第21話:時空の揺らぎ
深夜の神殿の観測室。
静寂の中、モニターの光が揺れている。
カナタは端末に向かい、裂け目の観測データを確認する。
手の震えは大きくなり、文字を打ち込むことさえままならない。
「なぜ、こんなに……」
その言葉の先にあるはずの恐怖を、カナタは心の奥に押し込める。
体が、自分のものではなくなっていく感覚。
それが、いつか戻らなくなるかもしれないという恐れ。
小さなため息とともに、視界の端に入る裂け目の光が強く揺れる。
裂け目の光の揺らぎと、自分の体調の変化が重なり、胸に重苦しい予感が広がった。
――――
霧子は資料を手に、カナタの体調データを再度確認する。
解析結果は予想通りだった。
微細な異常は、大きな異常へと変わりつつある。
だが、データを見るだけで、できることは何もない。
知っているだけで、カナタを治す方法は何もない。
「休むことも、時には必要よ」
言葉ではそう言いながらも、霧子は拳を握っていた。
何もできない現実を、ただ見ているだけの自分を、心のどこかで責めていた。
霧子の声は静かだが、心配は隠せない。
しかし、カナタはその声に応えず、データ端末の画面に目を落とす。
体の違和感を無視し、任務を優先する。
だが、胸の奥に芽生えた不安は消えるはずもなかった。
遠くで、裂け目の光が再び微かに震える。
その揺らぎは、カナタと霧子の間に、影を落とし続ける。
服部は遠くからその様子を見つめながら、眉をひそめ、厳しい表情を浮かべていた。
任務中のカナタの異変が、ただの疲労では済まないことは既に明らかだった。
「……これは、始まりに過ぎないかもしれない」
服部の心に、不安と焦りが浮かんでいた。
静かな夜の神殿に微かに漂う緊張。
それは、これから始まる異変の前触れに過ぎなかった。
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