小話5~仮面の素顔後日譚~
みのり達が去った後、ユエシャと皇子は、縁側で茶を飲んでいた。
「残念であったのう。皇子。」
とユエシャが言った。
「何が、だ?」
皇子は不愉快そうに柳眉を上げ、聞き返した。
「ドレイク殿にますます嫌われたようじゃ。」
ほほっとユエシャは笑った。皇子はごほごほとせき込んだ。
「皇子はご学友と思うておったのであろう?ドレイク殿は皇子を覚えてなかったようじゃが。」
ほんに哀れよの、と意地悪く笑う。
会ったのは一度だけではない。第一皇子は留学で一年間、他国に出されていたことがある。その時、現地の学院アカデミーで同級生だった。授業も一緒に受けたし、騎士の訓練も参加した。獣人が蔑まれる国だったので、ドレイクに嫌がらせをする輩を追い払った覚えもあった。
まさか、覚えていないとは・・・。
皇子は額を抑えて、口を閉ざした。
今の思いを口にするなら、なんでお前がそれを知っている、だろう。
すぐに気を取り直し、涼しい顔で言った。
「あのくらいすれば、ドレイク殿も私のことを意識せざるを得ん。想定内だ。」
と、本気だか虚勢だか分からないことをのたまう。
「では、みのりのことは、フリかえ?」
「まさか。どの国にもしがらみのない竜の加護を持つ乙女だ。興味深いよ。」
「気に入られたのじゃな。」
「片方だけ、などと思慮深いものは王座など手に入れられぬ。私はすべて手にするよ。」
「皇子は欲深だのう。」
ふふふっと目を合わせて笑う。のちに、笑っていたのに怖かった、と給仕の侍従が話したとか。
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