第6話 答え合わせ:マスターの話
「せっかく剣変えたのに、また負けたあ。 くそっ! ランキングもずーっと3千万人中の最下位だ! あー、チクッショー」
先ほど来た客が、カウンターでくだを巻いている。
ルーカスといったか。
彼の言葉は美しくないが、悲しそうなことは理解できる。
焦げ茶色の髪が若々しい。
良い酒場のマスターは、詮索するような質問はしない。
ただ、寄り添うのみ。
「お待たせいたしました、ジンレイムです」
と、注文されたものよりも少し、薄めに作った酒を出した。
客の青年は、アーモンドのような目をうるうるさせてグラスを受け取る。
「っく……リザードマンにはいきなり斬りかかられるし……1日に2回も魔物のウンコ踏んだし……不運だ……ウンコしか付かねぇのかよ俺には……配信の視聴者も増えないし……金もないし……うう……でも、負けねえ。俺は絶対に諦めねえぞ……!」
泣き上戸のようだ。
隣の客が苦笑した。
「マスターごめんね! こいつ、酔っぱらっちゃって」
「かまいませんよ。何やらお辛いことがあったとか」
冒険者の相棒か。
隣に座った赤魔導士が、泣いている剣士を揺さぶる。
「おい、お前はいつまでぐだぐだ泣いてんだよ」
「だ、だって……うう……お、俺が、必殺技の一つもできてりゃあ、こんなことには」
「まだレベルあげの途中なんだって。これまでほとんど闘ってこなかったんだろ? すぐはあがらないよ」
「うう、魔導士さんは魔法がポンポン言えてさ、こんな俺みたいなクソザコの気持ちわかんねぇよ! 俺なんか、俺なんかっ……うっ……うわああああん」
じめじめすることこの上ない。
「生きていれば、きっとそのうちいいことがありますよ」
とマスターが言うと、若者はウルウルした瞳で見あげてきた。
「うっ……マスター……ありがと……」
このまま店にきのこが生えてしまっても困るのだけれど。
こちらの思いも知らず、若者は寝息をたてて、カウンターに沈んだ。
ふと、気になった。
先ほどから赤魔道士がゴソゴソと不自然な動きをしている。
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