鳥、作、廊、人間

　大人になるほど、身支度に時間を要する。顔を洗い、化粧をし、髪を整えて、家を出る。子供の頃は、気にも留めてなかった容姿に気を遣う。別に、それで特段美しくなるとか評価が変わるとか、そんな魔法みたいなことは起きないのに、癖で顔を洗い、癖で化粧をし、癖で髪を整え、癖で自身を取り繕う。閉鎖的な村に入るための儀式のような、外からは理解しようがない正体不明のものだ。

　この閉鎖的な村では、一見すると理不尽に思えるものが多い。「常識」「当たり前」「普通」といったニンゲンを成立させるためのナニカのことだ。君が先程受けたこの儀式もその一つである。

　ふふふ。まだ歯も毛も生えていない赤子に何を言っているのだろうね。ひとまず君は完成したし、ここまで運べば充分だろう。さて、君はどんな時代を生きるのかな。残念ながらどんな時代にもそのナニカはある。

　それでも。 君は思い出せるといいな。 そんなもの君一人の幸福には関係のないことだって。