奇界伝

カペタ

第1話

 怪しきもの、記録に残らぬ異形……、それらが全て絶えたわけではない。

 人知れずに鎮め払う、奇界師達が衆目に触れることが無きように隠している。


 「ま、そういうわけじゃ。奇界の法は、元々異形のものどもが生まれつき持っていた能力を人が真似た物じゃし」

 小柄で少女の姿をした誰かが黒板に書かれた文章を棒でピシピシと指している。


 「だから、バケモノの方が奇界の展開が速いのか……」

 少年は腕を組み唸った。


 「うむ。そうじゃな。だが、出したり引っ込めたり、融通はきかん。そこが奇界の法の強みじゃな!」

 見かけの割に慣れた仕草で胸を張って堂々としている。


「奇界の法って、便利な奇跡を起こすものだと思ってたぜ……」

 少年は奇界の法が夢のような話ではないことに気付き、肩を落とした。


「望みを叶えるのは己の手で為してこそじゃな!かっははは」

 ……

「さて、無粋な邪魔ものが入ったようじゃのぅ。ちょっくら表に出るか」

 そう静かに告げると、のんびりとした歩みで戸を開け、屋敷の外へと向かって行った。

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