虹の橋の向こう

みゅうた

第1話 ずっと見守ってる

私は死んだわ…罠に嵌められて


最初は悔しくて恨む気持ちがあったけどそれよりも残された家族が心配になったわ


見覚えのある景色…そこは夢と死の世界の狭間


あの虹の橋を渡ってしまえばもう戻る事は叶わないのね


後ろ髪引かれながら現実を受け入れるわ



虹の橋を渡って行くとそこには幼い頃に亡くなった祖父母や亡くなった知り合いが出迎えてくれたの


「こんなに早くここに来てしまうとは…辛いだろうが受け入れなさい」


「わかっています…ただあの人や子供達の事が心配なのです」


「そう言うと思ってな…こっちにおいで…良いものがあるから」


連れて行かれた先には見た事ない機械が並んでいたわ


「これは?」


「下界を見る為のモニターだよ…観るためには注意事項があるのだが…」


「…観るだけで手出しをしてはいけないのでしょう?それくらいはわかります…家族が命の危険に晒されても見守るしか出来ないなんて…」


祖父は頷くとモニターの前に椅子を持ってきてくれた


よく見ると他にも何台もモニターがあってそれぞれ目の前に人影が見えたわ


その日から私はモニターを通して家族の様子を見守る事になった…それが辛く悲しい結果が待ってるとも知らずに


モニターには夫に言い寄る女の姿が映し出された…見覚えのある女は私を殺した相手だったの


「私を殺したのは夫に近づく為だったのね…酷いわ」


しばらく見守ってると夫とその女が再婚したのがわかったわ


嫌な予感がしたわ


予感は的中して継母になった女は私の可愛い子供達を虐待するようになったの


そして女は夫の子供を身籠ったわ


子供が産まれるとその女は我が子ばかり可愛がって私の子供達への虐待は止める事は無かったわ


そして恐ろしい事が起こってしまったの


あの女は私の娘を目障りだとゴブリンの巣へ連れて行き置き去りにしたのよ


ゴブリンは娘を巣に連れ込むと数匹で変わる変わる強姦したのよ


娘が行方不明になったと知った夫と息子が捜索隊を結成して連日探し回ったわ


あの女は素知らぬ素ぶりで夫と息子が留守の合間に何処かへ出かけて行っていたわ


産まれた子供はベビーシッターに任せたみたいね


あの女は教会へ入ると誰かと話をしているわ


聞こえてきたのは恐ろしい計画だったの


「ようやくエルドランの妻として潜入出来ましたわ…あとはあの子が王宮で侍女として信頼を得て王子を唆して王を暗殺してくれれば…」


なんと王国を乗っ取る計画として夫エルドランを利用する為に私を殺して妻となったようわ


それを知らない夫は帰宅するとあの女に捜索隊の行動などを話すのよ


そして恐ろしい事に娘がゴブリンの子供を身籠ってしまったの


そして発見された時は既に手遅れだったわ


夫と息子の目の前で娘の腹を引き裂いて亜人が産まれた…娘は出血多量で絶命したわ


それを見た息子が発狂してその場にいたゴブリン達を惨殺して回る姿はバーサーカーそのものだったわ


地獄絵図のような光景を見た夫の手が震えていたわ


気絶した血塗れの息子を抱えた夫は王宮に駆け込んだのよ


数日後…息子は目を覚ますと何も覚えていなかったわ


大人並みの強さを持っていてもまだ幼い息子は自身の心を守る為に恐ろしい記憶を封印したようね


娘の亡き骸は王宮騎士団により丁重に葬られたようだわ


しばらくすると夫は2人目の子供を産んだばかりのあの女を牢屋に幽閉したわ


そして夫は苦肉の策で息子を守る為に腕試しの旅へと送り出したの


それは功を奏したらしく息子は旅先で多くの出逢いを果たして心身共に成長するのね


娘と共に夫や息子を見守りながら彼等が大きな運命の渦に巻き込まれて行くのを感じていたわ


夫は王宮騎士団長の役職の傍、あの女の裏の繋がりを調べていたわ


数年の旅の末…立派に成長した息子が1人の男を連れて帰国したわ


息子の連れて来た男は王に謁見して王宮で忍びとして働く事になったの


