第45話 侵入者たち
俺たちは一通りボーリングを楽しんだ後、昼食をとるため移動することになった。
俺と高野さん、優木さんの3人は、ここまで送ってもらったあのデッカい車にまた乗ることになるようだ。
なるほど。
万が一の襲撃に備え、今日は徒歩での移動は避けるみたいだ。
九条さんと純也は別の車に乗っている。
その理由について、さっき九条さんが、『もしものことがあった場合でも、絶対、みんなを巻き込まないように』と言っていた。
『もしものこと』か……
なんだか不吉な言葉だな。
まあそういう訳で、九条さん、純也とは別の車に乗り込んだ俺と高野さん、優木さんの人。
「今日は九条さんに楽しんでもらいたいのにね」
優木さんはちょっと寂しそうだ。
これからしばらく、九条さんはどこか遠くの場所で過ごすことになる。
だからこそ、今日は九条さんにいっぱい楽しんで欲しい。
やっぱり優木さんは、そう考えているみたいだ。
もちろん、高野さんだって今朝の時点ではそう考えていたはずだ。
しかし、ボーリング場に着いた後、純也が今日の予定をみんなに伝えた時、高野さんの心に、ちょっとした小波が立ったように見えた。
純也はこう言ったのだ。
『ボーリングの後、イタリアンレストランで食事して、それからみなさんお待ちかねの本屋で新作のラノベ散策と洒落込み、最後は海に行って夕陽を見ようって思ってるんだ』
本屋に行くのはいい。
ラノベが好きなメンバーが多いのだから。
でも、なんで最後に海へ行くんだ?
海で夕日を眺めて、何をするんだ?
なんとなく落ち着かない雰囲気の中、俺たちを乗せた車は目的地に到着した。
俺たちが車から降りると——
「やあ、先日はどうも」
と、声をかけてきた人がいる。
「あ!
今日は一般的なスーツを着込んだ鬼小太刀さん。
きっとこの人の他にも、沢山の九条グループの人がこの辺りを警護してるんだろう。
「ここからは、私がみなさんを警護しますので——」
と言った鬼小太刀さんであったが……
「ん? なぜ、みなさん笑っているのですか? それに、お前たちまで何を笑っているんだ?」
不思議そうな顔をして、俺たちに同乗していた黒服の人たちを見つめる鬼小太刀さん。
だって、今朝、鬼小太刀さんの怖い顔ネタで盛り上がったばかりなものでして。
「とにかく、早く中へ入って下さい」
俺たちは鬼小太刀さんに急かされ、店内へと入った。
それにしても、鬼小太刀さんってば、不思議そうな顔をしてもやっぱり怖いな。
店内に入ると、4組ぐらいのグループが食事をしていた。
この人たちも、きっと九条グループの人たちで、只今福利厚生をエンジョイしてるんだろうなと思いつつも、その点については誰も指摘しなかった。
食事をしながら、俺たちは次に行く本屋の話なんかをしていたところ——
なんだか店の表の方が騒がしい。
何かトラブルでもあったのか?
みんなの顔に緊張が走ったその時——
——パリン!
ガラスが割れるような音が聞こえたと思ったら、顔を黒い覆面で覆った男たちが乱入してきた。
「いたぞ!」
侵入者の一人が大声で叫ぶ。
福利厚生を楽しんでもいたはずの人たちが一斉に立ち上がり、俺たちの前に回り込んで人間の壁を形成するが——
——パーン!
これは銃声か!?
後方にいる侵入者が、黒い銃のようなものを天井に向けている。
それでも店内にいた黒服のガードマンたちは、勇敢にも侵入者たち目掛けて突進して行った。
侵入者は見た限り6人いる。
それに対して、応戦している黒服のガードマンは5人。
店内は混乱を極め、俺たちの前で壁を作っていた人たちの間にも綻びが生じている。
その綻びをついた侵入者の一人が、俺たちのすぐ目の前に迫って来た。
「危ない!」
俺は
「グハッ!」
俺は思い切り殴られた。
殴られたのだが……
あれ? あんまり痛くないぞ?
