第6話

「な……! あれは開花水!?」

 指示を出しつつ自らも発砲する、地下警察三人組の一人が驚いた表情を見せる。

 あちらから見ても飲んだのは開花水で間違いないらしい。

 口に出してくれて助かった。

「ええい!! そんな事関係あるか」

 するとその地下警察官達がこちらに銃口を向けた。

「撃て!!」

 しかし。

「な、なんだこれは!!」

 突然、銃が三人の手元から離れ、宙に浮いた。

「もしかして……これが俺の能力……?」

 左斜め横を見ると、東矢の姿があり、瞳の色がより濃い赤色になっている。

 “武器を操作する”。

 それが東矢の能力かもしれない。

『装填に入ります』

『! 那奈、東矢! 今がチャンスよ! 武器を拾って!』

 マイノ声がポケットに入れたスマホ越しに聞こえる。

 確かに今、警察官達はあたふたしているし、オルノ十一号もミニガンの装填に入った。

 武器を拾い損ねた己達にとってはまたとない機会だ。

「了解!」

「分かりました!」

 同時にマイノへと答え、ボックスを取ろうと、二人は駆ける。

 直ぐにボックスの目の前に着く。

 しかし、その瞬間。

『ターゲットを捕捉』

 オルノ十一号が右手の剣で二人の胴体目掛けてなぎはらいを放った。

(やばっ!!)

 だが、このオルノ十一号は毎回、行動の度に対応した機会音声が流れるという特徴を持っている。

 これは地下警察官や民間人に怪我を負わせない為だが、敵からしたら致命的な弱点にしか見えない。

 その為、来ると分かっているので二人はタイミング良くジャンプし、攻撃を避ける。

 そして、すぐさまボックスを一つずつとって離れる。

 でも、隙ができているのでこのまま逃げようかと思った。

 しかし、それは出来ない。

『モードチェンジ、ローラー型に切り替えます』

 両足をプロペラ型から巨大なローラーが付いた、ローラー型がオルノ十一号にはある。

 これはターゲットの逃亡を阻止するために作られたもので、速さは異常。

 攻撃が正確ではなくなるのが弱点だが、プロペラ型よりも狂暴だ。

『……ローラー型に切り替えてきたわね。やはり戦うしかないわよ。さあ、スイッチを押して、武器を起動形態に変えて!』

 マイノが指示を出す。

 言われた通り、六つの面があるボックスのちょうど今一番上にある、面に着いたスイッチを押して武器を起動形態へと変える。

「え?」

 東矢のは剣に変わったが、那奈のは傷口も付けずに右腕から侵入し、体に溶け込んでいった。

 何を言っているか分からないかもしれないが事実である。

「ちょ、ちょっとマイノ!? これ、大丈夫なの!?」

『あ。説明し忘れていたわね。大丈夫よ。那奈の持っていた武器は体に溶け込んでいって、更に内側から身体能力を上げてくれるの。体に問題は無いわ』

 そうらしい。

 でも、本当か?

 怪しい……。

 だが、マイノは今まで嘘をついていない。

 それに体からさらなるエネルギーを感じる。

 嘘ではないようだ。

『後、それは戦闘後にちゃんと体から出て、ボックスに戻るから安心して』

「わ、分かった……」

 信じることにしよう。

「おのれ、クソガキ風情が!! 殺せ、オルノ十一号!!」

 東矢の能力によりなにもできなくなった地下警察三人組はもう、オルノ十一号に指示を出すしかないらしい。

 哀れみが極まっている。

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 早く他の警察官達がやって来る前に片付けねば。

「那奈、行こう!」

『負けないでね』

 東矢とマイノが言葉をかけてくる。

 ああ、そうだ。

 負けるつもりはない。

『リロードとローラー型に切り替え、成功しました。ターゲットを排除します』

 オルノ十一号の低い機械音声が鳴り響く。

 そして──ものすごいスピードかつ木々をなぎ倒しながら接近してきた。

「那奈、俺が操作できる武器は三つが限界みたいだ。どうする?」

「三つ!? なら、あんな地下警察、放っておいて、オルノ十一号の武器を!!」

「よし、分かった!」

 次の瞬間、地下警察三人組の武器は空中から落ちて、オルノ十一号の剣、ミニガン、右足のローラーが止まる。

 ローラーには敵をそのまま、攻撃するための刃が付いているのでどうやら武器判定になったらしい。

『剣、ミニガン、右のローラー、制御不能。回転攻撃に切り替えます』

「はあ……!?」

 那奈が驚きの声をあげる。

 それもその筈。

 オルノ十一号は球体へと変形し、左足のローラーを中央に出し、顔だけ動かず回転しながら、こちらに接近してきた。

 ローラーの刃が迫る。

「撃て!!」

 そして、地下警察三人組も発砲してきた。

 しかし、こんなところで死ぬわけにはいかない。

 復讐がまだ残っているのだから。

 すると東矢が動く。

「ふっ!」

 東矢の両手で持っている剣はなんと伸び銃弾を弾いた。

 だが、まだ止まらず、そこから剣をローラーにぶつけ刃を破壊した。

 どうやら、東矢の持っている剣は伸縮自在らしい。

「なにぃ!? ありえん!!」

 地下警察三人組の指示を出す者が驚愕の声をあげる。

「那奈、今だ!」

 しかし、そんな事気にせず、東矢のその声と共に那奈は回転するオルノ十一号を待ち。

「──ぶっ飛べ!!」

 オルノ十一号の刃が付いていたローラーに左足の後ろ蹴りを放った。

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