番外編3「湯けむりと家族計画」

「緋色の翼」の慰安旅行で、一行は人里離れた山奥の温泉地を訪れていた。

 昼間はギルドの仲間たちと川で釣りをしたり、山の幸に舌鼓を打ったりと、賑やかに過ごした。


 そして夜。

 カイエンとアキトは、宿の離れにある貸し切りの露天風呂で、水入らずの時間を満喫していた。

 満点の星空が頭上に広がり、湯けむりが幻想的に立ち上る。

 アキトは大きな岩に背を預け、隣に座るカイエンの肩にそっと頭をもたせかけた。


「綺麗ですね、星……」


「ああ」


 カイエンは短く応えると、アキトの身体を優しく引き寄せ、そのお腹にそっと手を置いた。

 湯着の上からでも分かる、柔らかな膨らみ。


「ここに、俺とお前の子供がいるんだな」


 カイエンの声は、慈愛に満ちていた。

 幸せそうに細められた緋色の瞳が、湯面に映る星明かりを反射してきらきらと輝いている。

 アキトもまた、愛する人との間に新しい命を授かった喜びを噛み締めていた。

 オメガになった時は絶望しかなかったのに、今では、この身体で良かったと心から思える。


「男の子かな、女の子かな」


「どっちでもいい。お前に似た、可愛い子に決まってる」


「もう、カイエンさんは親バカですね」


「当たり前だ」


 カイエンはアキトのお腹を優しく撫でながら、未来の家族に思いを馳せる。

 剣の握り方を教えてやろうか。

 いや、アキトに似て本が好きなら、たくさんの本を読んでやろう。

 そんなことを考えていると、自然と顔がほころんでしまう。

 アキトはそんなカイエンの横顔を愛おしそうに見つめ、その頬にそっとキスをした。


 これから始まる、新しい家族の物語。

 それは、満点の星空の下で誓われた、甘く幸せな未来への約束だった。

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