異世界版のシートン動物記とでも言ったら良いのでしょうか?
いや、そもそも異世界の話なんでしょうか?
すぐ目の前に観察対象となる動植物がいて、それを極めて洗練された手法で観察し、研究しているだけなのかもしれません。
その手法とは、体系化された魔力理論とリアルな科学理論で構成されており、思わず引き込まれます。
また、観察に利用した科学理論の一部を、現実世界の私達が生活する『家庭』でも体験できるように、その実験方法を分かりやすく公開してくれています。
私自身、子供と一緒に実験して楽しんでいます。
是非、読んで体験して楽しんでもらいたい、そんな作品です。
個人的に、他と比べ圧倒的にレベルの高い作品だと思います。
緻密に構築された世界観は本当に圧巻です。環境や生態、研究のプロセスは現実世界を基準とし(便利な魔法ですべて解決! みたいなのはない)、あくまでも行程のエッセンスとして用いられる魔法という概念への姿勢が本当に素晴らしい。
もちろん、これめっちゃ便利すぎるやん……となるモノもありますが、骨太の情報量と、主人公のリゼットが繰り広げる観察と研究の面白さで納得しちゃいます。
この夢のような世界を、リゼットと一緒に自分も解き明かしていくような、独特のカタルシスがたまりません。カァーッ!
無論、リアルではないです。が、確実にリアリティに富んだ作品です。これは、作者の文体がしっかり硬質なのも大きいです。
一文で伝わる情報量がかなりギッシリなので、たぶん相当な推敲の末に書き上げているのでは……? と勝手に感銘を受けたくらいです。
久しぶりに「続きはよ」と言いたくなった作品でした。