ようこそ、エレーディア社へ

白崎なな

第1話

「こちらエレーディア社です……あなたは?」

「私は、シュナンです。インターンシップに来ました」

「あぁ、今日は学生さんがいらっしゃる日でしたね。こちらへどうぞ」


 

 丁寧な言葉遣いのこの女性は、真っ赤な髪をアップにして真面目さが滲み出る。シュナンはピリリとした感覚を覚えて、背筋を伸ばした。

 


 女性の表情の硬さから、冷たさを感じてしまう。それが、シュナンの心拍数を跳ね上げていた。




 ――ゔっ……全身見られている……。



 上から下まで舐めるように見られて、値踏みをされている気分になる。


 

 茶色のカウンターから、書類を手にして彼女が出てきた。女性はくるぶし丈のふわりと広がる、真っ白なドレスを身に纏い黒色のエプロンを着けている。それが、ここの制服だ。



「私は、ロゼです。本日の社内案内を担当します」

「ロゼさん……よろしくお願いします」



 大きく瞬きをして「こちらこそ」と視線だけで、そうつげる。少し早歩きのロゼに合わせようと、慣れないパンプスの足で歩幅を広げた。


 忙しいのだろうか。



 そんなふうに思い、見たいところだけ見せてもらい早く切り上げようか……なんて考えまで出てくる。正直彼女の気迫に押しつぶされてしまいそうで、居心地が悪かった。



「はい。まずはですね……エレーディア社は、我が国アスティの誇る輝かしい会社なのですよ。誰もが知っている……えぇ、そうですね」



 急に意気揚々として、会社説明会が始まったようだ。廊下は白の壁紙に、真っ赤のカーペットが敷いてある。


 パンプスの衝撃を吸収をして、ふわふわとした感覚が伝わってくる。



「宝石、服飾……アスティの流行りを作る会社です」




 奥に聳え立つ重たい扉を、ロゼがノックをする。丁寧な手彫りの扉は、荘厳で美しい。



「ロゼです」



 中の人の返事を待たずに、ロゼは部屋を開いた。一礼をせずにズカズカと中へ足を踏み入れる。そんな彼女に置いていかれ、二の足を踏んだ。



「なにをしているのです?」

「は、はい!」



 慌てて促されるままに、部屋に入った。大きなシャンデリアが室内を照らし、壁一面に並べられた本がこちらを向いている。




「私は、社長でもあるのです。礼儀正しいあなたを、私は歓迎します。……ようこそ、エレーディア社へ」



 そう言われ、彼女がずっと持っていた書類を手渡された。何気なく受け取り視線を落とす。そこには、大きな文字で『入社手続き』と書かれている。



 ――インターンシップって言ってたはずだけど!?



 そうしてシュナンは、最先端を生み出すエレーディア社へ入社が決まったのである。

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ようこそ、エレーディア社へ 白崎なな @shirasaki_nana

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