名探偵ラウちゃんによるクソ推理

ゆきゆき

むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。

名探偵(犯人)

息抜きクソ小説の時間だ!

多方面にヘイト撒き散らすクソ主人公なので、そこは本当に注意しようね!

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◇山奥のコテージ



「どうも。こんばんは、あるいはこんにちは……あ、おはようは言いませんよ? 朝に小説読んでる人なんてどうせいませんからね。いたとしたら気狂いです」


 私は鬼宮ラウ。名探偵です!

 ポンコツカス女とか呼んでくる奴もいますが、あれはあいつが見る目ない人間なだけです。私は確実に名探偵なので、ね?



「そして、今回の舞台はここ……山奥のコテージです。それも、大雪で外にも出られないやつ。ご都合主義が発動しているので車も全部壊れています」


 4台あるのに全部壊れました。この作者は密室を作る理由なんて適当でいいと思っているらしいです。

 まぁ推理小説とか読んだことなさそうな名前だし……仕方ないですね(笑)

 “ゆきゆき”って……可愛い子ぶってんじゃねーぞ、カスが。



「なぁ、アンタさっきからどこに向かって話してるんだ?」


 そう私に話しかけたのはこのコテージのオーナー……未奈御みなごシロ。

 見た目はまるでホームレス……穢らわしいことこの上ないです。

 できれば近づいて欲しくありません。


 名前がどう考えても犯人ですが、どうせミスリードなので深くは考えないでいいでしょう。



「はぁ……これだから素人容疑者は。私は今読者の皆さんに説明しているんですよ。もしかしてあなたが犯人ですか?」

「いや、犯人って……別にまだなにも起きてないだろう。推理小説じゃあるまいし」


 はーあ、コイツは分かってないですね。この小説のジャンルはミステリーなんですよ? こんなんで事件が起きないワケないです。


 それに、こんな頭弱そうな名前の作者が書く小説とか……どうせ殺人事件に決まってます!



「また始まったよ……」


 そう呟いたのは白いコートを身に纏った中性の男。

 目は青く、髪は真っ白で長い……正直ほとんど女にしか見えない彼は、私の助手なのです。



「あなたは黙っててください、雪宮ユキ。名前からして確実に作者の溺愛キャラ、あるいは自己投影キャラのあなたには分からないかもしれませんがねぇ……どうせ事件なんてすぐ起きます! なんなら賭けてもいいですよ!?」


 あなたなんて……作者が自己投影キャラをソシャゲに投入して炎上するアレみたいな目に遭えばいいんです!



「こんなイカれ女がいる部屋にいられるか! 俺は部屋に戻らせてもらう……!」


 そう言ってズンズンと階段を登っていくのは金髪の男。

 何人か女泣かせてそうですが、あの中性男も何人か泣かせてる(確信)でしょうし、気が合いそうですね!

 あ、ちなみに名前は……なんでしたっけ、思い出せませんね。


 まぁ思い出せないってことはすぐ死ぬんでしょう。やっぱりこの役は死んでこそ輝きますからね……早く死ねっ!!!



「ぼ、ぼくちょっとトイレに行ってきます……」


 あっ、ショタだぁ〜〜〜!

 まぁショタが犯人なんて考えられないので、彼は候補から外しておきましょう。

 一応、名前は田中翔太郎らしいですね。



「くっ……左手が疼く……っ!」


 鴉森オルガ、14歳で翔太郎の兄らしい厨二病です。苗字が翔太郎くんと違うのは家庭の事情らしいです。


 なにかしらイジろうと思いましたが、私の炎上センサーがビンビンに反応していたのでやめておきます。



「やっほ〜☆ ラウちゃん、アタシの紹介はしてくれないのカナ?」


 自撮り棒の先にスマホをくっつけて、ライブ配信をしながら私に話しかけてくるこの女は……



「アタシはぁ、夢咲パルフェだよ☆ ラウちゃんもチャンネル登録してってね〜!」

「分かりました、登録しますね」


 私はスマホで『夢咲パルフェ』と調べ、そして出てきたチャンネルをブロックしました。


 ついでにライクディスライク.comで『嫌い』にも入れておきます……43%ですか、中々反応に困るラインですね。



『わん! わん!』


 コテージの名物犬。名前は茶色ちゃんとのこと……可愛いですが、それ以外に言うことはありません。



「おいおい、俺を忘れてねぇか? イカれ嬢ちゃんよぉ」


 そんな無礼なことを言ってきたのは大柄の男。名前はイミリシステン=クラガレス。

 服装は古代の拳闘士みたいですが、どうせ設定なんて考えてないだろうし無視します。


 名前がやたらと覚えづらいですが、これまたどうせクソ展開しか待っていないので……無理に名前を覚える必要もないでしょう。



 それはそれとして私をバカにしたのは絶対に許せません。後で必ず殺してやる……!



