたに不利益が及ぶ可能性があります


……ふう、ここまで言ったら余計な奴らはいないだろう。

最近はアンチとかボットとかが多くて困るぜ。

それじゃあ、さっそく自分を語っていこう。

自分語りなんて、ネット上でしかできないからな。


俺は、名前から察せる通り、どこにでもいそうな、いたって地味な人間だ。

クラスでもいつもはじのほうで小説を読んでいる。

最近読んでいるのは、とあるスパイものの小説だ。

かなり面白い。

そんな陰キャな俺だが、クラスの人からは山田さんと呼ばれている。

クラスの陽キャどももなぜか俺のことを山田さんと呼ぶ。

なんでか聞いたことがあるのだが、なんかそう呼ばないといけない気がするらしい。

なんじゃそりゃ。


そんな俺だが意外とクラスの人の相談役に抜擢される。

色恋沙汰とか、喧嘩の話とか、友人関係とか、その相談内容は多岐にわたる。

特に周りに対して何かをしたとかいうわけではない。

ただ、周りが俺に話しかけてくるのだ。

相談自体も特に特別なことはしていない。

ただ、相手の言葉を最後まで聞いて、最後にちょっとだけ笑わせるだけ。

気づけば向こうは勝手に答えを見つけていて、俺は何もせずに相談はいつも終わる。


そんなんで良いのか、相手は何を結局求めているのかが気になって、一度、何故俺に相談しようと思ったのか聞いてみたことがある。

聞いたのは色恋沙汰を相談してきた女子生徒だったのだが、彼女はこう答えた。


「なんか、失礼かもしれないんだけど山田さんはどこにでもいるんだけど、何があっても変わらない感じがして、ただ話すだけでも何だか安心できるからかな。しいていうなら空気みたいな。どこにでもいつもただ変わらず私たちの周りにある。あるのが当たり前だけどなくなるととても困る存在。」


「……俺の存在感が薄いってこと?」


「そういう話ではないって!ソウトハオモッテナイヨ」


「おい」


思わず、そういってしまった俺だったが、内心は嬉しかった。

自分はどこにでもいるような存在で何の役にもたたないと思っていたが、そんな存在だからこそ、誰かを安心させることができると感じられたからだ。

実は誰かの心の支えになれていると思えたからだ。

どこにでもいるようなありふれた、普通の人間も意外といいのかもしれない。


俺は山田。またの名を山田さん。

どこにでもいる男子高校生だ。

どこにでもいるから、見るとなぜか安心できる不思議生物だ。

今日も俺は山田さんとして存在し続けている。空気の様に。

地味で影も薄く、苗字しか覚えられていないけど、そんな俺でも誰かの役に立っている。

それだけで十分だ。

普通の人間だっていいじゃない。

存在するだけで案外、意味があることもあるんだから。


というわけで俺の自分語りは終わり。

また、どこかで会おう。

ネットの世界は広いが狭いからまた会えるさ。

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