第3話 オルグス大迷宮
「ここはどこなのか?家に帰れるのか?など色々疑問があると思いますので説明が欲しかったら遠慮せずにどうぞ。無いのでしたら私の話を聞いてもらいたい!」
頭の中でこいつはやばいと警告を何度も何度も鳴り響いている。敬語で話してるはずなのに背筋が凍るような殺気を今も全身から溢れ出ている。
「話を聞いてもらいたい?まずは自己紹介だろ!あとここがどこなのかを早く説明を!」
突然立ち上がり仮面の男に話しかけたのは学級委員の
「良い質問ですねぇ!そうですね…まずはここについての説明をしましょうか。こほんっ」
手を口に当てて少し咳き込む。そして質問に答えるために仮面越しに口を開いた。
「ここはオグルス大迷宮ッ!全100層の大型Sランクダンジョンです!現在は1階層の
「ダンジョン?飢えた餓狼?何言ってるのよ!私が誰だか知らないの?!早く学校に帰らせ──」
ブチッ
「私は説明が欲しい方は、と言ったんですよ?他の方に発言権を与えた覚えは無いのですがねぇ?」
「ぎやぁぁぁぁぁ!!腕、私の腕がぁぁ!」
画面の男が目に追えないなどの速度で姫乃香織に接近。そして右腕をもぎ取り、握り潰した。姫乃は今も悲痛な叫びを上げて悶絶している。
「テメェ何しやがるッ!」
「おや彼氏さんですかね?」
シュッ
姫乃香織の彼氏の
「かはっ!」
「元気が良いのは好都合ですが今は邪魔ですね。後で回復系スキルがある方は治療をお願いしますね?私はお恥ずかしながら他人の回復が苦手でして…」
圧倒的な力を見た俺達は激しく恐怖した。今すぐにでも頭(こうべ)を垂れた方が良いのではないかと全員の頭によぎった。直感で分かる、
「?何ですかその化け物を見るかのような目は…まぁ良いでしょう!私の名前についても質問していましたよね?名前は…そうですね代行者とでもお呼びください。他に質問は?」
「…」
神矢も畏怖してしまった動きが止まっている。俺はあんな化け物に話しかけたのか、と。
「質問が無いのでしたら本題に入りましょうか!貴方達をここに転移させたのは簡単に言えば神の娯楽のためです。誰が100層まで攻略できるのか?誰が最後まで生き残るのか?などを賭けたゲームです」
「は?ゲームの為に死ねって言ってるのか?」
口を開いた瞬間に死んだと思った。反射的に話してしまったが俺も姫乃と同じようになるのでは無いか?俺は異世界に来てすぐ死ぬのか?と頭をよぎる。
「まさかあれほど威嚇しても喋る方がいるとは…今回は良い結果が見れそうですね!期待してますよ?宮戸蓮兎君」
「え、はい…」
案外気に入られたのか?兎も角生き残ったのか…危ない危ない、次からは発言に気をつけよう。
「話を戻しましょうか。つまり簡単に言えば100層まで攻略出来た方には多額の報酬が待ってますので頑張ってください♪では私はここで」
「いやちょっと待っ──!」
シュワンッ
仮面の男の足元に小さな魔法陣が出現して男をどこかに連れてってしまった。ワープだろうか?どこに行ったかは見当もつかないが脅威は去ったことは確かだ。
「ひ、一先ず2人の治療をしないと!私回復系の固有スキルあるよ!」
初めに言葉を発したのは鏡花だった。負傷した2人の近くに行ってすぐに治療を開始。手の平から白色の光が漏れ出ていてその光に触れた側から傷が癒えていくのが見えた。
「まずは状況整理を皆んなでしよう」
もう神矢立ち直って話せるんかよ…流石ほぼ勇者。ワンチャン実際に勇者だったり?よし!鑑定眼発動!
「まずは皆んなのスキルの確認からだな」
あ、あれ?発動しない…ステータスオープンみたいに頭の中で念じればいけると思ったんだが…目に力入れて魔力を込める!これならどうだ?!
名前 神矢悠多
職業 勇者
レベル 1
スキル 剣術C 魔術E 武術E 白魔法C 光魔法E 危険感知F 友好A
固有スキル 神怒(カムイ)
称号 転移者
見れるステータスが俺と少し違う…人のを見る時は
「私の固有スキルは慈愛の左手って言って左手で触れた相手を治せるらしい!」
「俺は魂ノ採取ってスキルでデバフとかダメージとかそんな感じ」
「私は刀神で剣の腕前に大幅に補正をかけたりできるスキルだ」
お、鏡花のスキルは大体予想できたけど
「じゃあ俺のスキルも明かそうか、俺のスキルは──」
「ガルルッ!」
「ガウワッ!」
神矢がスキルを明かそうとすると背後から狼の群れが襲いかかって来る。その牙は神矢悠多の首元を捉えて今にも噛みちぎりに飛び出して来そうだ。
「何だこの狼?!セーフゾーンじゃ無かったのか?!」
嘘をつかれたのか?いやよく見ると横穴の入り口に何か紙が貼ってある…紙がある場所以外は襲ってこないのを考えるとそう言う罠の類か?どっちにしろ命大事に行動開始ッ!
「ガウッ!」
「元剣道部舐めんなッ!」
ギィィンッ!
初期装備として持っていた長剣を使って狼に攻撃を仕掛ける。刃は餓狼の牙と少しの拮抗の後に牙を砕くことに成功した。
「久しぶりに体動かすけどやっぱ体が覚えてるもんだな」
「ガルルル…」
牙を折ったことで警戒してるのか?それなら好都合!早速固有スキルの発動を…これは念じれば行けるのかな?一応声にも出すとしようか。
スッ
「魂ノ採取」
「ガ…ル?」
バタンッ
手を突き出してその名を呼ぶとスキルが発動して狼の魂を奪うことに成功する。どうやら弱った相手にも有効らしいな…あと俺の手には小さな球状の物が握られている。これは…魂か?
「吸収って食べるって意味かよ…抵抗あるけど生き残る為ッ」
ガブッ
魂を喰らうと頭の中に直接レベルアップのファンファーレが鳴り響く。魂を喰らうと体の底から力が漲ってくるな…レベルアップもあるだろうがこれが魂ノ採取の効果だろうか?魔力も回復している。
「ははっ!俺戦えるじゃんか」
これなら他のやつの加勢に行ってモテモテタイムじゃね?!ピンチの時に駆けつける主人公的な感じで俺にもモテ期来るかぁ!
「さて、救出頑張…る…?」
「きゃぁぁ!」
「やだこっち来ないでッ!」
「足がぁぁ!俺の足──ッ」
ある者は絶望の中叫びながら走り続け、ある者は潰れた足で地を這いつくばり、ある者は抵抗虚しく餓狼に食い尽くされている。
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