「……」

「そこの人も喋ったらどうなんですか。もしかしてあなたが犯人なんですか?」

「いや、違うが……俺は鍋島トグロ。ただの無職だが……別になんかやってやろうって思えるほど絶望はしてねぇよ」


 なんか深いこと言ってるように見えますが、多分文字数稼ぎで適当に喋らせてるだけでしょう……そもそもキャラ多くないですか?

 これ絶対適当に増やしましたよね?


 なんならキャラの名前とかAIに作らせてそうです。て、手抜き……! やっぱり全部手書きの小説じゃないと終わってま……え? AI関連は肯定的に喋れって?

 いや、でも過激なこと言った方がコメント書いて貰えますよ?



 ……え? 今後の小説でも出番を保証する?



 なるほど、分かりました……撤回しましょう。AI最高! やっぱりこれから手抜きの時代ですよね!



『そうやっ それでええんやっ』


 でもあなたへの悪口はやめませんからね。



『なにっ』

「だってこの小説適当に書いてるじゃないですか。もっと真面目に書くなら考えてあげてもいいですけど」

『こんな暇つぶしのクソ小説に時間なんてかけたくないんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ』

「あと、とりあえずその言葉使いやめたらどうですか? あなたの書いてる小説でその言葉使いに触れてくれる人誰もいないですよね?」

『貴様ーッ! 作者を愚弄する気かぁっ』

「でも事実ですよね?」

『ククク……ひどい言われようだな。まぁ事実だからしょうがないけど』


 そう言い残して作者は消えていきました。今の時代だとクソ展開でしかないですよね、こういうやつ。



 しかし……やっぱりキャラが多いですね。絶対にこんなの扱いきれません。


 この調子だと私が犯人とか、そういう展開になるような予感がします。それだけは避けなければなりません。



「さて。キャラ紹介も終わりましたし、ここから私の完璧な推理を———」


 その時、悲鳴が響き渡る。



『キャァーーーッ!!!』


 この声は……金髪男の声!?

 ウケ狙いしてんじゃないぞ作者ーッ!







◇2階———金髪男の部屋




‎「شو نعمل مع هالجثة؟ نرميها ولا كيف؟」

「Эй, нас спалили. Что делаем?」

「If you don’t want this guy ending up dead, you’re gonna drop every valuable you’ve got. Right here, right now.」

「A la mierda, nos cargamos a todos ya mismo.」

「不行,有個超危險的混在裡面。咱們快跑吧!」

「分かった。逃げるぞ!」



 2階への階段を登り、金髪の部屋に辿り着いた私たちを待っていたのは……6人の武装した男たち。

 その足元には2人分の死体が乱雑に投げ捨てられていました。


 さ、作者ぁ!

 もう面倒だからってミステリー放棄しないでくださいよ! せっかく私が推理できそうだったのに……!


 これじゃジャンル詐欺です!



