児童文学賞に落ちた話

oga太

コアラの話が落選しました

 コアラが、僕のアパートの呼び鈴を鳴らしました。

ズルズルと工具ベルトを下げ、顔は何だか浮かない感じです。

ああ、これは、落ちたんだな、と察し、僕はコアラを招き入れました。

6畳1Kの部屋。

丸いちゃぶ台にコアラを座らせると、ポットでお茶を入れます。

それを差し出して、僕は質問しました。


「…ダメだったの?」


「うん」


「番号、無かったんだ」


「うん」


「何がダメだったんだろ?」


「わかんない」


 沈黙が流れる。

コアラは、ただ看板に自分の名前が無い、としか言わなかった。

具体的に何が悪かったのかまでは、分からないようだ。

僕は、しばらくして壁掛け時計を見た。

そして、机で今書いているエッセイの執筆に戻る。

コアラに割く時間は、今は無かったのだ。

気がつくと、コアラはいなくなっていた。 

半開きの扉から、冬の冷たい風が吹き込んだ。

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児童文学賞に落ちた話 oga太 @oga12

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