第15話
練習のあとは近くのカフェに行くことになった。
女性陣はやはり甘いスイーツがお好きなようだ。
甘いものがそこまで好きじゃない俺はコーヒーだけにしておいた。
「で、ライブはいつにする?どこかいいタイミングのイベントとかってあるかなぁ?」
うーん、どうしようかなぁと考えていると、ミミさんがある提案をしてくれた。
「じゃあさ、今度学校でライブイベント?みたいなのがあるんだけど」
「学校の中庭でさ、ステージ作ってライブすんの」
「ん?それってもしかして、中庭ライブのことですか?」
「というか、ミミさん中庭ライブ知ってるんですか?ミミさんって実はうちのOGとか?」
「……みんな高槻高校だよねぇ!?わたしそこの3年生なんだけどぉ!」
衝撃の事実だった、完全に大学生だと思っていた。
でも確かに、大学生だと聞いたわけではない、まさかうちの学校の先輩だったとは。
「だからさ!中庭ライブ出ようよ!このメンバーで出れるじゃん!」
確かに、ライブハウスとなるとお金もかかる。
さらに日和さんとずっとバンドをしていたため、学校でライブというのは初めての経験で興味もある。
ちらっと未来のほうを見る。
美味しそうにパフェを食べていた。
未来のことを考えると、学校でライブはまずしないほうがいいだろうと思った。
不登校の生徒がいきなりライブに参加するのだ、中にはよく思わない生徒もいるだろう。
「うーん、ちょっと事情がありまして、中庭ライブは厳しいかもしれません」
「わたしのことなら気にしなくても大丈夫ですよ」
未来が灯火のパフェを食べる手を止め、そう口にする。
「わたしだって高槻高校生なわけで、参加する資格はありますよね?」
「そりゃそうだけど、未来は」
灯火とミミさんは事情をしらない、そこまで口にして言いよどんでしまう。
「灯火センパイとミミセンパイにも知っておいてほしいです」
未来はしっかりとした言葉でそう言い、自分の今の状況について話し始めた。
「……潰そうか」
灯火がそう口にする、やめて俺の下半身がきゅんっとなった。
「それって噂のやりちんくんかなぁ、3年の教室まで来てかわいい子とか物色してたの」
ミミさんはそれとなくその人物を知っているようだ。
「結構有名だからもうみんな相手にもしてないんだけど」
「なんか3股4股当たり前ーみたいな」
「そんなやつがいるんですね」
なんか話を聞いているとむかむかしてきた、そいつのせいで未来は学校に行けなくなったわけで。
灯火ではないが再起不能にしてやりたいような思いが湧き上がってくる。
「まあそんな状況なんですけど、わたしもそろそろ勇気を出さないといけないのかなって」
未来は少し震えながらそう口にする。
「男子は怖いし、女の子だってどんな反応するのかわかりません」
「でもこのまま、不登校のままで本当に自分はいいのかなって」
「少なくとも灯火センパイやミミセンパイ、天宮センパイみたいな先輩もいてくれますし」
少し笑顔をむけてそう口にする。
「ちょっと勇気だしてみようと思うんです」
ああ、この子は強いな、と思った。俺だったら同じように勇気を出せただろうか。
本当は怖くて仕方ないだろう、だが勇気を出して1歩踏み出そうとしているのだ。
何かこの子のためになることは出来ないだろうか。
そう考えた俺は一つの結論に至る。そうだ、新曲を作ろう。
未来の想いを曲に込めてみんなに聞かせてやろう。
なんていうのは俺の自己満足かもしれない。でも何かせずにはいられなかった。
「未来、詩を書いてくれないかな?今、未来が思っていること、形にできたらって思って」
「詩、ですか?でもそんなのわたしやったことなくて」
「思うがままに、ってね、いま感じているものを詩にすればいいんだよ」
「うーん、よくわからないですけど、やってみたいです!」
よし、じゃあ俺は曲を作ろう。
世の中の不条理に立ち向かう、ロックだ、どちらかというとパンクだろうか。
未来が力強く歌っている姿を想像すると胸が高鳴った。
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