「お、おい! あいつら逃げる気だぞ!」

「させません!」


 私は懐から拳銃を取り出し、即座に構え———発泡。話しやすそうな日本人の襲撃者の首元を撃ち抜きます。

 あ、撃つ場所間違えちゃった……



「お、おい!? なんで拳銃なんか持ってんだよお前!?」

「チッ! うるさいですね……拳銃は名探偵の標準装備なんですよ。黙っててください!」


 バキュン!と、私はいちゃもんをつけてきたオーナーの脳天に銃弾を叩き込んだ。


 ばたりと倒れたおじさん。それを見た雪宮ユキは冷静に、ゆっくりと口を開く。



「ラウちゃん……隠蔽、しようか」

「……そう、ですね」


 ついカッとなって殺してしまいました……このままでは私が犯人になってしまいます。


 幸い、ここに来たのは私とユキ、そしてこの死んだおじさんだけ……まだ他の人たちは階段を上がってきていません。


 そして、あの謎の武装集団たちは私にいいものを残していきました。それは2人分の死体———それも銃弾の痕がついているもの。



 少しすると、ドタバタと音を立てながら何人かの宿泊者がやってきました。



「ひっ……いったい、何が……」

「わぁ〜☆ 殺人現場だぁ〜っ! 写メ撮っとこ☆」

「むごい……誰がこんなことを……」


 左からショタ、配信者、拳闘士。

 3人はそれぞれが浮かない顔を浮かべて……いや、配信者はノリノリですね。



「私と助手がやってきた時には、すでにこうなっていました……これは殺人事件です!」

「え? でもあなた達がこっちに来た後にも銃声が聞こえたんだけど……」

「き、気のせいです!」


 マズい流れです。このままだと私が犯人に……!

 なんとか誤魔化さなければなりません。



「おい、俺は見てたぜ。このイカれ女が拳銃を撃ったところをな」

「なっ……!?」


 無職の男———鍋島トグロが私にそう言い放ちました。き、き、ききき貴様ぁぁぁっ!!!



「へ、へぇ〜? なんですか、それ? だいたい、あなたは今階段を登って来たじゃないですか。それなのに私が撃ったのを見た、と?」

「あぁ。ずっと階段の途中でひっそりと見ていたんだ、お前らが色々とやってるところをな……」

「グ、グギギ……」


 こ、このクソ《自主規制》がッ!!!


 マズい、マズい展開ですよこれ。しかも、よりにもよって無職に見られた。無職は一番厄介なんですよ。

 失うものが何もないから、平気で面倒なことに首を突っ込むんです!



「……あなた、何を言っているんですか。事件が起きたからみんな急いで上がってきただけでしょう? それなのに私がわざわざ人を殺すなんて、そんなことする理由ないじゃないですか!」

「銃声が聞こえた後にな? その後にもう一発、あんたが発砲した音が聞こえたんだが。あんまりよく見えなかったが、聞こえた会話からしてお前が撃った意外ありえねぇ」


 ぐぅ……っ!


 で、でもこのジジイは自分から墓穴を掘りました! 最初は“見た”って言ってましたけど、さっきは“あんまりよく見えなかった”と。



 私の意思を理解したのか、雪宮ユキが前に出ます。



「あの銃声は、犯人たちが逃走する際に威嚇で撃ったものですよ。ラウちゃんは、ただ証拠を確保しようとしただけです」

「証拠を確保って……なんで弾丸の痕がついた死体が2体も転がってんだよ。しかも1体は階段を駆け上がってきた奴の死体じゃねぇか」

「そ、それは……」


 チッ! 使えねーなこの助手……やっぱり作者の自己投影キャラはクソですね。



「お前たち、まさか嘘をついた上にそれを隠しているのか……?」


 拳闘士のイミリシステン=クラガレスが、ひたいに青筋を浮かべながらそう呟きました。マ、マズい……!


 そのままクラガレスはユキの襟を掴み、持ち上げます。



「ラウちゃん! 助けて!」

「えぇい、うるさいですね! この拳闘士!助手が掴まれたぐらいで推理言い訳が滞る私じゃないですよ!」


 私は拳銃をクラガレスの古代の拳闘士のコスチュームの胸元に突きつけました。



「放しなさい。さもないと、あなたをミステリー小説の常識に照らし合わせて、第一発見者兼容疑者として処理しますよ!?」

「ぐっ……チッ」


 クラガレスは渋々ユキを放しました。ユキは服の埃を払い、私の後ろに隠れます。







◇ジャンル詐欺にならないために無理やりねじ込まれる推理パート


「皆さん、落ち着いてください! こんな状況で内輪揉めをしている場合ではありません!」


 私が手を叩いて注目を集めます。



「まず、この状況を整理しましょう。死体は現在3人分。最初に死んでいただろう男、駆けつけてすぐに死んだ金髪の男と、そしてコテージのオーナーです」

「なぁ、お前さっき拳銃出してたよな? あれなんだ? やっぱお前が撃ったとしか考えられな……」

「うるさい観客には退場してもらいます!」

「な……ぐあっ!?」


 私が懐から取り出した銃により、無職ジジイの心臓が撃ち抜かれます。



「が……げ、現行、犯……」


 バキュン!

 バキュン!


 バキュン! バキュン!



