小ネタ短編集

身ノ程知ラズ

奈良県民

奈良県民が大阪に住む旧友を迎え入れる


「よぉ来てくれたな~」


「言うても電車で一時間ちょいやし全然ええで」


「ほな行こか、最近外国人多いから気ぃ付けてな

 あいつらめっちゃ馴れ馴れしいから」


「そうなんや、大阪にも結構おるけどそんなことない気するで」


「まぁなんでもええわ」


二人は近鉄奈良駅から東大寺に向かって歩き始める


「奈良って鹿と大仏しかおらんってよお言うけどあれほんまなん?」


「八割合っとる、最近は色々施設出来とるらしいけど

 所詮奈良やしな、観光客も大体その二つが目当てや」


「なんか悲しいな」


「悲しいとか言うなや、誇り持っとんねんこっちは

 てか車多くて邪魔やわ~」


「車は多いけど言うほど邪魔か?歩道広いしええやろ」


「いや向こう側渡りたいやん?あ、今行けるわ」


奈良県民は車道に飛び出す


車はまるで奈良県民が飛び出すことを予測していたかのように停止した


「お前嘘やろ!?」


大阪府民は少し先の横断歩道を使って奈良県民と合流する


「そんな急がんでも横断歩道使えばええやん!」


「別にええねん、奈良じゃ日常茶飯事や」


「ほんで渡るにしても走って行けや、めっちゃ呑気に歩いとったやんけ」


「気にすな気にすな、俺は奈良で言うところの神の使いやで!なんでもありや!」


「何言うてんねん、てかそういえばお土産持ってきてたん忘れてたわ」


「マジか!嬉しいわ〜」


そう言って大阪府民はカバンからお土産の菓子を取り出す


「なんか、家の近くに有名なせんべい屋があったからそれ買ってきたわ」


奈良県民はどこか悲しげな、がっかりしたような表情を浮かべる


「うわ〜マジか…」


「どないしたん、あんま好きちゃうかった?」


「いや俺あんま『人せんべい』食われへんねん」


「さっきから言動鹿すぎるやろ」






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