第19話 モンスター狂いの男、初の討伐任務に挑む。3

 レオンが先陣を切る。


 装備はハルバードと弓矢。

 ハルバードとは、槍と斧と鈎が一体となった武器で、敵を刺す、両断する、引っ掛けて動きを妨害する事などが可能な多機能武器だ。

 その分だけ重量があり、扱うには十分な筋力と積み重ねた技術を要する。

 レオンはこの武器を20年以上愛用している。


 まずはクイーンドラゴンのリーダー格のマティアの正面に立ち、横から薙ぎ払うように斬りつける。


 マティアは両腕についている武器である鎌を使ってハルバードをがっちりと挟み込み、レオンの手から離そうと力を入れて引っ張る。


 レオンは何の未練も無く手からハルバードを離し、そのまま素早く後ろに交代して10m以上の距離を取った。


 そして、背中の矢筒から毒矢を手に取り、弓を使って3本同時に放つ。


 3本のうち、2本は硬い鱗に命中し砕けたが、1本は腹部に命中した。


「ぐっ!」


 マティアは激痛のあまり小さく悲鳴をもらした。

 レオンが放った弓矢には即効性の猛毒が塗られている。

 まともに喰らったら、どんな魔物でもその痛みに耐える事は難しい。


 痛みのあまりマティアはハルバードを手放す。

 レオンはそのタイミングで素早い動きで移動しハルバードを奪還して、正面から突く動作を絶え間なく繰り返し、マティアに少しずつ切り傷と痛みを負わせていく。


 マティアはそれを自身の鎌と翼で防ぎつつ、レオンにも少しずつ傷を負わせ、攻勢の機会を伺っていた。


 マティア直属の部下のクイーンドラゴンの兵隊役は、応戦しようとする。


「マティア様!私達もこの男と戦います!」


「手を出さないで!

 久しぶりに強者と戦えるんですもの、楽しまないとでしょう!」


 マティアは顔に薄い笑みを浮かべて、先端に大きな岩のようなカタマリが付いている尻尾をしならせて、レオンの胴体をめがけて動かす。


「今だ!」


 レオンはアマガイユウトに合図を出す。


 アマガイユウトは水と大気の魔法を組み合わせて氷の魔法を発動する事にした。


「麗しきウィンディーネ、大いなるエーテリアル、我に凍気を与え、守る力を与え給え。」


 その瞬間、マティアの尻尾は氷漬けになり、レオンの胴体に命中する直前に動きが止まる。

 両椀両足、翼も氷漬けとなる。

 そしてレオンの体の傷が治った。


「賢きノームよ、堅牢な殻を作り上げ、我に同志を守る力を与え給え。」


 その瞬間、レオンの体表に堅牢な鎧が形成される。


「土の魔法でこんな事もできるんだな。

 こいつは驚いた。」


 レオンはアマガイユウトの魔法について感想を言いつつ、マティアに止めを刺そうとして構えを取った。


 その瞬間に、レオンの両腕と両足も凍り付く。


「なんだと!?

 クイーンドラゴンの主はまだ力を残していたのか!?」


「いいえ違いますレオンさん、今の氷の魔法をかけたのは私です。」


 驚きの声を上げるレオンに対してアマガイユウトは返答する。


「なんだと?

 アマガイユウト、あんたは俺達に協力するんじゃなかったのか?

 やっぱりあんたは魔物に味方して人々に害を成す───」


「いいえ、私は冒険者を倒すつもりはありません。

 だからといって魔物を倒すつもりもありません。

 マティアさん初めまして、私はアマガイユウトという者です。

 私はマジシャンであり、テイマーであり、学者です。

 学者の本分はあらゆるものを徹底的に解析し探求する事です。

 その対象は魔物、つまりモンスターに対しても適用されます。

 つまり、私が言いたいのは、クイーンドラゴンの皆さんには私の仲間になっていただきたいという事です!」


「あなた、正気?」


 マティアは首を傾げながら疑問を口にする。


「いたって正気です。」


「じゃあ、確かめさせてもらうわね。

 真竜眼!」


 マティアは呪文を唱えて、アマガイユウトの顔をじっと見つめる。


「......あなたの言っている事は本当みたいね?

 でも、この条件に応える事で、私達に何の利点があるというのかしら?」


「一つ、冒険者から命を狙われる事が無くなります。

 二つ、悪魔族の住むヘル王国に移住できます。

 三つ、私はテイマーなのでモンスターに詳しく、あなた達の集団生活を支援する事ができます。」


「まあ、悪くない条件ね。

 でも、ただただあなたの条件に従うだけじゃつまらないわ。

 そうだ、あなた達冒険者と勝負をしたいわ。

 対戦相手は、そうね、私達の巣に最初に入ってきたマリンっていう人間の女と対決したいわ。

 勝負の勝敗は、お互いの身に着けている宝石を先に相手から取れた方が勝ちっていうのはどうかしら?

 あなたたちが勝ったら私達はあなたたちに従い、私達が勝ったらアマガイユウトは一生クイーンドラゴンの奴隷になるというのはどうかしら?」


「望むところです。

 交渉成立ですね。」


「おいあんた、それでいいのかよ、クイーンドラゴンの奴隷になっていいっていうのは正気じゃない!」


 レオンは声を荒げてアマガイユウトに話しかける。


「たとえ奴隷の立場でも、探求は可能です。

 私は探求をしたいんですよ。」


 アマガイユウトは目をキラキラと輝かせながら言った。


 レオンは、こいつにはかけるべき言葉が見つからないと言った様子で首を傾げて溜息をついた。


「そこまで言うなら、もう分かった。

 マリンに話をつけてくる。」


 アマガイユウトは自身が発動した魔法を全て解いた。

 そして、マティアに治療魔法を施す。


 レオンは足早にクイーンドラゴンの神殿から出て行った。


 


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