何故けつ毛は絡まるのか

@ketsuge_bobo

痛みより

何気ない日常の中で、ふと散歩をしていると肛門の毛が絡まる。

肛門の毛では呼びにくいであろう。そして何より味気ない。検索サイトのグーグルに問うてみる。このサイトは万能的であり。私のような知恵の無い愚民にも、懇切丁寧にその知恵の一部を無償で分け与えて下さるのだ。故に私はこのサイトを師と呼称している。師曰く、肛門の毛を「けつ毛」と呼ぶのだという。

なるほど。肛門、いわゆるけつに生息している毛、故にけつ毛。これは言い得て妙ではないだろうか。


さて話題を戻すとしよう。何故けつ毛は絡まるのか。私が思うに絡まるという表現では、この我儘な肛門は納得することを知らぬままであろう。

私の肉体が歩みを進めるごとに、けつ毛たちは反発し合い、私の脳みそへ痛みを届けに来る。まるで、自分たちのいざこざを私に認知して欲しいかの様である。私から見るとけつ毛たちのいざこざは、さながら女子高校生たちの揉め事の様である。彼女たちは私の肛門という安息の地で、暇を弄ぶかのように互いの髪の毛を引っ張り合っているのではないだろうか。なんと可愛げがあり愛おしいのであろうか。


時にそこの君はけつ毛を見たことがあるだろうか。

まだ見たことがないというのであれば、一本引き抜いてその眼でよく見てほしい。けつ毛とは身体の他の毛よりもどこが艶やかであり、他の艶やかな毛よりも、どこが華奢な細さをしているのだ。

そのせいか私はけつ毛がどこか女性的であり、彼女たちの絡み合いには若さすらも感じられる。その若さとは思春期的な甘酸っぱい香りに包まれていて、私は、いや僕は、彼女たちを女子高校生として見つめてしまうのだろう。きっとこの香りは私の使用しているボディソープの香りによく似ている。どこまでも寵愛を受けるほどに私を虜にしてやまない。


人間の身体に何故毛が生えてくるのかを君は知っているだろうか。

一見無意味に身体に生えてくる毛たちにも、しっかりと意味があるのだ。これを知ればきっと君は今後、夜空の向こう側、更にその奥まで見渡せるほどの世界を知ることになるであろう。

なんと彼女たちけつ毛は、主である私の身体を

外部的要因から守るために生きているのだ。外部的要因とは衝撃であり、刺激であり、侵略である。主である私は、いや我々人間は、彼女たちから授けられた加護の元でより長く生き長らえているに過ぎないのだ。その加護はまさに無償の愛であり、私はそれに母性すら感じざるを得ない。


ここで私の中にひとつの矛盾が産まれた。

何故母性すら感じさせてくれる彼女たちは絡み合い、私に痛みすら伝えてくるのだろうか。私の中で考えられる直接的な原因として、私の体躯が愚かにも下着を召していないということが考えられる。しかし偉大である彼女たちはこんな単純な理由でこの様なことをしてくるのだろうか。答えは否である。


勘のいいそこの君はもうとっくに気づいているのかもしれないな。

そう、彼女たちの毛は少し縮れている。これは不自然ではないだろうか。私は日本人であり、髪の毛などは縮れていない。では何故彼女たちは縮れているのか。答えは明白であり、愚鈍な私はそれに深く感銘を受ける。

彼女たちはその高貴なる身をもってして、昨今の黒人差別問題を我々に訴え掛けているのだ。これは暗に、黒人ではない主の私の身体に宿っている自分たちが縮れることにより、世界中から差別意識を取り除こうとしているのである。

私は私の肛門におびただしいほど宿っている彼女たちの、そのどこか儚げな横顔に聖女のような面影を見たのである。彼女たちの真に平和を願うその心に、私は刻の涙を流した。


『何故けつ毛は絡まるのか。』


日常の些細な出来事には、人々の平和を思う願いがそこにはあった。日々生きてゆく中で、そこの君も少し立ち止まり、感じ取って欲しい。

小さな痛みが君に大切なメッセージを届けようとしているのかもしれないのだから。

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