息子はと言うと王宮騎士団に入らずに自分の騎士団を作るつもりらしいわね


どうやら親の七光りだと言われるのを嫌ったようだわ


しばらくしてドワーフと獣人の男達の喧嘩の仲裁をした息子は彼等を仲間にして騎士団を結成したの


その後もエルフの魔術師の女性やホビットの薬士の女性も仲間に加わったわ


「黄昏騎士団」として息子を団長にした騎士団はギルドの依頼をこなして評判になっていったわ


その後も有翼人の女性やバーサーカー族の戦士も仲間に加わる事になったの


そして息子達は王国にガルダ教の魔の手が迫っているのを知ると奴等と戦いに赴くのよ


あの女は息子を騙そうとしたようですが見破られて成敗されたようです…悪い事は出来ませんね


ただその中で息子は王国の姫君を庇って生死の境を彷徨う事になったのです


虹の橋の前まで来た息子と再会してまだこちらに来る時ではない事を告げると仲間の活躍により息子は一命を取り留めたわ


そして息子は姫君と結婚する事になり、夫から王宮騎士団長の役職を引き継ぐ事が決まりました


その直後、息子は姫君と共にオーガ族を仲間に引き入れる為に旅に出たようです


海を渡る為に船乗りの夫婦を仲間にしてオーガ族の集落へと辿り着くと息子はオーガ族と戦って勝ってしまうのでした


こうしてオーガ族のカップルを連れて国に戻ると国王陛下は大変喜んで彼等が王宮騎士団に入隊する事を認めてくれたの


船乗りの夫婦はクルージング船を運行してグルメクルージングの事業を立ち上げて大成功させたわ


そして娘が息子の子供として生まれ変わると言い出したの


恋人である従兄弟も同じ時期に生まれ変わるらしく娘達は新たな命として生まれ変わったわ


孫娘として生まれ変わった娘は男勝りな騎士へと成長していったわ


孫息子も産まれて発明家として才能を発揮して人々の役に立つ発明を作り出して行ったわ


美しく成長した孫娘は「ヴァルキリー防衛隊」の隊長として帝国へと友好の使者として旅立ったの


無事に生まれ変わった恋人との再会を果たして心身共に成長していったわ


ただその中で命の危機に晒されるものの仲間の協力で一命を取り留めたわ


どうやらハーベスト家は数奇な運命を背負っているようだわね


そんな孫娘も無事に恋人と結ばれた直後に誘拐されてしまうのよ…どれだけ波瀾万丈なのだかね


そして攫われた先のヴァイガルマン王国で大活躍して国を救った英雄として祟られる結果になるの


その後孫娘は結婚して無事に双子の男の子を産んだわ


その中で聖女や聖なる力を持った人物への対応が話し合われてそれまでの処遇より大幅に優遇される事が決まったの


王宮でも次世代の騎士や魔導士、法術士などを育成する為の施設が増設される事になったわ


これによりファルデアン王国はますます発展して帝国、ヴァイガルマン王国と友好国となり共に発展していくのよ


ある日ファルデアン王国に魔物の大群が攻めて来たわ


夫や義父も戦いに参戦して活躍したわ


その中で義父や息子の仲間5人が犠牲者になってしまったわ


合同葬儀で別れの言葉を述べる夫はとても立派だったわ


そして孫娘も母親として成長して今度は双子の女の子を産むのよ


これをきっかけに夫は子育ての大変さを学んだようだわね


ひ孫の成長にも感銘を受けていたわ


こちらに来た義父に夫に声をかけてやれと言われてそっと声をかけました


「貴方もようやく次のステージに進みましたね」


夫からは

「儂を迎えに来るのか」

なんて聞かれましたが私は黙っていました


何故ならまだその時では無いからです…


もう少しあの子達が物心つく頃までは迎えに行きませんよ


貴方が「もう疲れた…充分だ」なんて弱音を吐くまではね



                    終

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虹の橋の向こう みゅうた @tomrina

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