第31話:託された光(後編)
霧子の声は震え、目の奥に霞子の残像がちらつく。
彼女は、自分の双子の姉がカナタに全てを託したこと。
その意思を守るために、自ら背負った責任の重さ。
そして、育ての親としての思いに締めつけられていた。
「KAGUYA計画……
それは、人類の未来を守るため、そして地球の危機に対処するために、カナタ、あなたを含む特別な者たち、月神子の力を活用した計画なの……」
霧子は言葉を選びながら続ける。
「あなたの体の異変は偶然ではありません。
あなた自身が、この計画の中心に立つ存在だから」
カナタは手元の資料を握りしめた。
知らず知らずのうちに、自分は人類の運命に巻き込まれていたのだ。
「霧子さん……僕は……どうして……」
声にならない問いが零れる。
「あなたは選ばれたのではなく、運命に導かれた。
そして、あなたを送り出したのは……姉、霞子の意志です。
霞子は、あなたを自分の子供のように思っていました。
そして、あなたに希望を見出していた。
あなたが世界を照らす光になることを信じて」
服部は言葉を失う。
自分には守ることもできないもどかしさに、拳を握る。
カナタは資料端末の光を見つめる。
胸の奥のざわめきが、真実の重みとして沈んでゆく。
しかし、それと同時に、胸のざわめきが、静かに和らいでゆく。
霧子の言葉を通して、霞子の願い、そして自分の使命を理解し、徐々に受け入れ始めていた。
裂け目の光が微かに揺れ、夜の資料室が静かに震える。
「……母さん……僕は……」
悲しさと覚悟が入り混じった小さな声が、静かな室内に溶けてゆく。
「霧子さん、僕は、自分の体も、過去も、未来も……
全てを受け入れるしかないんだね。
もう……進むしかないんだね」
しかし、悲しみではなく、カナタの目には、寂しさと静かな穏やかさが宿っていた。
「……くそっ……カナタ……」
何もできず、服部は拳をさらに強く握りしめた。
夜の資料室は、微かな光の波動で震えていた。
カナタの体調異変は、決して終わったわけではない。
だが彼の心は、全てを受け入れていた。
霧子は少し目を落とし、カナタをそっと見つめる。
その眼差しには、霞子の遺志を託された者としての責任と、育ててきた親としての思いが入り混じっていた。
三人の間には、静かな思いが交錯していた。
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