第7話 夢

 ◆


「はあ、はあ、はあ……。やっと……終わった……」


 魔王の広間で、骨組みの玉座に深く座り 魔王エルレイン(佐藤 真猫)は息を荒く吐いた。


「でも、うまくいってよかったにゃ♪」


 笑顔で ねこにゃんは側に立っていた。


「 魔王――。いや、佐藤 真猫。作戦はうまくいったな 」

 

 さきほど、鎖で縛られ連行された『勇者』が、拘束具なしで魔王の広間に入ってきた。


「ええ……ほんと、疲れたぁ……。まさか、魔王とねこにゃんを同時に演じることになるなんて……」


「わたしも、あの時おまえが言った言葉が、真実だとは思わなかったぞ」


 ◆◆◆


「 そんな話しを、わたしが信じると思うのか? 」


 牢獄に囚われし勇者に、入れ替わった事と、この計画の全容を話した。


「信じられないと言うなら、あたしを殺せばいい」


 牢屋を開けて、腕に巻かれた鎖を解いた。


「あたしを殺して国に戻れば、あなたは歴史上最高の大英雄になれる。そして新たな魔王が生まれ、『戦いは永遠に』続いていく……」


 異空間から取り出した聖剣を突き立てた。


「あなたの目的が大英雄になることなら、これであたしを殺せばいい……」


 佐藤 真猫は無防備に腕を広げた。

 無言で勇者は聖剣を引き抜いて構える。


「 みんなの笑顔はわたしが守る 」


「――!」


 つぶやいた言葉に、勇者の動きがピタリと止まる。


「どこで……その言葉を……?」


「その言葉が真実なら、その信念に従ってほしい」


 2人はじっと見つめ合い――。


「……いいだろう。わたしの誇りと魂に従おう」


 世界無二の聖剣を、魔王に手渡す。


 そして3人は考えた。


 すべての者を魅了させる演劇を……。



 ――まあ、ネタバレすると、あたしは使い魔の特性を利用し、ねこにゃんの中に入って、魔王と同時に演じ続けた。まるで前世でやっていたvtuber活動。


 勇者の協力と、剣劇の練習なしでの成功は不可能だったろう。筋肉痛がほんと凄い。


 勇者メルルは、足を舐めることには最後まで難色を示していたが、ねこにゃんと説得してなんとか了承してもらえた。

 ほんと、初日を無事に終わらせることができてよかった……。


 いじめられて引きこもって、死のうとしたあたしを救ったのは、配信だった。


 配信はすべてを救う。


 あたしがこの世界を変えてみせる。


 配信があたりまえで、戦争なんかより配信見ようぜ――そんな世界にしてみせる。


 そして、がっぽり稼いで、この世界で夢を叶えてやるわっ!


「 わっはっはっはっは! 」


 魔王の椅子で高笑う佐藤 真猫のことを、勇者はあきれた様子で眺めていた。


「……本当に、こいつにまかせて大丈夫か?」


「にゃ♪」


 こうして魔王と勇者の、世界を革新するコラボ配信が始まった。


 次回の配信まで、おつにゃ〜ん♪

 

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転生魔王vtuner 佐藤ゆう @coco7

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