第8話「緋炎対氷雪、宿命の激突」

「蒼き雷霆」のギルドハウスは、シルヴァンの趣味を反映した、冷たく豪奢な城砦だった。

 カイエンたちは正面から突入し、待ち構えていた敵ギルドのメンバーと激しい戦闘を繰り広げた。

 仲間たちが道を開き、カイエンは一人、アキトが囚われているという最上階を目指す。


 最上階の広間で、シルヴァンは薬で意識が朦朧としたアキトを傍らに置き、玉座に座ってカイエンを待っていた。


「来ましたね、カイエン。あなたの番は、もう私のものです」


「戯言を抜かせ!」


 カイエンの全身から放たれる緋色の炎と、シルヴァンが操る万物を凍らせる蒼き氷雪が、激しくぶつかり合う。

 二人の大陸最強クラスのアルファによる戦いは、ギルドハウスそのものを揺るがすほどの激闘となった。


 戦いの最中、薬の効果に必死に抗っていたアキトは、ベータだった頃の、平凡な会社員だった頃の知識を必死に振り絞っていた。


(炎と氷……熱と冷気……ぶつかり合うと、水蒸気が発生する……そうだ、水蒸気と、粉塵……!)


 部屋には、戦闘の衝撃で砕けた石材や家具の木屑が舞っている。

 アキトは最後の力を振り絞り、近くにあった燭台を倒した。

 床にこぼれた油が、舞い散る粉塵に引火する。

 そして、カイエンの炎とシルヴァンの氷が生み出した濃密な水蒸気の中で、それは連鎖反応を起こした。


「粉塵爆発」――!


 小規模ながらも強烈な爆発がシルヴァンの足元で起こり、彼の体勢を一瞬だけ崩す。


「今です、カイエンさん!」


 アキトの叫び。

 その好機を、カイエンが見逃すはずはなかった。


「うぉぉぉぉっ!!」


 渾身の力を込めた炎の剣が、シルヴァンの氷の鎧を砕き、その身を打ち破った。

 倒れ込むシルヴァン。

 それは、ただ強いアルファと、か弱いオメガという関係では決して成し得なかった勝利。

 互いを信じ、それぞれの持てる力で支え合う、「番」だからこそ掴み取ることができた勝利の証だった。

 カイエンは駆け寄り、アキトを強く抱きしめた。

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