第八節 未来へ

──神聖レノヴァ帝国、円卓にて。


クルト

「…さて、今回皆に集まってもらったのは『彷徨う者達(ドミネクリプス)』についてだ。現在、非常に厄介なことになっている。」



──レクトのリーダーであるクルトはその威厳を示しながら話し始める。


アペルテス

「ふむ…。あの外れ者共の事か…。全く……相変わらずアレらは迷惑しかかけぬのだな。」


 アペルテスはそう訝しんだ。


クルト

「うむ。それ故、対策を練るためにこの場を設けっ……」


 クルトの言葉に割り込む様にして、クリシアが切り出す。


クリシア

「まぁまぁ…テオちゃん。そう怒らないの。それにしても珍しいわね。いつもなら今頃、豪快に笑っているじゃない?」


アペルテス

「その呼び方はやめてくれないか?オルランド卿。これは別に怒っているのではない。ただ…呆れているのだ。それと…、貴方はこの俺を、年中騒いでいる獣だとでも思っているのか?」


クルト

「あの〜…。私まだ話して…」


──クルトは威厳を……


クリシア

「曲解しないでちょうだい。それに、普段の貴方らしく無いのは事実でしょ?だから…少し気になっただけよ。」


クルト

「え〜っと……。」


──威厳を………


トリス

「…無駄話はその辺にしておきたまえ。クルト殿が困ってしまうだろう。その証拠に、今もああして百面相をしている…。」


クルト

「ちょっ!酷いじゃないかっ!トリスぅー!」


──撤回しよう。威厳など無かったのである。


アストル

「あのさ、皆んな僕こと忘れてない?さっきから蚊帳の外なんだけど。」


一同

「うるさい。」


アストル

「あっはい…。」


──いつも通り不憫なアストルなのであった。


アペルテス

「すまぬな…クルト卿。

邪魔をしてしまった。」


クリシア

「私もごめんなさいね…クルちゃん。」


トリス

「さて…クルト殿。話の続きを頼む。」


クルト

「こっコホン!……えーっと、ン"ン。

くだんのドミネクリプス達の動きが、最近活発になって来ているのは知っているね?

 それについてなのだが…《混沌ファビウス》が動いた。」


一同

「っ…!」


トリス

「それは…まずいな…。だが、奴らの中でも混沌は今まで、全くと言っていいほど動きを見せていなかったはずだが…。

 それが誤りである可能性は?」


クルト

「それについてはまず無いと言って良い。なにせ…"見た"からね。」


 そう言い、クルトは自らの目を指差す。


アペルテス

「…なるほど。貴殿がそう言うのであればそうなのであろうな…。」


クリシア

「混沌が動いたなら〜他のメンバーが動いていても、おかしくは無いわね〜。」


アストル(割って入る)

「はいは〜い!一つ質問いいかな?」


クルト

「む?どうしたのだ?アストル君。」


アストル

「その話についてなんだけど〜?僕、少しだけみんなより詳しく知ってるんだよね〜。」


トリス

「興味深いな…。アストル殿、勿体ぶらずに聞かせてくれ。」


アストル

「ハーイ。早速だけど…混沌以外にも《苛烈カルデラ》と《縛鎖セクメト》も動くっぽいんだよね〜。」


──その発言に、あたりの空気が張り詰める…。そして、少し間を空け、クルトがその口を開く…。


クルト

「ふむ…。信じ難いな…。それで?その情報は何処から来ているのだ?」


アストル

「"フィクサー"。みんなも知ってるでしょ?」


トリス

「ああ…あの得体の知れぬ男か…。敵か味方かも分からないが、異常なまでの情報通…。」


アペルテス

「確か、かの情報屋エルゴと双璧を成す男であったか?彼は情報屋エルゴよりも神出鬼没だが、あの者よりは代価を取らない。」


「良く会えたものだ。意外と、人脈が広いのだな。アストル卿は。」


アストル

「まぁね〜。」


クリシア

「それにしても、混沌に続いて苛烈に縛鎖が動くだなんてねぇ〜…。お姉さん困っちゃう…。絶対荒れるわよ〜?」


クルト

「だろうな。とりあえず、割り振りを決めよう。まず、最も厄介な混沌に関しては私がどうにかしよう。おそらく、私以外ではまともに撃ち合えない。」


トリス

「ならば私は縛鎖を担当しよう。彼女の正確無比な魔術の腕は、私にはむしろ逆効果だからな。」


クリシア

「なら〜私は苛烈を担当しようかな〜。ああいうのって、丸め込み易いし〜。」


アペルテス

「俺は万が一のため、協力者を募っておこう。伝手がある、それも強力な奴だ…。」


アストル

「ああ〜。あの人ね…。でも良いの?連携…難しそうだけど…。だって彼、アウロラの中でも随一の寡黙キャラでしょ?」


アペルテス

「そうだな。だが"カルナ卿"の実力は皆、知っての通りだ…。申し分無い。それに、意外と話してみれば普通の青年だよ。」


「基本的には寡黙だが、ある程度親しい者にはよく口が回る。」


アストル

「そっ。じゃあ、僕も他を当たってみようかな…。」


クルト

「何処にあたると言うのだ?」


アストル

「内緒!でも、強いて言うなら…。

何処ぞの"導き手"さんかな!」


トリス

「っ…!それは………。誠、心強いな…。」


クリシア

「でもそれって、強力な助っ人がいるくらい…大変って事よね〜?」


アペルテス

「当然だろう?ただでさえ…一人でも厄介だと言うのに、3人も同時となると厄介では済まされない。その上、他にも参戦する可能性も捨てきれんからな…。」


クルト

「ふむ。役割は分ける事が出来たな。みな、全力で励むように!」


「彼らがどのタイミングで、どこに現れるかは未だ分からない。だからこそ、警戒を怠らず、いつでも出撃できるように待機しておけ。」


一同

「"神聖が掲げる理念の元、

 我ら5柱の裁断者は、己が身を持って、

──必ず…審判を下すと誓おう"。」


  ***


 穏やかな風が、静かに吹いていた……。


 ゆっくりと瞼を開く。


???

「懐かしい…夢を見た気がするな…。」


 ふと、窓の外を眺めていると…街の賑やかさが目に入る。


ギィ……


 ベッドから立ち上がり、静かに支度を始める。手入れの行き届いた箱を開け、旧式の銃を腰に掛ける。


 そして、二つの対になっている耳飾りの片方を大切そうに身につける。


 首には家族の写真を収めたロケットを掛け、

 年季の入ったモノクルを目元に添える。


 ゆっくりとロケットを開きながら……。


???

「レオ兄……ルイ兄……父さん、母さん……そしてマーサと、みんな。」


???

「“僕”……アルは、ちゃんと……全部覚えてる。」


アル

「今はヴィド・ファルグレイス子爵として、アスペリア皇国で探偵をやっていてね。


──みんなのおかげで、毎日が本当に楽しいんだ。」


アル

「……僕は……あの一件を“復讐”じゃなくて、

 “理解”するためにここまで来た。

 必ず、原因を見つけてみせるから……。」


 アルは扉に手を掛け、ゆっくりと深呼吸をする。


ヴィド

「……それじゃあ、“俺”…行ってくるよ。」


ガチャッ……


 どこか大人びた少年は、

 “過去”を胸に、“今”を生きる。


 かつての闇に別れを告げ、差し込む光へと歩みを進める。


 そうして彼は今日も――

“探偵”として、未来を追い続けるのであった。

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