そうだ、俺はスキル『身体強化(中)』で守られているんだ!
そう思うと、少し冷静になった。
俺を殴った侵入者の腕を取り、俺は全力でその腕を締め上げる。
「ぐわっ!」
男は変な声を上げて、床に倒れた。
俺は男の背中に乗り、無理やり右足をつかんでもう一度力を込める。
——ゴキ!
変な音がした。
これでコイツはもう立てないだろう。
周囲を見渡すと、至る所で侵入者と黒服のガードマンが揉み合っている。
さっき銃を持っていた男も一人のガードマンと格闘中で、銃は床の上に落ちていた。
これならもう、発砲を恐れる必要はないだろう。
そう思った俺は、最も劣勢だと思われるガードマンの元へ駆けつけ、侵入者の右足に蹴りをお見舞いする。
蹴られた男は尻もちをつき、右足を抱えながらうめき声を上げた。
よし、コイツはもういいだろう。
俺は直ちに、次のターゲット目指して駆け出そうとしたところ——
——パーン!
また銃声が聞こえたと思ったら……
あれ、なんだかお腹の辺りが熱いぞ?
気づけば俺は無意識に、両手で腹部を押さえていた。
その両手を眺めてみたところ——
……俺の両手が真っ赤に染まっていた。
俺はもう一度前方に視線を送る。
なんだよ、入口付近にもう一人侵入者がいたのかよ……
なんで銃を握ってんだよ……
「バカ野郎! 何やってんだ!」
大声で叫ぶ男の声が聞こえた。
でも、それが誰の声なのかわからない。
体が勝手に後退りするが、足がもつれてしまい背中から倒れてしまった。
「キャァァァーーー!!!」
女子の叫び声が聞こえたので、首をひねり声がした方向に視線をやるが……
ヤバい……
まるで周囲の時間が止まってしまったかのように、誰も動かない。
「……俺、死ぬのか?」
俺の唇から言葉が漏れた。
「はあ? そんなワケないでしょ」
「…………え?」
聞き慣れた声が背後から聞こえたと思ったら——
「ここにあるすべての命の源よ、彼の者の息吹を今一度芽吹かさせたまえ—— リザレクション!」
この詠唱は…… そうだ、蘇生魔法だ!
数秒後、俺の腹部に入っていた銃弾が、ポトリと床に落ちた。
床に広がっていた出血の跡も、きれいに無くなっている。
俺はゆっくりと振り返った。すると——
そこには両腕を胸の前で組み、とてもエラそうにふんぞり返っている女神様の姿があった。
そうか、女神様がまた時間を止めて、蘇生魔法で俺を助けてくれたんだ。
「まったく、アンタは本当にムチャするわね」
そう言いながら、女神様は笑った。
俺は今日ほど貴方に感謝したことはありません!
俺は心からの感謝を捧げようと思ったんだけど……
「クックック…… フッフッフッフ……」
女神様が、なぜか笑い続けている。
別に、そこまでカッコつけなくてもいいと思うんですけど?
「アーハッハッハッハ!!! もうダメ、お腹痛い!!!」
いつしか、女神様の笑いは爆笑へと変化した。
「どうしたんですか、女神様?」
俺は不思議に思い、女神さまに問いかける。
「だって…… アンタってば床に倒れたと思ったら、『……俺、死ぬのか?』とか、カッコつけて言うんだもん!」
「そ、そんなカッコつけた言い方してませんよ!」
「まったく、カンタスのくせに、何カッコつけてんだか。 『……オレ、シヌノカ?』だって、アハハハ、もうダメ、お腹痛い!!! 」
「普通に言っただけですってば! いいですか、 俺は銃で撃たれたんですよ!? もっと緊張感持ちましょうよ!!!」
「アハハハ! なに真っ赤な顔して文句言ってんだか。実はアンタも相当の恥ずかしいクセに!」
「ウッセエなあ! ああもう、女神様のせいで、シリアスなシーンが台無しだよ!!!」
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