 やがて無職は完全に沈黙しました。これで推理を再開できます。



「ひ、人殺しーーーっ!!!」

「では、推理を続けます。武装集団は6人。様々な言語を喋っていたことから、国際的な犯罪組織か、あるいは作者の雑な設定の産物でしょう。彼らがこの2階の部屋で、2人の男を殺害したことは間違いありません。そして、彼らが私たちに気づき逃走した。逃走の際に、運悪く駆け上がってきたおじさんを私の銃弾と見せかけて撃ち殺し、ついでに銃声で威嚇した……これが真実です!」

「どこが真実だ……貴様は生かしてはおけん!」

「へん! もう私も取り繕いませんよ……さっきのでミステリージャンルと言い張って問題ないぐらいには推理しましたからね……!」

「推理ですらないわぁ! ぬんっ!」


 私に向けて振り下ろされる拳。しかし私の手元には拳銃が———あ、弾切れ。



「くぴゃぁっ!?!?」


 軽く2mほど吹き飛ばされる私。心配そうに……いや、全然心配してなさそうな顔で近づいてくる雪宮ユキ。


 私に向かってくる拳闘士に、それを自撮り棒付きのスマホで撮影している配信者……あとオロオロしてるショタ。



「お前は許されぬことをした……故に、俺の部族の掟をもって、お前を殺す!」

「クソがーーーっ! 女性に対する配慮とかないのかぁっ!?」

「貴様は畜生以下だ。大人しく死ねっ!」


 ま、マズいですね。このままだと私が殺されてしまいます……そうだ!


 私は近くにいたショタの元へ駆け寄り、そしてその首を掴みながら全力で叫びます。



「この子が殺されたくなかったら……私の前から出ていけぇっ!!」


 こ、これなら手は出せまい……!


 と私は思っていたのですが、拳闘士はそれでも近づいて来ました。ヤバいですね、本格的に死の危険を感じてきました。


 しかし、拳闘士が私に殴りかかろうとした時———



「う、うぅ……っ!」

「なっ!? まさか……」


 床に散らばっていた死体のうちのひとつ、金髪の男が起き上がりました。



「えっ!? 生きてたんですか!?」

「あ、あぁ……偶然にも生き残って、いた……らしい……」


 そして、他の死体も続々と起き上がります。

 黒髪の男、コテージのオーナー、あと私が殺した無職。



「う、うぅ……」

「な、なに……が……」

「けほっ、ごほっ……」


 これはチャンスです!

 私はオーナーと無職に駆け寄り、ひっそりと彼らに耳打ちします。


 すっかり『ラウさんは拳銃なんて撃ってません』と言うようになったところで、ひとまず事件は解決———配信者も『感動の展開だね〜☆』と言いながら配信を切りました。








◇???



 さて、一件落着……とはいきません。

 ここからが真の推理パートです。



「読者の皆さん、おかしいと思いませんか? このご都合主義に満ちた展開。オーナーの人なんて頭を撃ち抜かれたのに生きてますよ」


 そして、私は確信を持って言い放ちます。



「この事件の犯人は———あなたです、作者」

『ククク…ひどい言われようだな』

「あなたはここまでに登場させた大量のキャラを持て余し、適当に終わらせることにしたんです。途中でわざとらしく出てきた厨二病とワンちゃん、あれから出て来てないですよね?」

『はうっ』


 私はさらに続けて口を動かします。


「推理小説の定石では、登場人物が多すぎると個々のキャラクターの掘り下げがおろそかになり……読者の混乱を招きます。この小説の作者は、きっと設定を増やせば面白くなると勘違いしたんでしょうね」

『読者⋯全然沸いてないんスけど いいんスかこれで』

「挙げ句の果てに暴力描写に頼り、展開まで収集がつかなくなった……これらはすべて、作者のせいで起きた悲劇です。私が拳銃を撃ったのもそのせいです!」

『見事な推理やな…』



 さて、これで真犯人をオマケシーンで問い詰めるアレを終えたことですし……これにて一件落着です!


 今回も私の名推理が炸裂してしまいました……

 私は満足げな笑みを浮かべ、コテージを出ます。私たちの名推理は———これからだ!



◇ご愛読、ありがとうございました———!





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こんなクソ小説を面白いと思った人は☆☆☆をお願いします。こんなクソ小説だろうと評価は欲しいんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ。

作者のフォローとか別の小説を読んでみるとかも嬉しいんだ 喜びが深まるんだ。

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