第37話 モンスター狂いの男、冒険者ランクを決める試験に参加する。 2
先に動いたのはフラトールさんだ。
フラトールさんは一瞬で距離を詰めてきて、俺の腹部に容赦なくストレートパンチを打ち込み続ける。
拳が打ち込まれる度に、ビュンと風を切る鋭い音が響く。
「かはっ!」
肉弾戦は俺が一番不得意な分野だ。
このままではまずい。
魔法を使わなければ。
「麗しき───」
俺が魔法を発動しようと詠唱を始めた瞬間、右頬に足蹴りが入り、体ごと吹き飛ばされた。
そのまま右方向に突き飛ばされ、俺は転がり痛みにのたうち回る。
「痛い......。」
俺は弱弱しくつぶやく。
右頬の皮膚は裂けて血がにじみ出している。
口の中に血の味が広がっていく。
相手の動きは早く、こちらから魔法で仕掛けようとしても、その度に妨害されていく可能性が高い。
俺は肉弾戦が苦手だ。
昔から体育が苦手だし、成人してからもそれは変わらない。
どうすればいいんだ?
考えるんだ。
どうすればこの困難な状況を乗り越えられるのか。
「実力者だと聞きましたが、あんまり殴りがいがありませんね。
最初から魔法だけでやっとけばよかったです。
そうすれば、戦いをもっと長く楽しめたでしょうから。」
フラトールさんは見た目に反して戦闘狂のようだ。
俺は彼に聞こえないよう口元を塞ぎ、小さな声で治癒の為の呪文をつぶやく。
「ん?
完全には口を破壊する事はかないませんでしたね。
渾身の一撃のつもりだったのですが。」
「ちょっとフラトール!
せっかく冒険者になってくれる人を玩具にしちゃだめでしょう!
手加減しなさい!」
「ミュイ、申し訳ないです。
しかし、最近はあまり骨がない冒険者ばかりで腕を持て余していたのです。
それで、つい、力を入れてしまったのですよ。」
俺は自分の体の治癒を完了させ、早口の詠唱で氷の剣を作る。
そして、体を立ち上がて駆け、氷の剣を喉元に突きつけようとした。
「魔炎弾!」
フラトールさんが大きな声で呪文を詠唱する。
青と赤の入り混じった炎の弾丸が、俺の作った氷の剣に当たって、刀身を溶かしていく。
俺は氷の剣を手放した。
体に魔力の無い種族は、精霊石に祈りの言葉を捧げて魔法を発動させる必要がある。
それに対して体に魔力のある種族は短い詠唱で自由自在に魔法を使う事が出来る。
俺は人間で、体力があまりない。
俺の方があきらかに不利だ。
「冒険者ランクはどうしましょうか?
個人的には、戦闘能力を加味してRあたりですかね?」
「麗しきウィンディーネ、大いなるエーテリアル、我に剣を与え給え。」
「また一つ覚えに剣を作るのですか?
無策ですね!」
俺は次々と手元に剣を作り続ける。
その度に、フラトールさんは魔炎弾を氷の刃に当てて溶かしていく。
ただ、今度の氷の剣作りは前と一つ違う点がある。
それは、試験会場の天井にも剣を作って張り付けているという点だ。
「いつまで続けるんですか?
こんなぬるい戦いを!
そろそろこちらからしかけますよ!」
フラトールさんはそう言って、両手の平の上に炎を発生させた。
「これで終わりです。」
素早い動きで俺の顔面に拳が迫る。
顔に接触する直前に俺は早口で詠唱を行う。
「麗しき水、自由に舞う風、大いなる大気よ、我に雷を与え給え。」
すると、先ほど作った天井にある氷の剣から雷が発生して、その雷はフラトールさんをターゲットとして放出された。
「がああああああっ!?」
フラトールさんは、雷撃に見舞われ、悲鳴を上げた。
「があっ......油断しました。
最後まで手を抜くべきではありませんでした。
アマガイユウトさん、あなたの評価は総合してSSといたします......。」
フラトールさんは体を痙攣させながら弱弱しい声で言った。
俺のランクはSSランクか。
本当はUランクがよかったが、体術が素人なので仕方がない。
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