第13話 仏の顔もほにゃらら
『聞くのですガブリエル、もはやキリキリは貴方を禁固刑にしたくて仕方ないのです』
女神に言われるまでもなく、私の目の前で目を吊り上げている婦警から、並々ならぬ決意を感じている。
それは「オマエ、何か犯罪犯しているよな‼」目は口ほどに物を言う…ガブリエルが最近覚えた、『ことわざ』である。
意味は「なんか言わなくても解る…もしくは解れ」だろうと思う。
「で?」
「ふっ…尋問が一言とは、恐れ入る」
そのうち目が縦になるんじゃないかと思うほど吊り上がっている婦警さんキリキリ。
「今度は何をやらかしたんだ?」
「誤解だ、私が、やらかされた側だ、やったのは、あのオヤジだ」
ガブリエルは説明した。
部分、部分は英語ではあったが、割と流暢な日本語で、買った純銀アクセサリーが純銀ではなかったことを…。
「ほぅ…一応聞きたいのだが、オマエ、ソレが純銀ではないと、なぜ気づいた?」
「うむ、奴の顔面を何度殴っても灰にならなかったからだが…おやっ?」
「おやっ?じゃねぇ‼ 人を殴ったのか?そのゴツいアクセで‼」
キリキリ、机の上に乗りガブリエルの胸倉を掴みかかる。
「まぁまぁ霧島くん、お茶でも飲んで落ち着きなさい」
そんなキリキリを見かねて箱長がお茶を煎れてきた。
「そうだ落ち着けキリキリ、安いお茶でも飲んでな、私は葉っぱ湯など飲まぬがな…紅茶で頼む箱長」
「何様だテメェ‼」
キリキリが腰の手錠に手をかける。
『ガブリエル、ある意味では銃より手錠の方が厄介ですね、貴方、撃たれても死にませんからね』
「あぁ…死に程痛いだろうがな…」
ズズッ…とお茶を啜ったキリキリ。
「アレか…純銀制だと言われて買ったが、純銀制ではなかったから文句を言いに行った…そういうことか?」
「結論だけ言えばそういうことだ」
「だが、純銀制の確認の仕方が他人様を殴った感触だったと?」
「まぁ人ではないがな…そのあたりは説明が難しい」
「確認も取れねぇし、被害届も出てねぇみてぇだし…証拠もねぇしな…チッ‼」
『ガブリエル、今、舌打ちしましたよ』
「では釈放だな、SeeYou」
ウインクして安い椅子から立ち上がったガブリエル。
スッと右手を箱長に差し出す。
「帽子くらい、テメェで取れこの野郎‼」
キリキリの一言で帽子を差し出しかけていた箱長の手が止まる。
「まぁまぁ霧島くん、うっかり誤認逮捕だとか騒がれても迷惑だから、ここは穏便に」
「そういうことだ、仏の顔も何とやら?いい加減にしないと、私も黙ってられないぞキリキリ」
「調子に乗るなよ‼」
スッと帽子を被り、交番を出ていくガブリエル。
「えっ?」
箱長がキリキリを驚いた顔で見る。
「なんだ箱長?」
「今日はペッ‼とやらないの?」
「あぁ?」
「アンタにかけてやろうか?」
「うん」
ドキドキしながら目を閉じた箱長、ワクワクで顔面で受け止める気満々。
だが…それはこなかった。
「この仕打ちは…コレはコレで…なんかいい」
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