<イケオジ丞相・郭賀と久方家>
賀が立ち上がり、頭を下げて見送り、再び椅子に腰掛ける。
「さて、何か聞きたいことはあるか?この機会に答えられる限り答えよう。」
そう言う賀は、見たところ40代くらいか。よく見るとちょっとやんちゃなイケオジで、口ひげと手入れの行き届いた短い顎髭をはやし、すらりとした体躯をしている。
皇帝がいなくなると途端に少しくだけた雰囲気になって、話しやすそうだと思ったのどかは手を上げた。
「はい!質問!」
賀が懐から取り出したキセルで指す。
「のどか、だったな。言ってみよ。」
「あの、後宮って王様の、」
「皇帝陛下だ。陛下、と呼べ。」
「すみません。陛下の奥様とか」
「皇后陛下と妃方、だな。」
「・・すみません・・後宮って、なんでおじいちゃんは入れないんですか?」
「後宮は簡単に言うと、陛下の妻であられる皇后陛下とそのお子様方、さらには側室である妃方とそのお子様方とその方々に仕える女官達の住む場所だ。何か間違いがあってもいかんので、陛下以外は特別に許可が出ない限りは基本的に男子禁制だ。」
「なるほど。じゃ、カンガンって何ですか?どうしてカンガンさんだと後宮に入れるんですか?」
再び黙り込む賀、光助、春子・・互いに視線を交わす。
(おい、お前の孫だろう、お前から話せ)
(いやいや、私の口からは逆に言いにくいことで・・)
男二人が目で牽制し合っていると、日頃韓国や中国の時代劇を見まくっている春子が、
「宦官って言うのはねえ、男の人のアレを切り取ってしまった人のことなのよ。」
と、さらりと言った。三度黙り込む、賀と光助。
「うお。痛そ。」
「違いましたかしら?」
「いや、その通りだ。」賀は光助にささやく。「光助・・であったな?春子はお前の妻か?」
「そうですね。今年で結婚40周年です。」
「それはめでたい。だが、お前の妻君はものをはっきり言いすぎやしまいか?日向でまどろむ猫のような顔をしているのに。孫は孫で感想が『うお。痛そ。』だけだ。もっとなんかこう・・しみじみ思うところがあってもいいのではないか?」
「まあ春さんも、のどかも、そういう所はありますかなあ。」
「寛容な男だな。おっと、のどかの質問に答えるか。あー・・まあ、男子禁制の後宮といえど男手が必要なことも多々ある故、宦官が働いている。“無い”故、女の園で不埒な真似ができん、ということだ。」
「なる~、理解しました。」
ビッ、と親指を立てるのどか。
「何だ、その指は。」
「いいよ!とか、大丈夫!みたいな意味です。」
ふむ、と賀はキセルをふかす。
「がさつだがちょっと面白いな、お前。」
「けなしてるんですか、褒めてるんですか。」
「けなしが7割。」
「多すぎる!」
賀は笑いながら、何か言いつのろうとしたのどかの口に、桃まんじゅうを放り込んだ。
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