第2話 内臓




 今日も女の子はいつもの場所に来た。


 学校帰りだ。


 何かの台に腰掛けると、そこには昨日の悪魔がいた。






 女の子はしばらく殺風景な景色を見つめると、堰を切ったかのように話し出す。



それを、ピンクの髪と恥ずかしい服の悪魔は


時折 コクン と頷きながら、聞いている。



 女の子は矢継ぎ早…


「ジブンとか個性とかさー 友達、ちがうこと言うとすぐ 引く とかさー 、 」



 悪魔(ジーーー  



「テストわけわかんないし 」 


「マクドナルドいくお金ないし みんな何でお金持ってるんだろ」


「ポテトLみんなで食べるとか 残り少なくなった時気不味いじゃん」




悪魔は思う(フフフ、さすがは悪魔のトモダチね。 何を言っているのか、 悪魔のわたしにもサッパリだわ。)



女の子「ねーねー、聞いてる?」




悪魔(ジーーー  (疲れてきたわ。←効いてる)




女の子「ぁ、 手っ …。」



ニギッ



悪魔!?



不意に悪魔の手を握る女の子


女の子は白く小さい悪魔の手を両手でニギニギ



女の子「ちっちゃ、すっべすべ!」(ニコッ





悪魔は、そんな女の子をキョトンとした顔で見つめる。が、その内心は大慌て。


悪魔(ぇ、ウソでしょ?信じられないわ。あなたは今 「悪魔の手を取った」 のよ、そんなことして、人間が!?気軽に!?  わかってないのに、ついしちゃったなら、ノーカンにもできるけどぉぉぉ!!!   )





悪魔(キョトン(目ぱちくり



(いつもの顔、赤い瞳に変わりは無い。)




女の子(ジッ




女の子「ぁ、ビックリさせちゃった? ごめんなさい。」(シュン




悪魔「いい。」(沈黙









悪魔の心臓が高鳴る(ドクン ドクン




心中穏やかではいられない。


悪魔の背中はもう汗でぐっしょり。





信じられないわ。わたしは悪魔なのよ。


それを、この子、 悪魔が隠している表情 が、顔が、 読めるの!?



ウソでしょ????




トクン トクン …


何?


これ、脈打つ心臓?



悪魔の紅い瞳には、生きた心臓が映っていた。



これは何?



---悪魔は目が離せない---



心臓の両脇には、呼気する肺が2つ?


なに?


その下には赤黒い 肝臓?


その下の方には、ちぢこまった胃?


太い大腸


白い小腸がかすかにうごめく






うそ?


あなた、内臓剥き出しじゃない!?








--- ハッ! ---



…目の前には、しょんぼりした顔でわたしを見つめる女の子。



もちろん、内臓剥き出しなんてことは無い。



あれは幻?いえ、違う。




あれは、この女の子の…


裸の心 なんてもんじゃない。



本当に剥き出しなのね。



なんて敏感、なんて脆い、まるで内臓…



そんな心…きっと、軽く触れただけで





死んでしまう。





悪魔はその紅い瞳をまん丸にして、目の前の女の子を見つめる。



言葉を弄する悪魔なのに、言葉が出ない。



悪魔のわたしが呼ばれた理由、わかったような気がした。が、やっぱりわからなかった。



悪魔(気がしただけね。)




気が付くと、わたしの目の前の女の子の目には



涙が溜まってる。




いけないわ、




わたしは 「寄り添い癒す者」



ああ、なんて愛おしいの?



こんな女の子を泣かせちゃったら、きっと悪魔クビよクビ、路頭に迷うわ。 もう迷ってるけど。




わたしは精一杯の笑顔を作って微笑む。




これは、わたしの、本当の微笑み。


ほんとの気持ちだから。


















((一方で、わたしは 「取り入り呑み込む者」 それは迷い出た者、悪魔。こんなわたしに、一体何をしろって言うの?))







つづく

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