第43話 後輩からの連絡

 新しい企画である『おっさんの全力無双!』の為のフリートークを含めた素材を撮り終えて、俺達はいつもの様にギルドに併設しているカフェで一息入れる事にした。


「……これは中々旨いな」


 二人に勧められたビターチョコのケーキを一口食べて、俺は小さく漏らした。


「でしょ。それは甘さも控え目で食べやすいの」


 沙耶は紅茶のカップを手に小さく笑う。


 普段、ケーキなんか食べないがたまの甘いモノも悪くないかもしれない。


「他のケーキも今度、試してみるかな」


 俺がポツリと呟くと玲奈は小さく笑った。


「お、スイーツに目覚めたわね。良いんじゃない? おっさんだってケーキ食べたって良いのよ。美味しいモノ食べるのに年齢なんか関係ないんだから!」


「良い事言ってるけど、おっさん言うな?」


「あは♪ 久し振りに聞いたわ、ソレ」


 俺の一言に玲奈はご機嫌そうに笑う。


 そして、ニヤリと。


「それで、次の企画はどうしましょうか?」


「まだ、今日の素材も編集してないのに次の事考えるのか? 相変わらず前のめりだな」


 その貪欲さに呆れ半分関心半分で眉を顰めると玲奈はフフンと鼻を鳴らす。


「だからこそよ。これから編集しても直ぐには公開出来ないんだから、その後に企画を考え出したらもっと遅れるじゃない。リスナーはあんまり待たすもんじゃないわ」


「この間のバズりの勢いが残っている内にか?」


「当然! 鉄は熱い内に打てって言うでしょ?」


 俺が言うと、玲奈は胸を張る。


 先日の『ワイルドウルフ』の一件で動画サイトの日間ランキングで一位になってから『フェアリー』の人気は跳ね上がっている。


 動画配信は流行り廃りの激しい世界だ。彼女はこの機を逃したくないのだろう。


「その分、編集する私の仕事が増えるのだけど」


 呟く様に言う沙耶に玲奈は、痛い所だったのかビクッと身体を震わせた。


「わ、分かってるわよ。だから沙耶の取り分は多くしてるし、お高い玉露とお茶請けも買ってるじゃない!」


「今日の素材は、スローやテロップを多く入れないと動画として成立しなさそうだから大変そう」


 沙耶はケーキを一口分に切り分けながら、ちらりと玲奈を見る。


「たまにはお寿司が食べたいわ」


 なぬっ、と玲奈は小さく唸った。だが、観念したらしく眉間にシワを寄せる。


「分かったわよ。“回る方”だったら奢ってあげるから、動画編集頑張って!」


「マジで? 俺も最近、行ってなかったから楽しみだわー」


「いや、おっさんには奢らないわよ!?」


 そんな談笑をしていると、不意に俺のスマホに着信が届いた。


 メッセージアプリを開いてみると傭兵会社を辞めて以来、顔を合わせていない後輩からの連絡だった。


 その名に懐かしさを覚えるが、内容を見て眉を顰めてしまう。


「おっさん?」


「先生、何かあった?」


 無意識に出てしまった溜息に二人は心配そうな顔をしてしまった。


「いや、知り合いに久し振りに会おうと誘われたんだ。悪いが明日は、暇を貰えるか?」


 それに苦笑しながら答える。


「まあ、別に良いけど。その代わり、企画のネタもちょっとは考えてよね」


 玲奈はどこか腑に落ちない様な顔をしたが、小さく肩を竦ませたのだった。

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傭兵会社をクビになったおっさん、助けた美女配信冒険者達に拾われる 頼瑠 ユウ @rairu_yuu

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