第42話 さらなるカオス

 百五十五:氷と銃弾の交錯 🧊🔫

​ 下水道の通路は、郡山の放つ氷結とデュアル・リーパーのアンチ変異弾が交錯する戦場と化していた。

​ デュアル・リーパーは、氷の床で足を取られながらも、冷静に郡山の動きを読んでいた。

​「ただの**『病の副産物』**でしかない変異体が、俺に勝てると思うな!」

​ 彼は、郡山の頭痛がピークに達し、氷の放出が最大になる瞬間に、その無防備な胸元に二連射を叩き込もうとした。

​ その時、郡山は頭痛の激化に耐えきれず、叫びを上げた。

​「くそっ、頭が割れる!もう、全部凍ってしまえ!」

​ 彼の体が放つ冷気が一気に爆発し、通路全体が分厚い氷で覆われた。デュアル・リーパーの足元が凍りつき、彼の体が氷に固定された。

 百五十六:予期せぬ闖入者 🐻

​ デュアル・リーパーが氷の拘束から脱出しようともがいていた、その矢先。

​ 下水道の奥、暗闇から、異様な唸り声が響き渡った。

​ ドス、ドス、ドス……

​ 重く、不規則な足音。水面を割って現れたのは、本来、この場所に出現するはずのない巨大なツキノワグマだった。その体毛は汚水と泥で濡れそぼり、目には狂気が宿っている。

​ この熊は、結社がかつて五霞で実験的に放逐した**「環境変異体(エンバイロメント・ミュータント)」**の生き残りが、地下水路を辿って結城市の廃病院地下へと迷い込み、飢餓と変異エネルギーの残滓で凶暴化したものだった。

​ 熊は、通路に溢れる**「高密度の変異エネルギー(郡山とデュアル・リーパー)」**に引き寄せられ、唸り声を上げながら、氷に固定されたデュアル・リーパーへと突進した。

 百五十七:本郷の親知らずと熊の咆哮 🦷

​ 点検口の奥で事態を観察していた本郷 猛は、目を疑った。

​「熊!?この地下にまで、結社の残した**『環境の病』**が……」

​ そして、この予想外の事態が、本郷の肉体に最も深刻な影響を与えた。極度の緊張と、熊の咆哮による鼓膜への振動が、彼の親知らずの激痛を臨界点まで引き上げた。

​「あああ……!」

​ 本郷は、あまりの痛みに意識が飛びそうになった。彼は、桑田の体を抱きしめたまま、必死に壁を掴んだ。口腔内は血の味が広がり、頭は割れるようだった。

​(俺は、今、目の前の痛みに負けるわけにはいかない!桑田君の治療が……あと一歩で!)

​ 本郷は、痛みで思考が麻痺する中、桑田のバイタルデータを一心に見つめた。彼の勝利は、桑田の回復にかかっている。

 百五十八:三つ巴の地獄絵図 💥

​ 郡山は、頭痛の波が引いた瞬間、自分の能力で氷漬けにしたデュアル・リーパーめがけて熊が突進しているのを見た。

​「何だこれ!?頭痛で熊まで呼んだのか、俺は!」

​ 郡山は、頭痛が再発する恐怖と、目前の熊の脅威から、再び強力な氷結能力を発動させた。

​ 氷の壁が、熊とデュアル・リーパーの間に瞬時に形成された。

​ しかし、その勢いは止まらない。熊は、分厚い氷の壁に体当たりし、鈍い音とともに壁を粉砕した。

​ デュアル・リーパーは、氷の拘束から辛くも脱出したが、その背後には飢えた熊が迫っていた。彼は即座に銃を熊に向けたが、アンチ変異弾がただの熊に効く保証はない。

​「くそっ、処理対象外が増えやがった!」

​ 本郷 猛は、点検口の奥で、親知らずの激痛に耐えながら、この三つ巴の地獄絵図が、**「桑田の治療完了」**までの時間稼ぎになることを祈った。

​ そして、桑田のリストバンド型センサーが、ついに緑色の安定光を放った。

​[桑田 洋 バイタルデータ] 白血球値:正常範囲に回帰。ナノマシン効果:完了。変異エネルギー:最小限の生命維持レベルに安定化。

​「成功だ……!」

​ 本郷は、激痛の中で、かすかに勝利を確信した。

​ 治療を終えた本郷 猛は、この三つ巴の戦場から、桑田を連れてどのように脱出するでしょうか?そして、彼の親知らずの痛みはどうなるでしょうか?

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