第9話 十年後
それから、十年が過ぎた。
俺は大学進学で東京に出て、
久しぶりに地元に戻ってきたついでに、
あの場所へ行ってみた。
今、その場所に立っている。
かつての山は、もう山ではなかった。
宅地造成されて、新興住宅街になっている。
同じ位置のはずなのに、
そこには、似たような形の家がびっしりと並んでいた。
奥の池も、もうない。
埋め立てられて、駐車場になっていた。
あのコンクリートの崖だけは残っていたが、
その上には家が建っていて、
俺たちが立っていた“はずの場所”は、
今は誰かのリビングか寝室になっている。
俺は、崖の下から上を見上げて、
小さくつぶやいた。
「あの金属音は……何だったんだ?」
「祠は……どこへ消えた?」
「赤田は……あの夜、何を見たんだ?」
十年たっても、答えは出ない。
そして、この10年、立川リーダーとも赤田とも市川とも連絡がつかない
崖の上の住宅街から、金属音が聞こえた気がした。
……シャリン。
ボーイスカウトの思い出 朝倉 澄真 @Sumima_Asakura
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