〈S〉【祝・追放100回記念】 自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~安らぎの死宝~
高見南純平
第1話
「ララクー、わーるいんだけどさ、キミは今日でクビです」
少年冒険者ララクは、所属している冒険者パーティーのリーダーから、追放宣言を受けた。
所属していたパーティーの名は「華麗なる幻影」。リーダーは、ブレイドダンサーのマキコレ。ビキニアーマーの上に、コートは羽織るという奇抜な装備をしている。
彼女は気まずそうにしながら、少年ララクに頭を下げた。
「……はぁ、そうですか。でも……正直、そろそろだと思っていました」
ララクは下をうつむきながら、もじもじと答える。解雇通知を受けたわけだが、特に反論することなく、素直に受け止めている。
彼らは現在、冒険者たちが集まるギルドの酒場にて座っていた。メンバーはララクを含んで、4名。ララクは人間だが、リーダーのマキコレは狐の耳をした獣人。他のメンバーも、人間とは少し違う。
「……リアクション、薄いな」
そう言ったのは、左右から角を飛び出した魔人という種族の男性だ。こちらも素肌に、魔法使いがよくきるローブを着ている。胸元から腹にかけてが露出しており、シックスパックが目立っている。特に露出狂の集まりというわけではない。動きやすさの観点から、こうなっている。
「……よく言われます。でも、足手まといに感じていましたから。
ボクの【ヒーリング】じゃ、かすり傷しか治りませんから……」
この世界の人々は基本的、スキルという特殊技能をその体に宿している。この少年ララクもスキルを持っているのだが、それが問題だった。
名前 ララク・ストリーン
種族 人間
レベル 25
アクションスキル 一覧
【ヒーリング】
これが現在彼の持つスキル。そう、たった1つしかないのだ。しかも、これが回復スキルなのだが、日常的な擦り傷程度しか治すことはできない。例えば、包丁で指を切った時などには、すぐに治って便利なスキルである。
だが、彼らが相手をするのは、獰猛な野生モンスター。そんな程度の効果では、あまり意味がない。
「自分で感じてるなら、俺から言うことはねぇな」
魔人の男性は、切れ長な目でララクを睨む。彼の名は、焔使いのザクヤ。物静かなのだが、裏社会に片足突っ込んでいるような威圧感を放っているので、初対面から怖がられてしまうタイプである。実際には、キレることはほとんどない。
パーティーのお荷物だったララクに対しても、深く攻め立てることはなかった。
「わ、私は凄く残念です! ララクくん、話しやすくて楽しかったし……。
森で転んじゃった時もさ、すぐに治してくれたし……」
常に顔が赤面しているこの女性は、熊拳のネカン。熊人と呼ばれる獣人である。
長身だったり大きな体であること、あとは熊の耳が特徴的だ。彼女の場合は、その特徴が豊満な胸と太ももあたりに出ている。恥ずかしがりやな彼女なのだが、それに反して恰好はタイトな格好をしており、ノースリーブス&ミニスカートだった。
これはリーダーのマキコレの意向であり、「この方がゴブリンが興奮して倒しやすくなりそう」だそうだ。
「だからそんぐらいの回復じゃ、足りないって話になったでしょ~。
じゃあ、ちょっと寂しいけど、契約解除するよ」
リーダー・マキコレは、利き腕をララクの前へと出す。すると、ララクも物悲しそうに、自分の腕を前に出した。
2人の手には、青白い色をした紋章が浮かび上がっている。そしてその2つは連動しており、細長い線で結ばれている。
この状態が、彼らがパーティー契約を結んでいる、ということを表している。契約を結んでいると、一緒にモンスターと戦った際に、そこから得られる戦闘データ=経験値を共有する事ができる。これで、ほとんど戦闘で役に立たないララクもレベルアップが可能となる。
「それじゃあ、ララク・ストリーンとのパーティー契約を解除します。
っはい、これで終了。お疲れ様でした~」
リーダー・マキコレは、ねぎらっているのか、ララクに手を振る。それが余計に、淡白さを感じさせる。彼女としては問題が1つ解決したので、すがすがしい笑顔をしていた。
「さらばだ。また会ったら、挨拶ぐらいはしてやるよ」
少年ララクの頭を、ぽんっと軽く叩く焔使いのザクヤ。彼は背が高いので、ララクは上目使いでお礼をいった。
今後、このギルドを利用し続けるのであれば、お互いに顔を合わせることもあるだろう。
「うぅうう。私、やっぱり契約解除はいやだ!
ララクくん、私と契約し……」
契約解除されたことで、熊人ガールのネカンは、せき止めていた寂しさがあふれ出していた。彼女は人見知りなので、せっかく仲良くなった彼と離れ離れになるのは嫌なのだろう。
そんな彼女の首根っこを掴んだのは、背の高い焔使いのザクヤだ。彼の意思というよりは、リーダーのマキコレが目配せをして指示をしたのだ。
「はい、次の仕事探しに行くよ。
っじゃ、健闘を祈るよ。ララク」
マキコレたちは、嫌がる熊人のネカンを強制的に連行していく。仕事依頼=クエストの髪が張り出されたボードの方へと移動していった。
「ララクくん! ラララくぅぅぅぅん!」
人見知りとは思えない大声で、ギルドの中を引きずられていく熊人のネカン。その様子は、当然他の冒険者や職員にも見られている。みんな、ネカンの大声を見て苦笑いをしていた。
恥ずかしがり屋のネカンだが、たまに我を忘れてしまうような瞬間がある。そしてその後、その事を思い出して、恥ずかしがっていることがよくある。
「……ネカンさん。
(このままだと、ずっと騒いでそうだし、はやく帰ろう)」
ララクは冒険者ギルドから、足早に去っていった。ほとぼりが冷めてから、また訪れようと思った。
彼がギルドの重たい扉を開けて、外に出ると、空はひどく曇っていた。青一つない雲空。それは、まるでララクの心に蔓延るモヤを表しているかのようだった。
(……これで、33回目か。あんなに、名残惜しくされたのはじめてだけど)
ネカンが自分を呼ぶ声が、頭の中でこだまする。自分が役に立たなかったことで、別れることになったことが、より悔しかった。
「……はぁ。今度レベルアップしたら、他にスキルが貰えるといいけど……」
ぼそっと呟いたララクは、いつも借りている宿屋へと帰っていく。どんよりとした空の下を、重い足を前に出しながら歩いていく。
彼はこのあとも、他の冒険者パーティーに加入していく。
だが、現実はそう甘くはなかった。
彼の願いもむなしく、ララクは1年後 100回目の追放を経験することになるのだった。
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