第5話 答え合わせ:マスターの話



店に来たお客様には、願わくはみんなたのしんでいただきたい。

マスターはそんな思いで店を続けている。


ここは、三千万人の冒険者サバイバーがひしめく広い島、救州である。

バッチをつけた選ばれし冒険者たちは、永久に湧き出る魔物を屠っている。


協力するもよし、裏切るもよし。

逃げ回るもよし、奪いにいくもよし。


ここの自然は美しい。

雄大かつ、面白い。

自由は良いものだ、とマスターは思う。


自然相手に走り回る人間を眺めるのは、なかなかにおつなものだ。


魔物と人間と命の狙い合いに休みは無いが、生活は保障されるようだ。

万が一のときには家族への遺族年金も出るらしい。

本当の底辺から抜け出したい者たちにとって、一攫千金のチャンスともいえる。

だからか、本土からの志願者は後を絶たない。


しかし、冒険者の枠は最終的には抽選で決められ、脱落者がいない限りは入れ替えがない。


冒険者にはランキングがあり、年間で最も魔物を屠った者は『勇者』と呼ばれ、称えられる。勇者は富も名誉も権力も、全てを手にすることができるのだ。

夢がある話だ。


ただ、そんなことができるのは、極めて才能と運と圧倒的な力に恵まれた生まれついての覇者のみ。3000万人の冒険者側も、もはやそんな夢物語のようなことは、ほとんど誰も期待していない。


この広い島で、選ばれし三千万人のトップに立つのはほぼ不可能。

勇者など夢物語。

もしもそれができるとしたら、ランキングのトップ5に入る者のみだ。


彼らは順位の変動こそあれ ほとんどの間ずっと ランキングに入り続けている。

長年、ずっと彼らのうちの誰かが勇者となっている。


人々は恐れと 敬意を込めて彼らをこう呼んだ。





宝骸騎団(ジェム・レクイエム)。



冒険者(サバイバー)5位。

蒼穹の理を知り、星の運行すら読み解く魔導王。

《星環の叡智王》

サファイラス・アズレイド。


冒険者(サバイバー)4位。

癒しの奇跡で救い、同じ力で魂を断つ慈悲の刃。

《聖呪の救済者》

エメルディアス・ヴァルターク。


冒険者(サバイバー)3位。

誓いと引き換えに血と焔を纏い、いかなる絶望も力へと変える戦鬼。

《誓血の烈将》

ガルナーク・ブラッドレオン。


冒険者(サバイバー)2位。

黄金に愛され、同時に黄金を呪う。運命そのものを破壊する反逆の王子。

《破戒の宿命王》

トパジオン=ルイン=アークレスト。


冒険者(サバイバー)現在1位。

死と影を抱きしめ、沈黙をもって世界を守る孤高のアサシン。

《終末の暗殺者》

オニキシアス・ネクロスフィア。





彼らはこの島での、揺るぎない最強だった。




冒険者の中でも弱者たちは弱者たちなりに、ダンジョンで小金を稼いだり、建物を作って隠れたりして、したたかに生きていく。

徒党を組んで街を作る者たちもいる。




マスターのように、ギルドや街には、サバイバーではない一般人もいる。

商人や、宿屋、武器屋も必要なのだ。


ただ、子どもを増やしてはいけない。


危険地帯であり、人口に制限があるので、生殖行為は禁止。

つまりは男しかいないのだ。



マスターはここ九州で、もっぱら酒場の経営に勤しんでいた。


『鷹羽〜takaha〜』


狩りや、略奪と戦う鷹たちのような冒険者のオアシス。


これはこれで、やりがいがあって面白い仕事なのだ。



今日もまた、客が訪れる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る