第21話 エロゲ世界でヒロインを監禁する悪役に転生した俺

【Sideルクソール・グレイ】


「あいつ大丈夫だったかな?」


 ――真夜中。


 俺はベッドの上で隣人のことを考えていた。


 アスクとかいう意味の分からない男だ。


 普段は飄々としているのに、ぶどうが絡むと途端に目をバキバキにさせて狂ったように騒ぎ出す狂人。


 そのわりには公爵令嬢に死ぬほど好かれていて、いつも付き纏われているというまじで意味の分からない存在。


 そして俺に対して異常なほど当たりが強く、馴れ馴れしい奴だ。


 そんなあいつのことを寝る前に考えているなんて、我ながら気持ち悪いと思ったが、さすがにしょうがない。


 あいつとは一昨日恋バナをして、食事にでも誘えとアドバイスをしたが、その結果が気になって仕方がないんだ。


「まだ帰ってきてないようだけど……」


 あいつは今日学園を休んだ。


 そしておそらく今もまだ寮に帰ってきていない。公爵令嬢と一緒なのだろう。仲が良くなりすぎてずっと一緒にいるのかもしれない。


 だとしたら俺のアドバイスがうまく行ったのだろう。


 やっぱり飯食えば仲良くなれるよな。そうだよ、そうなんだよ。


 自分のアドバイスが成功したことに安堵していると、廊下から何やら足音が響いてきた。


「……は?」 

 よりにもよってこんな時間に帰ってきたのか?


 そう疑問に思いつつも起き上がると、誰が来たのか確認するためにドアを開く。

 すると目の前には衝撃的な光景が広がっていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


「あ、主人公じゃん」


 正面から近づいてくるのは真っ赤な血に染まったアスクだった。

 口元から胸にかけて、服が真っ赤に染まっている姿が夜の明かりに照らされて、不気味に光っている。


「てめぇ、何してたんだよ!」


「ちょっと監禁されてて」


「はあ⁉︎」


 監禁されていただと⁉︎

 誰にされていたのかは確認するまでもねぇ。公爵令嬢だろう。


 そんなありえない状況にも関わらず、なぜかヘラヘラしているアスクは苦笑を浮かべながらも言う。


「それでまあ色々あって服が汚れちゃったんだよ」


「色々ってなんだよ色々って!」


「なんか公爵家って物騒だったんだよね」


「そりゃそうだろ!」


 監禁されている時点で物騒なんてレベルじゃねぇ。

 なのにこいつ、なんで笑ってんだよ。イカれてんだろ。


「でも警備はザルだったよ。こんな格好で門から出ても何も言われなかったし。多分あいつら寝てたと思う」


「俺に公爵家の警備の話をされても困る! てか、大丈夫だったのかよ。監禁なんて普通は起きねぇだろ」


「ほんとそれ。なあ聞いてくれよ主人公」


「おい近づくな! 血で汚れるだろうが!」


「大丈夫。血じゃなくてぶどうジュースだから」


「それでも嫌なもんは嫌に決まってんだろ!」


 全力で拒否してるのに、すかずかと部屋に入ろうとしてくるアスク。


「話はまた明日な!」


 部屋をぶどうジュースまみれにされたら、たまったもんじゃない。だから俺は全力で扉を閉めた。


「ふぅ……」


 何だったんだよ。


 ほんと意味分かんない男だよ、あいつは。


 そう思いつつもベッドに入る。

 しかしぶどうジュースまみれになったあいつの顔が脳裏に浮かんで、全く眠れなかった。


 おかげで今日は睡眠不足だぜ。明日は文句の一つでも言ってやろうと思う。


 てか隣の部屋うるせぇな。ベッドが軋む音がこっちまで響いてくるんだけど。

 まじで文句言いまくってやる。

 



【アスク】




「ふぅ……」


 ぶどうジュースまみれの服を脱ぐと、寮に併設している大浴場に入る。


 本来であればとっくに閉まっている時間だったが、寮母さんに懇願したら特別に解放してくれた。


 体調を異様に心配されたが、おそらく何か勘違いされているのだろう。

 血ではなくぶどうジュースだと説明するべきだっただろうか。まあいいや。


「……最高だなぁ」


 湯船に浸かっていると、冷えた体がポカポカと温められていく。今日は色々あったが、その疲れが全て吹き飛ぶようだった。


「あ……」


 今日起きた出来事とか、これからのことを考えながらもふと気づく。


「もう少しぶどうジュースを飲むべきだったかな?」


 勿体なかった。せっかく飲める機会があったのだから、全て飲み干してから小屋を出るべきだった。


 そうしていれば少なくとも賊の三人が扉に押しつぶされることはなかったし、俺の罪も軽く済んでいただろう。


「ぶどう……ぶどうジュース飲みたい」


 湯船に浸かりながらも天井を見上げる。


 俺の飽くなきぶどう欲求はたとえ監禁されようが、命の危機に晒されようが止まらない。


「どこの国に行こっかな」


 幸い、タイムリミットは一ヶ月もある。


 麦芽狂信者が集う隣国は論外として、ぶどうの生産が盛んな国がいいだろう。


「楽しみだなぁ……」


 新たなぶどうに出会えると思うと胸が高鳴った。

 もしかしたらこの世界ならではのぶどう品種があるかもしれない。

 そんなことを妄想しつつも俺は呟いた。

 







「宝探しに出かけるか」

 

 



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 1章完結。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。


 これからアスクは様々な事件に巻き込まれていきます。

 ヒロインに付き纏われ、なぜか敵の組織から仲間だと勘違いされ、寝込みを襲われ、スローライフとはほど遠い生活を送ることになるでしょう。


 

 もしよろしければ、是非★レビューなどで評価していただけますと幸いです。

 引き続きよろしくお願いします



 また現在連載中のこちらも是非よろしくお願いします。勘違いラブコメです。


貞操観念逆転世界かと思ったら、ただクラスの重すぎる女子に囲まれていただけでした。

リンク↓

https://kakuyomu.jp/works/822139839100185440

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