第6話 戦国の放浪侍

「久しいな、ガスト。そこのお2人は客人か?」

「あぁ!今ちょうどこのサクラって子が太刀に興味あってだな!」

「おお!そうなのか!」

侍はサクラとイザベラの前に立った。

「私はカグラ・サクラバだ。戦国という、ここから遥か東にある国の侍で、今は武者修行で各地を旅している」

白い着物に黒い袴を着ていて、後ろで結ばれた髪は綺麗で、同時に強い意志も感じ取れた。

「サクラです。今日たまたま鍛冶屋に来て、刀に惹かれて、使ってみようと思って来ました!」

「イザベラ・ココナッツだニャ!私は大剣を使ってみようと思ったニャ!」

イザベラは、初対面の人とは思えないほどカグラに近づいていた。

「サクラにイザベラ。よろしく頼む」

カグラはイザベラを撫でた。イザベラはすごく喜んでいて、サクラは少し嫉妬した。

「今からちょうど太刀の使い方を教えるところだったんだが、丁度いい!本場の太刀の使い方をサクラに見せてやってくれないか?」

「あぁ、心得た。では2人とも、中へ入ろうか」

カグラは、シミュレーションルームの隣にあるパネルで、敵を落武者1体に設定して、環境を夜の草原に変えた。

シミュレーションルームに入ると、夜の草原が広がっていた。中心には円形に開けた場所があって、落武者が背を向けていた。

「ここの丸い場所に入らないように気をつけてくれ。落武者が斬りかかってくるかもしれないからな」

2人は丸い場所に触れないように、右側へ移動した。

カグラが中に入ると、落武者がカグラの方を向いて、剣を構えた。

カグラも剣を抜いて、構えた。

風が周囲に緊張感を漂わせた。

風が吹き止んだ。

「いざ!勝負!」

カグラは落武者と戦闘を始めた。

カグラは間合いを少しずつ詰めながら、様子を見ている。

「まず、自分の間合いを確かめる」

落武者が自分の間合いに入ったと判断して、斬りかかってきた。

カグラは落武者の剣撃を剣で受け止めた。距離がゼロになった。

「これが鍔迫り合いだ。ここでは隙の探り合いをしている。少しでも隙を見せたら切られるぞ」

少し離れたところから見ている2人にも緊張感が伝わってくる。

「そこ!」

落武者の左肩を少し切った。落武者は距離を取るために下がった。カグラも距離を取って、再び間合いを探り始めた。

「剣撃が見えなかったニャ…」

「私にも見えなかった…」

落武者が構え直した。

「さあ、そろそろ本気で行くぞ!」

カグラは一瞬で距離を詰めて、三連撃を繰り出した。1回目と2回目の攻撃は見えていて、落武者は剣で流していた。でも、3回目の攻撃は見えなかった。

カグラが攻撃を終えて距離を取ると、落武者が太腿を押さえながら膝をついた。

カグラが鞘に刀を収めて、前のめりになった。すると、周囲が曇って、雷が鳴り始めた。

「桜庭一刀流・壱之型」

焦った落武者がカグラに切りかかろうと襲いかかった瞬間、周囲が光った。

光が収まった時には、カグラは落武者の背後で剣を抜いていた。

「居合抜刀斬」

カグラは静かに剣を収めた。カチッと音が鳴ると、落武者は首から血飛沫を吹き出しながら倒れた。

「さあ、一旦待機場へ戻ろうか」

「は、はい!」

サクラたちは待機場へ戻ってきた。

「サクラ、どうだったか?」

「えっと…速くて…ただただ美しかったとしか…」

カグラはサクラの答えが予想外だったのか、目を見開いた。

「おや?速かったか?それは嬉しいな…」

イザベラが割って入った。

「速くて美しくて!雷もゴロゴロ言ってて、ピカって光ったかと思ったら落武者切ってて!すごかったニャ!」

イザベラの勢いにカグラは少し圧倒されながらも、嬉しそうに、今度は首を撫でた。

「にゃ~」

耳がピョコピョコ動いて、しっぽまで振っていた。

「そうか!それなら良かった!」

少し撫でてから、カグラは2人を見た。

「そなたたちの実力も少し見せてくれないか?」

「もちろんニャ!」

「分かりました」

イザベラは嬉しそうに答えて、サクラは冷めた表情で答えた。

サクラは2つの短剣を腰に収めて、イザベラはハンマーに持ち替えた。

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