第37話 螺旋階段の闘い
百三十五:隠れ家からの脱出と追撃 🚨
本郷 猛の拳は、デュアル・リーパーの顔面を寸前でかすめ、彼の構えをわずかに崩した。その一瞬の隙を逃さず、本郷は暴走するノーズ・ブレイカーから離脱し、彼のナノマシン注入器を再び構える。
「俺に構っている暇はない!君の獲物は、暴走エネルギーの方だろう!」
本郷は、暴走で飛び散った血液とエネルギーの火花をデュアル・リーパーの方へ誘導し、注意を逸らした。
デュアル・リーパーは舌打ちし、本郷の足元へアンチ変異弾を撃ち込み、爆発による煙幕を張った。 本郷は、煙に紛れてノーズ・ブレイカー(桑田)を抱え上げ、隠れ家の非常脱出ハッチへと飛び込んだ。
脱出ハッチは、本郷が事前に用意していた、外部の廃病院の地下通路へと繋がっていた。
百三十六:廃病院の螺旋階段 🌀
本郷は、意識を失いかけている桑田を背負い、薄暗い地下通路を走り抜けた。出口の先には、崩壊寸前の廃墟と化した結城市の旧総合病院の建物がそびえ立っていた。
彼らが向かうべきは、病院最上階にある、外部から隔離された緊急治療室だ。
「ここなら、外部の干渉を受けずに治療できる!」
だが、背後からは追撃の銃声が響いていた。デュアル・リーパーが、すでに脱出ハッチを追って侵入してきていたのだ。
本郷は、病院中央の吹き抜けにある、錆びた螺旋階段を駆け上がり始めた。この螺旋階段は、構造的に脆く、また、上下からの挟撃を受けやすい、極めて危険な戦場だった。
「どこへ逃げても無駄だ。変異体の処理は、俺の専門分野だ」
デュアル・リーパーは、軽快なステップで階段を駆け上がりながら、二丁拳銃から正確な追撃弾を放った。弾丸は、本郷の足元と頭上の手すりを掠め、火花を散らす。
百三十七:医師の防御と患者の命 🩸
本郷は、桑田を背負ったまま、階段の踊り場で体勢を立て直した。彼は、桑田の体を自分の背中で完全に覆い、**「人間の盾」**となった。
「撃ってみろ!俺を撃てば、お前は結社にとって価値のある『研究者』をも失うことになるぞ!」
デュアル・リーパーは、一瞬ためらった。本郷 猛は、変異体の制御・開発における貴重な人材である。しかし、目の前の暴走個体(桑田)の「処分」という命令もまた、絶対だった。
「……アンタが邪魔をするなら、両方処分するまでだ!」
彼は、階段の柱の陰から、本郷の**「強化グローブを装着した右腕」**を正確に狙い撃った。
パンッ!
弾丸は、グローブの強化装甲に直撃し、本郷の右腕に強烈な痺れと衝撃を与えた。その衝撃で、本郷の腕からナノマシン注入器が滑り落ち、階段を転がり落ちていく。
百三十八:治療の最後のチャンス 🌟
「くそっ!」
本郷は、ナノマシン注入器を追おうとしたが、デュアル・リーパーの銃口が再び向けられた。
その時、背中に担がれた桑田 洋の体から、微かに安定した変異エネルギーの波動が発せられた。ブラッド・キーパー(ナノマシン)が、激痛のショックから立ち直り、ついにAML細胞の破壊と変異システムの調整を開始し始めていたのだ。
しかし、その安定化のエネルギーは、同時にデュアル・リーパーの**「変異体センサー」**を強く刺激した。
「チッ、まだ生きていやがる!完全に止める!」
デュアル・リーパーは、桑田に向けて致命的な変異停止弾を装填した。
本郷は、目の前で患者の命が奪われるのを黙って見ているわけにはいかなかった。彼は、再び残された左腕の医療用グローブを装着した。
「俺は、君を救う。桑田君、君の戦いは、もう流血ではない!生きる意志だ!」
本郷は、螺旋階段という狭く不安定な空間を、医師の覚悟と戦士の技術で支配しようとしていた。
ナノマシン注入器は、階段の下へ転がり落ちた。本郷は、治療の最後のチャンスを掴むため、二丁拳銃の処刑人と、崩壊する螺旋階段に立ち向かう。
本郷 猛は、螺旋階段の上か下か、どちらへ向かい、デュアル・リーパーを撃退するでしょうか?
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