クロスワードパズルの作り方

遠山ゆりえ

クロスワードパズル

 俳句と短歌が趣味ですが、もうひとつ趣味と実益を兼ねた楽しみがあります。クロスワードパズルです。我ながらインドア派だとつくづく思います。


 俳句や短歌は吟行で外に出かける時もあります。クロスワードパズルは普通、家で1人でおこなうしかありません。


 小学生の頃、新聞の片隅にあるクロスワードパズルを解いてみました。しかし何しろ語彙が貧弱なものですから、全部のマスを埋めることが出来ませんでした。

「クロスワードパズルを最後まで解ける大人になりたい」

そんなささやかな願いを持った覚えがあります。


 今やクロスワードパズル誌は書店の1コーナーを占め、どちらかといえば高齢者の趣味のひとつとなっています。パソコン上でも遊べるのでしょうが、アナログ人間の私は専ら紙と鉛筆です。


 家事や育児の隙間時間に、色々なクロスワードパズル誌を買い漁り解いていました。時々図書カード等の景品が当たるのも、楽しみのひとつでした。


 10年程前からでしょうか、クロスワードパズルを解くだけでなく自分でも作りたい!と思うようになったのは……。


 まず通信教育でクロスワードパズルの作り方を学びました。与えられた課題を封書で提出し、添削してもらうのです。

15✕15のマスの大きさのクロスワードを最後には作れるようになりました。


 作れるようになると、人にも解いてもらいたい欲が出てきました。夫は全く興味がないようです。周りの人でクロスワードパズル好きがいませんでした。


 そんな時、某パズル誌にパズル講座が載っていました。読者からのクロスワードを募集していて、出されたお題のパズルを作って投稿します。良い作品は講座のコーナーで紹介されるのです。

 私の作品も何度か取り上げてもらえるようになりました。


 そのパズル誌で読者の作品コンテストが開催され、私も出してみました。1位は取れませんでしたが、佳作に入り初めて賞金をいただけました。


 今もその雑誌にはお世話になっていて、出来の良いものは問題のひとつとして採用されています。原稿料もいただけてありがたいかぎりです。



 さてここから、クロスワードパズルの作り方を解説したいと思います。図解が出来ないため、文章だけで書くしかありません。どこまで理解していただけるかわかりませんが、やってみます。

 

 違う作り方も人によってはあるかと思います。あくまでも私の作り方なので、ご参考程度に。


 縦に8マス、横に8マスの正方形のクロスワードを作ることが多いです。まずテーマを決めます。例えば「花」のクロスワードにする場合、左上からヒマワリの文字を縦に入れます。これがタテ1となります。次にヒマワリのヒから横にヒヤシンスと入れればヨコ1です。言葉と言葉の間は黒マスで塗りつぶします。

 ヒヤシンスのスから下にスミレのようにつないでいきます。黒マスは縦横にならんでふたつ以上入れては駄目です。斜めに入れるのはOKですがそれもせいぜい3つまでです。


 黒マスを四隅に入れないように気をつけます。又、「島」といって黒マスでクロスワードの面を分断するのはご法度です。黒マスの壁があっても風が通るようにしないといけません。


 黒マスを先に決めてから、それに合わせて言葉を入れる作り方もあります。黒マスを左右対称に入れたり、点対称に入れたりも出来て見た目が綺麗です。


 同じ音の言葉をひとつのクロスワードに入れてはいけません。2文字の言葉は、うっかり入れてしまう場合があるので注意です。そして2文字は縦と横の両方に絡んでいた方が良いです。


 マニアック過ぎる言葉を入れるのも避けたほうが無難です。広辞苑等に載っているか調べる時もあります。(特に固有名詞) 

 動詞・形容詞ではなく、名詞のみが基本です。


 ◇


 テーマにそった言葉がいくつか入ったクロスワードが出来たら、左上から横に向かってナンバーを振ります。


 次に重要なのが鍵の文章を作ることです。端的に縦のカギと横のカギを創作します。ここがクロスワードパズル作家の腕前を披露するところです。AIでもクロスワードは作れるでしようが、人が作ると、それぞれの個性が色濃く出るのです。同じ言葉のカギでも人によって違います。

 例えば「アサガオ」のカギですが「牽牛花とも書く一年草」と蘊蓄を述べても良いし「小学生が夏休みの朝、観察日記をつける花」としてもOKです。

 

 全ての言葉にカギの文章を付け終わったら最後に「解答」を考えます。クロスワードで使われた音を拾って文章や言葉を新たに作るのです。花のクロスワードだったら AキBレCイDダEナ AからEを順に読むと「キレイダナ」のようにします。

 

 ここでの注意点は、ひとつの言葉からふたつ以上ピックアップしないことです。

 「アサガオ」からAア、Bオとか取っては駄目です。重ならないようにしましょう。又、縦か横の一方だけからしか解けない1文字からも、取らないようにします。


 ◇


 大雑把に説明しましたが、おそらく解りづらかったと思います。

 俳句や短歌は上手な人の作品を沢山読み、暗記するぐらい読み込むと自分の肥やしになる場合があります。それと同じで作ろうと思ったら人のクロスワードを沢山解いて、作者の良い所を学ぶのが良いでしょう。そうして自分でも作っていけば、模倣ではない傑作が出来るかもしれません。(残念ながら私はまだ傑作を作れませんが……)まずは5✕5ぐらいの小さなものから挑戦してみましょう。試行錯誤しながら作れば、段々慣れてきます。



 俳句は言葉をトリミングした1枚の写真に似ていると常々感じていました。短歌はショートショートの動画でしょうか? では、クロスワードパズル制作は何でしょう?無理矢理例えればゲームかもしれません。ゲームに疎い私が言うのもなんですが……。アナログで2次元の世界ではあります。けれどもそこは無限の言葉の組み合わせが交差して広がる、多彩な世界でもあるのです。

 

(完)




 


 


 


 





 

 

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