ある男の小さな幸せ

@saunaman

第1話 ある男の些細な楽しみかた

男に限界が来ていた。

社会での立場や家庭事情、人間関係。

それら全てのせいで男のメンタルは限界に近づいていた。

会社では仕事を覚える気のない後輩の教育、上司からの期待や圧。

妻は他の男と浮気をし離婚。

友達に会えば利用されるような扱い。

もう男には限界が来ていた。

なにもいらない、1人にして欲しい。

ただそれだけの願いを毎日思い描いていた。

辛い、死んでしまいたい。

もう楽になりたい。

そう思うことも少なくはなかった。

だが彼には今を留まる理由があった。

男には些細な楽しみがいくつかあるのだ。

そんな些細な楽しみの一つを話したいと思う。

30歳バツイチ、会社での仕事に不満はない。

ただ思うことがある。

最近俺、汗かいてないよね。

そう、汗をかく。そんな生命として当たり前のことが近々できていないのだ。

お腹周りも大きくなった、階段を上るのがつらい。

筋力も昔より落ちている気がする。

運動したいなぁ。

ということでジムをネットで会員登録してみた。

どうやら近所に最近新しくジムができたらしい。

私は体を動かすことが好きだ。

昔はよく山登りやランニングなどをしていたものだ。

いつからだろう、運動しなくなったのは。

お腹も出て、体力も落ちて。

おまけにメンタルも下がり気味。

これでは駄目だ、運動をして気持ちも身体もスッキリさせたいと思う。

仕事が終わり、いざジムに入店。

ほぉ、最近は顔認証システムで入れるようだ。

ネットで会員登録をした際、顔写真を撮ったのはこのためか。

なるほど、ではでは行こうじゃないか。

ジム内の人は高齢の方から若者まで幅が広い。

あの若者、すごい筋肉だな。

さて、ジムに来るにあたって私は準備をしてきた。

プロテインシェーカーとプロテイン

これは無料の水で運動後のプロテインを作成するのである。

味はココア味、あとはなにやら書いてあったが。

まぁいいだろう。

そしてバスタオル、どうやらシャワーが使えるらしい。

これはありがたい。

そしてシューズ、水色の可愛いやつだ。

テンションが上がる。

さて、準備は整った。

Tシャツに下はスウェット、動きやすい格好でいざ挑む。

何から始めるか。

全くわからん。

とりあえず観察してみよう。

腹筋を鍛えるマシーン、あれがなんだか良さそうだ。

なるほど、重りの重さを決め。ハンドルをつかみそのまま上体起こし。

これはキツそうだ。

やってみたら腹筋に負荷がかかっているのが分かる。

おおぉ、これはいいぞ。

なんだか燃えてきた。

その後私はジムのマシーンを堪能し、心身ともにスッキリしたのである。

身体を動かす気持ちよさを思い出した。

これからも身体を鍛えようと思う。

さて、運動し終えた。

次は食だな。

本来であれば低カロリー低脂質高タンパク質の食べ物を食べるだろう。

だが今日は違う、今日はジムはデビューの記念日なのだ。

祝うべきだ。

私はスーパー銭湯に来た。

スーパー銭湯?なぜ?

そうここにはあれがあるのだ。

サウナ飯

ここのホルモン丼を食べたい衝動に駆られたのである。

ぷりっぷりで甘いホルモンと青ネギ。

炊きたての米、赤だしの味噌汁。

運動の後にはたまらないご褒美だ。

カロリー?

いいや、まずはメンタルの回復。

そう、心のケアだ。

美味しものを食べ、明日に繋げる。

それが活力になる。

運動もした、腹も膨れた。

そしてここはスーパー銭湯。

だとしたら。

〆はサウナでしょと。

ここのサウナはロウリュウ式

熱い石にアロマ水をかけ蒸発させる。

その水の蒸気で室内の温度を上昇させる。

そういったものだ。

サウナの中には段差があり上の方はかなり暑い

とりあえず中段に座ってみる

うん、こりゃ暑い。

汗が身体から吹き出るのがわかる。

いいね、これだよこれ。

私が求めていたもの。

サウナで身体をこってり発汗させ。

その後キンキンに冷えた水風呂で毛穴を閉める。

そして外気浴。

ぼーっとして整う。

もう完璧だ、これ以上ものは無い。

そして考える時間がやってくる。

明日の仕事のこと。

周りの人間関係のこと。

将来のこと。

いっぱい考えた結果。

何も考えなくなる。

全て頭から無くなる。

サウナ。

最高じゃないか。

そんなこんなで今日も終わり。

明日も頑張ろう。

小さな幸せを感じるために。




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