第12話 美月さんの部屋

「眠くなってきたから、そろそろ寝るわ」

「オーケー」

「また明日もゲームしような」

「おう。おやすみ」


 夕食を食べ終えた後、隼人の部屋でゲームをして遊んでいたのだが、隼人はすぐに眠気が襲ってきたようで先に眠りについた。

 俺も風呂に入ってから寝ようかな。


 バッグから着替えを取り出し、風呂場へ向かう。

 俺もだいぶ眠くなってきたから、風呂に入りながら眠らないように気を付けないとな。


 そんなことを考えながら、脱衣所のドアを開けると、バスタオル一枚を体に巻いた状態の美月さんがいた。

 眠気のせいで頭が回っていないということもあり、何が起きているのか理解するまでに数秒を要した。


「……ちょ、なんで鍵閉めてないんですか!」

「あっ、ごめんっ! ここではいつも鍵閉めてなかったから、忘れてた!」

「き、気を付けてくださいっ!」


 すぐにバッとドアを閉めた。

 一気に目が覚めてしまった。


 心臓の鼓動がロックバンドのライブくらいうるさく鳴り響いている。

 何度も深呼吸をして、落ち着かせる。


 数分後、ドアが開き、可愛いピンク色のモコモコした素材のパジャマに着替えた美月さんが出てきた。

 風呂上がりだからか、先ほどの件があったから顔を赤く染めている。


 まあ、風呂上がりだからだろう。

 だって、美月さんは俺が風呂に入っているときに風呂場に突入してくるような人だぞ。


「入っていいよ~」

「あ、ありがとうございます」

「ふふっ、次からはちゃんと鍵閉めるね」

「そうしてください」

「それともまた一緒に入りたかった?」

「そ、そんなわけないじゃないですかっ!」

「冗談だよ♪」


 本当に美月さんは俺をからかうのが好きなようだ。

 いつかは美月さんにからかわれてもクールに対応できるような男になりたいものだ。なんて思うけど、美月さん相手には一生かかっても無理な気がする……。


「あ、そうだ。お風呂から上がったら私の部屋に来て。そこの部屋が私の部屋ね」

「分かりました」


 何か話したいことがあるのか、美月さんに部屋に来るよう誘われた。

 今日はずっと隼人と遊んでいたからあまり美月さんと話せていなかったし、俺も話したいと思っていたので、ちょうど良かった。

 それに、美月さんのせいで目が覚めてしまったし。


 ♢


 風呂から上がり、すぐに美月さんの部屋に直行した。


「失礼しまーす」


 もしかしたら、俺が風呂に入っている間に眠ってしまっている可能性もあると思い、ゆっくりと部屋のドアを開けた。


「お、来てくれたね!」

「そりゃ、呼ばれたら行きますよ」


 美月さんはちゃんと起きて、俺のことを待っていたようだ。

 何度か小さくあくびはしているので、少し眠そうではあるけど。


「さ、こっちに座って」


 美月さんはベッドの上に座っているのだが、隣をポンポンと叩き、俺も座るよう促した。

 女子の、しかも美月さんの部屋のベッドの上に座ってもいいのだろうか、と少し躊躇ってしまいそうになる。


 まあ、本人が座れと言っているのだからいいか。


「お邪魔しまーす」

「ふふっ、座るだけなのに礼儀正しいね」

「ちょっと緊張してるだけです」

「それじゃ、適当に雑談しよっ」

「はい、もちろん」


 やはりただ話したくて俺を部屋に呼んだらしい。

 俺も今日はあまり一緒に居られなくて少し寂しい気持ちになっていたので、有難い。美月さんも俺と同じように思ってくれているだろうか。


 そんなことを考えながら、美月さんの部屋を見回していると、本棚の一番下の段に、何冊か分厚いフォトブックが置かれていた。恐らくアルバムだろう。

 幼い頃の美月さんや隼人が写っている写真があるに違いない。


 ……とても気になる。


「それ、見てもいいですか?」

「あ、見つけちゃったかぁ。ちょっと恥ずかしいけど、いいよ」

「ありがとうございます」


 本棚から一冊だけアルバムを取り出し、美月さんと一緒に開く。

 一ページ目から早速、可愛らしい笑顔でピースサインを作る幼い美月さんと隼人が並んでいる写真が出てきた。やはり、幼い頃から可愛かったんだな。


 隼人もカッコいいというよりは、可愛い寄りだ。


「今の私と違う?」

「今とはまた違った可愛さがありますね」

「か、かわいい……っ?!」


 美月さんは驚愕に満ちた声と共に顔を赤く染めた。耳まで赤くなっている。

 

「はい、とても可愛いですよ。どうかしました?」

「い、いや、面と向かって言われると恥ずかしいなぁと思って」

「あ、すみません」

「ううん、全然いいんだよ。何ならもっと言ってくれてもいいよ」

「考えときます」


 美月さんでも「可愛い」と面と向かって言われると恥ずかしがるんだな。

 学校中のみんなから言われてるだろうから、慣れているものだと思っていたけど、そんなこともないみたいだ。


 次々と写真を見ていくと、一枚の写真が目に留まった。


「これって……」


 その写真には、向日葵ひまわりの花畑を背景に、手を繋ぎながら互いを見つめ合う幼い俺と美月さんの姿があった。

 全然、覚えていない。


 今の関係になるまで、俺は美月さんと話したこともないと思っていたが、そうじゃないのか……?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る