初めての子供が生まれたとき、
母親もまた生まれる。
子供が一歳を迎えたとき、
母親もまた一歳を迎える。
子供にとって全てが初めてのように、
母親にとっても全てが初めてなのだ。
「無償の愛」とはよく耳にするが、
それは聖母の所業ではないのか。
人間は聖母にはなれない。それゆえ聖母は聖母と呼ばれる。
人間はそこまで崇高な精神を持ち合わせていない。
誰にも評価されず、誰にも認められず、それでも心穏やかに育児をできるほどに強くはない。
子供の全てを心から笑って受け入れられるほど強くはない。
子がひとりの人間であるように、
母もまたひとりの人間なのだ。
わが子だからといって、いつも笑えるわけではない。
親に限ったことではない。
誰もが表面化しない問題を抱えているかもしれない。
見えないところで泣いているかもしれない。
表面化した苛立ち、悪意、蔑み、無関心。
その裏には相応の理由があるのかもしれない。
だからこれは人間の物語。
誰にも知られることのない、人間の舞台裏の物語。
母親の子育て、そこに関わる人々を描いた現代ドラマです。
母親だけでなく、周りの人々にも視点が切り替わり、様々な人物の内面が描かれています。
この物語に完璧な善人はいません。みなどこか暗い部分をもっています。
そこが登場人物にリアルさを与え、人間臭さを感じさせます。
各登場人物の内面描写が巧みで、なぜそのような行動をしたのかという行動原理まで理解できます。
人と接するときに今より少し寄り添える、今より少し優しくなれる、そんな変化をもたらしてくれる作品です。
本作を読んで、様々な人間の心の内を覗いてみてはいかがでしょうか。
大好きな人と結婚して
かわいい我が子が産まれて
幸せなはずなのに――――
上手くいかない子育てに
毎日イライラ
我が子は
「おかあさん だいすき」
と言ってくれるのに
笑ってくれるのに
素直に受け止められない時もある
他のお母さんたちは
どうしているのだろう?
私の子どもは
私の家庭は
「普通」なのだろうか?
日々
悩み
傷つき
藻掻いて
それでも
我が子の成長に
嬉しくて
時に涙して――――
これは子育てに奮闘する作者自身の葛藤の物語
「育児」に教科書なんてないと
考えさせられるお話
作品の内容には賛否両論あるかと思いますが
一人の女性が「母親」として成長していくお話でもあります
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葵くんは手のかかる男の子。何度言っても危ない行動は止めないし、スーパーに行くだけでも一苦労。ほかのお母さんの目も気にかかる。
ここで、ママ友に愚痴れればいい。でも、人間関係はそんな単純ではない。子供を通じた比較や妬み。複数のお母さんが登場するが、お母さんたちに名前はない。咲良ちゃんの「お母さん」、聖斗君の「お母さん」。お母さんという役割が主な社会認知となる、社会のあり方の歪みも読む側に突きつける。
そして、恐るべき程に薄い父親の関わり。葵くんのお母さんは、葵くんが少し大きくなって、言葉を通じたコミュニケーションが成立するようになって、ようやっと親子としての愛情を感じられるようになる。この戸惑いは普通だと思う。言っても通じない、突発的な行動をする、下手をすれば全体力を使ってぶつかってきたり、向かっていったりするので、自身の身の危険さえ感じる。誰しも最初の子供はわからないことばかりで、手探りで付き合い方を見つけていくのは男女とも同じだと思うのだが、なぜ社会はそれを母親だけに丸投げするのだろうか。
冷静な筆致、鋭い観察眼、いびつな心持ちや人間関係をまっすぐに表現する精神力。育児という、愛情あふれる行為の裏側の救いのない気持ちを、高い解像度で綴っていく。男女ともにぜひ読んで欲しい、子育てのリアルが迫ってくる作品である。