第5話 新たな可能性

2人は鍛冶屋に来た。

「へいらっしゃい!」

2人は軽く会釈をして中に入った。

入って左側には、ダガーやショートソード、ロングソードなど近距離用の武器が並んでいて、右側には、メイスやハンマー、大剣など、重くてリーチが長い武器が置いてあった。

2人は一通り見て回ると、少し奥に進んだ。今度は杖や弓など、遠距離用の武器が並んでいる場所だった。

「ね、イザベラ、何か気になるものあった?」

「今探してるニャ」

サクラは再び剣のコーナーに戻った。そこで、見慣れない形の刀を見つけた。「日本刀」と書いてある。この辺りではあまり見かけない形だ。無意識に手が伸びて、持ち上げてみた。

「すごい…」

サクラはその刀の形に見入っていた。

一方イザベラは、大剣を両手で軽々と持ち上げて、目を輝かせていた。

「お嬢ちゃんたち!その武器が気になるのかい!」

少し離れた場所から、鍛冶屋の主らしき人が声をかけてきた。

「すごい気になるニャ!」

イザベラは目を輝かせてそう言った。

「はい。私もこの刀が気になってます」

サクラは少し控えめに答えた。

「なら、あそこの訓練場で試してみないか?」

そう言って、鍛冶屋の主は奥の方を指差した。

2人が目線を向けると、鉄製の扉が見えた。

「あそこは訓練場だ!中に色々な武器があるから、試してみるといい!」

サクラたちは、せっかくだからと思い、訓練場に行くことにした。

扉に近づくと、自動的に開いた。

サクラは少し驚いた。

2人が中に入ると、そこにも色々な武器が置いてあった。さらに奥には、扉と謎のパネルが壁についていた。

少しして、鍛冶屋の主がやって来た。

「お嬢ちゃんたち、あのパネルで色々設定ができるんだ!」

そう言って、鍛冶屋の主は謎のパネルに近づいた。

2人も後ろについて行った。

「これは、シミュレーションルームの設定をするパネルだ!」

謎のパネルに触れると、モンスターの種類と数、地形を設定できるようになった。

「試しに設定してみろ!」

鍛冶屋の主は後ろに下がった。

「どうする?」

「任せるニャ」

サクラは色々迷った結果、スライム3体を設定して、地形も平原にした。

「準備ができたら中に入ってくれ!」

2人はそれぞれ気になった武器を手に取り、中に入った。すると、視界の右上に緑色のゲージが現れた。

「んにゃ?!なんか右上に出てきたニャ?!」

イザベラが、サクラが心の中で思っていたことを言ってくれた。

「入ったな!このシミュレーションルームでは、今お嬢ちゃんたちの右上に体力バーが見えてるはずだ。それが命の代わりをしてくれる。それが0になったら、入口に戻されるからな!」

このシミュレーションルームでは、魔法の力で体力バーが命の代わりになってくれるらしい。だから、全力で武器を試せるようだ。

サクラはスライムに切りかかろうと近づき、刀を抜こうとした。

でも、抜けなかった。

いや、抜こうとしたのだが、いつもの短剣の感覚で抜こうとしたから、抜ききれなかった。

サクラが抜刀している間に、イザベラは大剣を大きく振りかぶって、スライムを一刀両断していた。

サクラがやっと刀を抜ききると、スライムが顔の近くまで来ていて、頭突きをされた。

「ふぎゃっ!」

派手に尻もちをついた。

「あれ?痛くない…?」

「あぁ、そうだ、言い忘れてた。このシミュレーションルームでは、痛みが消えるんだ!確か、虚無属性の魔法の力が働いてて、痛みが消えるらしいぞ!」

この空間は、虚無属性という、無属性のさらに上の属性が働いていて、それが痛みを消しているらしい。

サクラは立ち上がり、刀を構え直した。

「はぁっ!」

振りかぶってスライムを斬った。

イザベラはもう2体目を倒していた。

「目標を全て撃破しました。お疲れ様でした」

アナウンスが鳴り、2人は待機室に戻ってきた。

「お嬢ちゃんたち、なかなかいいセンスしてるな!」

2人は少し照れた。

「お嬢ちゃんたち、名前は何て言うんだ?」

「イザベラ・ココナッツだニャ!」

「えっと、サクラです…!」

鍛冶屋の主は頷いて、2人の名前を復唱した。

「せっかくだ!大剣と太刀の立ち回りを教えよう!来てくれ!」

鍛冶屋の主は、同じ設定のまま、シミュレーションルームに入った。2人も後について行った。

「まずは大剣からだ!」

鍛冶屋の主は剣を構えて、走り出した。

「せやっ!」

大きく振りかぶって、右側にいたスライムをぶった斬る。

それに反応した中央のスライムが突進してきた。鍛冶屋の主は大剣を握りしめて、前に押し出すように盾代わりに構えて、全身で受け止めた。そして、空中でふわふわ浮かんでいたスライムを、斜め下から上に切り上げた。中央のスライムが倒れた。

そして、一番左にいたスライムが突進してきた。

「せいっ!」

切り上げた状態から、そのまま下に振り下ろして、突進してきたスライムをぶった斬った。

「ふぅ、ざっとこんなもんよ!」

鍛冶屋の主は親指を立てて、歯を出して豪快に笑った。

「おぉ、すごい!」

「ニャ~!」

2人は拍手した。

待機場に戻ってきた。

「さあ、次は太刀だ」

すると、入口の方から扉が開く音がした。

「失礼するぞ」

「お、ちょうどいいところに太刀使いが来たな!」

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