第35話 モンスター狂いの男、ヘル王国の町ガルディエでギルドの設立手続きを行う。
しばらく皆と地図をもとに歩いていくと、ガルディエに辿り着いた。
この町には、悪魔族、獣人族、竜人族、人間族など、様々な人種がいるという。
そして、このヘル王国では魔物は悪魔族の同族扱いであるため、権利が保障されているという。
そのためヘル王国の冒険者ギルドでの依頼は討伐ではなく困り事の解決が主だという。
町の通りには、料理の匂い、建物の匂い、町に暮らす人々の匂いが複雑に入り交じり、調和している。
料理屋、武器屋、魔法の道具屋などの屋台が並び、活気があふれている。
「ここからは私が先導しますね。」
アヴリーケさんが俺の前に立ち、歩き始めた。
俺達は黙って着いて行く事にした。
「おい、見てみろよ!
あの御一行!」
「ほんとだわ!
オークにゴブリンにクイーンドラゴンにホブゴブリンに人間!
この異種族達が仲良く歩いているなんて信じられないわ!」
町の通りを歩く俺達に、町の人々からの物珍しい物を見る目が突き刺さる。
なんだか少し恥ずかしいような気がするが、この道以外に通る場所がないため、ここを通るしかない。
俺は何事も無かったかのように、冷静なフリをして町の通りを歩いていく。
しばらく歩いていくと、巨大な魔法陣が地面に描かれている場所に辿り着き、そこに足を踏み入れると、二つの悪魔の翼の紋章が刻まれた門が現れた。
「ここがヘル王国のギルドの設立の為の手続きをする場所です。」
アヴリーケさんがそう言い、門についている大きなベルを2回鳴らす。
「はあい、建物の中に入っていいですよ。
早速ギルド創設の手続きをしましょう。」
門の内側から陽気な声が聞こえた。
そして門の扉が開き、賑やかな喧騒が聞こえてくる。
そこには、多種多様な人種がいる。
人間以外の異種族はどんな生活を送っているのか気になる。
「まあ、ルシエラ様から聞いていた通り、大所帯ですね。」
サキュバスと思われる女性がこちらに話しかけてくる。
彼女もまたきわどい衣装を着ている。
この世界のサキュバスはきわどい服装で過ごすのが習わしなのだろうか?
俺は受付係のサキュバスの女性にマリンさんからもらった冒険者を証明するバッジを提示した。
受付係のサキュバスの女性は、バッジを受け取り、受付係の机の上に置かれている石板の上に置く。
そうしたら、バッジの上に文字が浮かんだ。
この文字はヘル王国で使われている文字だ。
俺は読む事ができない。
「ギルドの名前はどうしますか?」
「じゃあ、テイマーオンリーギルドでお願いします。」
「え?
そのような名前で良いのでしょうか?」
受付係の女性が疑問の声を上げる。
「この名前で良いんです。
皆と相談してこの名前にしました。」
「そうなんですね!
では、登録いたします。」
受付係のサキュバスの女性はバッジの上に浮かぶ文字に手をかざし、冒険者ギルドの名前の登録をする。
「ギルド長と副ギルド長はどなたにしますか?」
「ギルド長は私で、副ギルド長はアヴリーケさんでお願いいたします。」
「了解しました。
では次に、冒険者登録を行います。
今回は199人なので、大変長くなるかと思いますが、どうかお待ちください。」
「分かりました。
あれ、今199人を冒険者登録すると言いましたよね?」
「それがどうかしましたか?」
「一つ質問があります。」
俺は内心思った。
俺は199人にテイマーとなるように一人一人指導しなければいけないのか?、と。
最初、俺はこの世界のモンスターは全て人間にテイムされるのが常識で、それはどこのギルドでも変わらないものだと思っていた。
しかし、この悪魔族の国ヘル王国では、魔物の人権は保障されており、魔物も冒険者になれるという。
この国で魔物をテイムするテイマーをするのは、タブーなのではないか?
「このテイマーオンリーギルドでは、名前の通り、テイマーだけで冒険者ギルドを作るというのが目標です。
国境の検問所にいるヘレナさんからは、この国では魔物の人権が保障されているので、テイムする事はタブーなのではないですか?」
「なるほど。
でも、テイムする事は可能ですよ。
人間族の国ミトラと違って、魔物をテイムする時は、魔物と話し合いを行い契約書を交わさなければなりません。
言葉が通じない魔物の場合は、普通のテイムで従わせる事が可能です。」
「なるほど、よく分かりました。
ご説明いただきありがとうございます。」
「これでギルド設立のための手続きは完了しました。
次に、このヘル王国のギルドランクと冒険者パーティーランクと冒険者ランクと依頼の受注の仕方について説明いたします。
ギルドランクはゴールドランク、シルバーランク、ブロンズランクの3つで、新しく設立されたギルドはブロンズランクとして登録されます。
ギルドに来た依頼をこなして成功した数だけランクが上がっていきます。
ただ、依頼者との間に交わした契約を破ったり、この国の法律を破ってしまった場合は罰としてランクが降格されたり一時的にランクを外すなどの処置がされます。
冒険者パーティーランクはAからFまであり、Aが最高評価、Fが初期評価のランクです。
この冒険者パーティーランクもまたギルドに来た依頼をきちんと達成していく事でランクが上がっていきます。
冒険者ランクは、魔力の有無、魔法や剣技や格闘技の腕前を試験によって検査する事で決められます。
ランクはU、SS、S、Rに分けられます。
依頼の受注は、このヘル王国のギルド設立所に依頼の受注部門があるため、そこを通して各冒険者ギルドに依頼状が送られて、依頼を受注するかどうか判断する事になります。
もっと詳しい事はこの冒険者の手引書に書いてありますので、渡しておきます。」
「ありがとうございます。」
受付のサキュバスの女性は、俺に分厚いの冒険者の手引書を手渡してくれた。
まるで広辞苑のように分厚くて重い。
中身を開いてみると、人間族の国ミトラの文字で書いている。
この文字なら読めそうだ。
「では、今から冒険者登録を行います。」
俺は皆に一列に並んでもらい、自分の名前を言ってもらうようにした。
「では最初は私からです。
私の名前はアマガイユウト。
テイマーでありマジシャンであり学者です。」
「私の名前はアヴリーケ。
マジシャンです。」
続いて、皆も次々と自分の名前と職分を紹介して冒険者登録を済ませていく。
無事に全員分の登録が終了した。
「では最後に、冒険者ランクを決める為の検査を行います。
検査は2つあり、鑑定板による魔法の適性と魔力の有無の検査と、実戦があります。
皆さんを今から試験会場にご案内しますので、私に着いてきてください。」
受付係のサキュバスである女性は、受付所の机の後ろにある部屋の扉を開いた。
続けて俺達もその扉に向かって歩いていく。
部屋の中にはヘル王国の文字で書かれた正方形状の魔法陣があり、受付係のサキュバスである女性はその真ん中に立つ。
「今から転移魔法陣を使って皆様を試験会場にお連れします。
この転移用魔法陣にある角の部分に一人ずつ立ってください。
この転移用魔法陣では、一度に転移できるのは4人が限界なので、時間がかかりますがどうかお待ちください。」
俺とアヴリーケさんとボドウィンさんとバジーカさんは、魔法陣の角に立った。
「では、今から冒険者ランクを決める試験会場に転移いたします。」
魔法陣が紫色の光を放ち始め、質素な部屋の色を塗りつぶしていく。
そして、一瞬で俺とアヴリーケさんとボドウィンさんとバジーカさんは試験会場に転移した。
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