勝手に戦え!暴走ババア軍団vs強盗犯

「「「「せーの!!!!!!!」」」」


 しわがれた掛け声が降ってきた。


 次の瞬間、僕の目の前の大型商業施設、その最上階の窓ガラスが、バリンと音を立てて砕け散った。


 ガラスの破片と共に姿を現したのは……鳥だ! 飛行機だ!


 いや、横一列に並んだ 4 人のババアだ!


 ババアたちは勢いよく宙に飛び出すと、仲良く手を繋いでバンザイ。


 ぎこちなく膝を曲げて、澄み渡った青空をバックにジャンプを決め、そのまま地面にドスンと落下した。

 

 着地の衝撃で土埃つちぼこりが上がる。


 粉塵ふんじんで悪くなる視界の中、4 人の影がゆっくりと、だが迷いのない足取りで、こちらに近づいてくる。


 マルドゥクエリアは風が強い。始終、湿度を含んだ熱風が吹く。


 その風に乗って、会話が聞こえてくる。


「決まったわね、き○らジャンプ……。膝のダメージを気にせずに跳べるのはゲームならではねェ」


「この年で骨折したら寝たきりになるからのう」


「うげえ……ゴーグルしたままジャンプしたから酔っちゃいましたぁ……」


「大丈夫? 飴さんいりはります?」


 数秒もたたぬ間に、マルドゥクの強風が土埃を掻き消した。


 視界は再びクリア。それとともに目に映るのは、顔がそっくりの老婆たち。

 

 微妙な差異はある。


 垂れ目のババア。吊り目のババア。涙目のババア。猫目のババア。


 「喜」「怒」「哀」「楽」って感じにバリエーションはあるものの、目以外、顔の構成パーツが全く同じだ。


 ドッペルゲンガーみてるみたいで、なんか気持ち悪いな。


  4 人の老婆は同時にギョロリと眼球を動かし、僕らを睨みつけた。

 

「どーも、侵入者ちゃん。あたしは上終中学校美術部所属のプレイヤー。ジェットババアって名乗ってるの。それ以上の自己紹介は不要かしら。だって残りの寿命が短いモンねェ!!」


「余命が短いってのはテメェらのことだぜ、わしらじゃなく。テメェらはここで瞬殺されるんじゃからのう。あ、わしはジャンピングババアという」


「わ、わたしは、キネシスババア……モンスターを操るのが得意で……よろしくお願いしますぅ……」


 垂れ目、吊り目、涙目がそれぞれ名乗りを上げたところで、僕は頭に浮かんだ疑問を口に出す。


「上終中学校美術部ってお婆さんしかいないの?中学校っていうからもっと若い奴らかと思ってたが」


 ゲームの中に、中学校ってものはない。

 だから、どんな施設なのかは実際には知らないのだけれど、おかしいはずだ。

 

 だって、上終中学校美術部というクラン名を聞いたときに、僕の辞書プログラムが教えてくれた。


 曰く、12 歳から 15 歳までの子どもが通う学び舎であると。

 年寄りが井戸端会議する場所じゃないはずだ。


「あらあら。ゲームのアバターとリアルでの姿は関係がないんだがねェ」


「女性に年齢の話をするのは失礼と習わなかったか? ガキ」


「誹謗中傷です……ヌクモリティのあるレスを心がけてくださぃ……」


 猛抗議する 3 人。予想外の反応にちょっとたじろく。

 プレイヤーはリアルでの年齢に触れると怒る……って知識は僕にはなかった。


 普通に申し訳ない。


「あ、すみません……プレイヤーと会話することもあまりなくて、話すのに慣れてないもんで」


 頭を下げる僕に、猫目の老婆がニヤニヤしながら口を開いた。


正直やなぁ、坊ちゃん礼儀を覚えろクソ坊主。ま、実際、うちらが中学生やったんは何十年も前のことやけど。ハートは 15 の頃から変わってへんえ」


 そう言いながら彼女は、持っていた杖を握り替え、抜刀の構えを見せた。

 

 杖にはうっすらと切れ目があり、そこから銀の刃がのぞいている。

 

「あちきは、ムラサキババア。上終中学校美術部のクランマスターどす。ごちゃごちゃした領地ですんまへんが、ぶぶ漬けでも食べてとっとと楽しんでおくれやすくたばりやがれ

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