第6話
「もう少しで、夏まつりなんだ。
考えるだけで心臓が飛び出そうだ。」
『夏休みも好きな人と会えるなんてうらやましいですね~~
ちゃんと受験勉強も共立してるんですか?
せっかく図書館で勉強してるんだから。」
「ちゃんとしてる。
元々図書館で勉強するの好きだし。」
『いい青春ですね。
勉強に恋愛に、健全な青春です。」
夏祭りまで、残り12時間
朝の7時のタイマーがなる。
全く眠れなかった。
好きな人との夏祭りへの、高揚と不安で頭がいっぱいだったのだ。
何度も、頭の中でシチュエーションをした。
それでも、不安はぬぐえない。
恋愛経験のなさを痛感する。
時間が立つのが遅く感じる。
体感では、3時間立ったと思ったが、時間では1時間しかたっていない。
落ち着かない。
いつもより、早く昼食を食べるも、それでもまだ時間はある。
そんな時交換ノートを書いていないことを思い出し、鞄からノートを出す。
最初の一ページから読み直すと意外と交換しているんだな。
見返しながら、今の心境をノートに書く。
時刻は17時、夏祭りまで残り2時間。
緊張で足が小刻みに揺れる。
後2時間後に、有希と夏祭りに行くんだ。
財布とスマホとイヤホンをバックに入れ、家を出る。
バクバクと鼓動する心臓は、夏祭りの会場が近づくとともに、激しくなる。
集合場所には、30分以上早く着いてしまった。
スマホの通知音がなる。
有希から「近くに着いた」と返信が来た。
「俺も近くに着いた」と返信を返すと、そのまま下を向き、有希を見ないようにしてしまった。
ガヤガヤと騒がしい声、バッテリーの音で周辺は騒音のようなうるささだ。
カタン、カタンと下駄の音が近づく。
リズミカルに近づく音に、自分の心臓の鼓動が早くなる。
「ごめん。まった?」
「いいや、こっちも今来たところ。」
「それは、よかった。」
「浴衣、に、似合ってるな」
「ありがと」
青色の浴衣に花の髪飾り、目の前でくるっと回る、有希のうなじと香りに魅了され、体が硬直する。
覗き込むように、腰を曲げ、首を曲げながら「いこ?」という有希に、言葉を発することを忘れた自分は、首だけで返事をしてしまった。
「かき氷食べたい」
「いいね、食べに行こう」
「たこ焼きとかもあるよ。」
「たこ焼き食べたい」
「人多いね」
「はぐれないようにしないとね」
人込みの中、離れないように有希の近くを歩く。
「ほんとに人多いね。」
「一二ぐらいの規模の祭りだしね」
「高校生活最後の夏祭りだ」
「最後の祭りだね」
「来年は、立派なだ大学生になってるかな?」
「それは、来年の自分に来てみないとわからないことだ」
「来年も、真人と仲いいかな?」
「親友になってるかもよ」
「まだ親友じゃないのか」
この関係地の心地良さに満足してきてしまっている。
ここにきて、告白してもし振られて、関係地が0になってしまうのではないだろうかと不安がよぎる。
なら、告白もせずに友達のままでと思ってしまう自分出てくる。
「ここ人めっちゃ多い」
神社へお参りしようと、拝殿に近づくと満員電車のように人が多い。
少しづつ、有希との距離がひらいてしまう。
とっさに有希を引っ張ってしまう。
「ありがとう」
「危なかったな」
有希は、下を向き恥ずかしそうに「うん」とつぶやく。
下に何があるのかと、見てみたら有希とをつないでいる。
とっさの出来事だったので、考えてもいなかった。
「ご、ごめん」
手を離そうとするも、有希は手を離さなかった。
「こっちの方が、離れなくて済むから、このままで。。。。」
耳まで真っ赤になりながら下を向きながら歩く有希と、手をつないでいることを見ないように前だけしか見れない自分とで、無言の時間が続く。
拝殿の前、名残惜しいが有希との手が離れる。
賽銭箱に小銭を入れ、手を合わせる。
終わった後、さっきまでつないでいた左手は虚しく、握っても空気もつかめない。
交換ノート(仮) 日新斎 @TRADE
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